BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

「だから、私は山へ行く」#19 鈴木ともこさん

作品を描くときも、山道具を手がけるときも、山について話すときも。「ENJOY!」という言葉で、山への一歩をあと押ししてくれる鈴木ともこさん。「山と出会えた人生でよかった」と話すともこさんが、山を歩く理由について。

「だから、私は山へ行く」
記事一覧を見る

山と出会って、人生が拓けた。
山と出会えて、本当によかった。

山を歩くよろこびや感動を、人に伝えることは難しい。その相手が、山を歩いたことのない人ならなおさらだ。けれど、鈴木ともこさんが描くコミックエッセイには、山への一歩をあと押してくれるような不思議な力がある。軽やかなイラストと、たった数行の言葉。一見シンプルにも思える作品に心動かされるのは、きっと小さなひとコマのなかにも山に対する愛情や、山を愛する人への優しい眼差しが詰まっているからだ。

こんな世界があるなんて!

大学卒業後に出版社に勤務し、2005年に漫画家としてデビューした鈴木ともこさんが、山に魅了されたのは2006年のことだった。

「その年の6月に友だちの誕生日を祝うために高尾山に登ってビアガーデンに行ったのですが、これが予想以上に楽しかったので、9月に木曽駒ヶ岳に行ってみることに。そこで『こんな世界があるなんて!』と感動したことが、山を好きになったきっかけです」

標高2,612メートルのロープウェイ山頂駅から見上げる千畳敷カールの壮大な風景、山頂から眺める山々の連なり、雲の上の稜線を歩く人々の姿。すべてが新鮮で美しかったという。

「木曽駒ヶ岳の山頂までは山頂駅からたった2時間弱ですが、自分の足で歩いた人だけがたどり着ける場所があり、そこには日本とは思えないような絶景がある。『この山の世界を、もっと知りたい!』と思いました」

▲もともと運動が苦手で「山登りなんて意味わからない」と思っていたともこさんを山の世界に導いた中央アルプス・木曽駒ヶ岳

こうして山に魅了されたともこさんは、いくつもの山行を重ねてゆく。立山、尾瀬、富士山、屋久島……。なかでも印象深い山のひとつが、2009年に登った北アルプス南部の槍ヶ岳だという。

「それまでも立山や常念岳から槍ヶ岳の姿が見えることがあって、そのたびに登山者の方々が『槍だ! 槍だ!』と盛り上がっていたんです。そんな経験が重なって、いつしか私自身も『あのかっこいい〝槍様〞に登りたい』と思うように。その目標を叶えるために、筋力アップを目指し、足にウエイトを付けて歩いたりしました。だから山頂に立てたときは、本当にうれしくて涙が出ましたね。こんなにも小さな自分の一歩一歩で、憧れの山頂にたどり着けた。それは、いまも変わらない揺るぎのない自信につながっています。そうそう。そのときの山頂には『3度目の挑戦で登れた』という方や『親子で登るのが夢だった』などいろんな方がいたんです。異なる気持ちを抱いた人々が、偶然同じ山頂に立っている。『山ってなんて温かくすてきなんだ』と感動したことも覚えています」

▲2009 年に登った槍ヶ岳。いまも見上げるたびに「みんなが憧れとともに歩いているんだろうな」と想像するとくべつな山だという

山を愛する人を愛す

山の魅力を伝えるコミックエッセイを発表し、現在は松本市を拠点にアウトドアブランドや山小屋とのコラボレーションも数多く手がけるともこさんだが、山にまつわる作品をつくるとき、そこには常に「山を自由に楽しんでほしい」という想いがあるのだそう。

「私にとって山歩きの大きな魅力のひとつが、〝人〞との出会いです。たとえば山小屋で話をしていると、ひとつの山なのに本当にいろいろな楽しみ方があることがわかります。ウルトラライトで身軽に歩く人もいれば、山ごはんを楽しみに荷物を増やす人もいるし、はじめて山に来た人もベテランの人もいる。どの山歩きも尊く、さまざまなスタイルで向き合えることが山の良さ。だから、だれもが堂々と自分の山歩き楽しんでほしいし、その多様性を尊重したいと願っています」

そんな気持ちを表すのが、さまざまな作品に添える「ENJOY!」というメッセージ。じつはこの言葉に「グッときた」のはハワイのトレイルを歩いているときだったそう。「コロナ禍の前にハワイの山を歩いたのですが、道中で出会うハイカーたちは、風貌も服装もさまざま。でも、どんなにハードな道のりでも、すれ違うたびにみんなが良い笑顔で『ENJOY(楽しんで!)』と声をかけてくれる。それが自由でポジティブな感じがして、すごくいいなぁって思ったんです。ハワイの山は、自分がちっぽけに思えるほどスケールが大きかったです。でも、だからこそ小さな一歩を重ねる時間のかけがえのなさや、自然に対して謙虚でいることの大切さをあらためて実感することができました」

▲ハワイ・カウアイ島のカララウトレイル。断崖をおよそ8 時間歩いた人だけが辿り着ける秘境のビーチがあるそう
▲ハワイ島のマウナ・ロア(標高4,169m)も、ともこさんにとって思い出深い場所。山歩きはもちろん、ハワイの人々の自然観や文化にも心惹かれたという

 

▲10月27日には『山とハワイ上―登れ! 世界最大の山 ハワイ島篇―』と『山とハワイ 下―行け! 断崖秘境のビーチ カウアイ島&オアフ島篇―』(新潮社)が同時発売。山だけでなくハワイの歴史や文化などが凝縮された渾身の作品だ

〝はじめの一歩〟を、
あと押しする存在でいたい。

まっすぐな眼差しで話すともこさんは、『自然のなかに踏み出す 〝はじめの一歩〞をあと押したい』と続ける。
「アウトドアの最初の一歩って、ハードルが高いと思います。でも、一歩踏み出しさえすれば、あとは山が次の一歩へと導いてくれる。だから、最初のハードルを少しでも下げたい。私自身、山と出会えた人生で本当に良かったと感じていますし、山を楽しむ人がひとりでも多くなることが、美しい自然を次世代に残すことにもつながると思うんです」

 

鈴木ともこさん

1977年東京生まれ。漫画家、松本市観光大使を務める。『山登りはじめました めざせ!富士山編』(KADOKAWA)など著書多数。2022年10月27日には最新刊『山とハワイ』(新潮社)を発表

「だから、私は山へ行く」
記事一覧を見る

SHARE

PROFILE

ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

No more pages to load