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焚き火マイスター 猪野正哉さん|低山トラベラー、偏愛ハイカーに会いに行く

低山トラベラーの大内征さんが山好きさんと山を歩く、連載「偏愛ハイカーに会いに行く」。山の愛し方は人それぞれ、とはいうけれど。十人十色の偏愛ワールドをのぞいてみれば、これからの山の愛し方とその先の未来が見えてくる、かもね。

今回の偏愛さん

焚き火マイスター 猪野正哉さん
焚き火マイスター、アウトドアライター、アウトドアプランナー、モデルなど多彩な才能をもつ。そのためTV、雑誌、イベント、YouTube などさまざまなメディアにゲスト出演し、アウトドアの魅力を伝えている。著書は『焚き火の本』『焚き火と道具』(いずれも山と渓谷社)
Instagram @inomushi75

マツコ・デラックスも虜になる!?ファッションモデル×アウトドアライター×焚き火マイスター

2019年2月に放送された「マツコの知らない世界」に、友人が出演した。一年中焚き火を見つめる男が来る! ということで、これから奥深き焚き火の世界のレクチャーを受けるマツコ・デラックスさんは「病んでるのかな?」と、ゲストの登場にいささかの不安顔。

さて、どんな展開になるのかと固唾を呑んで見守っていたところ、スタジオに現れたその瞬間から「(やっぱり)病んでるじゃ〜ん!」とマツコさんにいじられる長身のイケメン。それが今回の偏愛ハイカー、猪野正哉さんだ。この魅力的で複雑なストーリーの持ち主を、マツコさんは番組の後半で「いのちゃん」と呼んでいた。そこにこそ、猪野さんの人としての魅力が表れている。

▲ 常にいい塩梅の焚き火を維持(写真左)。初の書籍となった『焚き火の本』。アウトドア本では異例の2万部超え(写真右)。

もともと僕は、彼のことを一方的に知っていた。というのは、登山とはまったく異なるジャンルの雑誌『メンズノンノ』のモデルだった時代に、読者としてその活躍を見ていたから。もう30年近く前のことだけれど、縁とは不思議なもので、時を経てから某アウトドア系デジタルメディアの運営チームに協力事業者という立場でそれぞれ参画していたことから、毎月のように顔を合わせるようになったのだ。以来、なにかと縁がある。

▲ 浪人中に専属モデルになったことで受験の願掛けをする猪野さん。端正な顔立ちとは裏腹に字の汚さが目立つ(笑)結果は……らしい。

いまはファッション誌に出ることは少ないものの、あるときはアウトドアブランドの広告や登山誌などでモデルをしているし、またあるときはアウトドアライターとしても活動している。そして、猪野さんの代名詞ともなった「焚き火マイスター」としての活躍。キャンプ系のテレビ番組や雑誌に、彼の名前のクレジットをよく見かけるようになって久しい。

ファッションモデル、アウトドアライター、焚き火マイスター。こんなテーマのかけ合わせができるイケメン、地球上に猪野さん以外は存在しないだろう。

▲ モデルだからといって人前に立つことが得意ではないようだ。ただ最近は、こなれてきたようで、必死さが伝わる写真よりは余裕がでてきているとか。

どん底からの復活、転機の明神ヶ岳ハイク、そして高橋庄太郎さんとの出会い

18歳のとき、約3000人という応募者を勝ち抜いてメンズノンノの専属モデルとして活動を始めた猪野さん。ところが、信頼するスタイリストと立ち上げたアパレル事業に大失敗してしまう。金銭トラブルから思わぬ裏切りにも遭い、プライベートまでことごとくうまくいかない日々。極度のメンタル不調に陥ったという猪野さんを救ってくれたのは、家族との話し合いで囲んだ〝焚き火〞だったそうだ。

だれにも言えなかった多額の借金の悩みも、相手とのあいだで柔らかく揺れる炎がクッションとなって受け止めてくれて、嘘のように打ち明けやすくなることに気がついた。ゆくゆく「焚き火」を生業にする原点のひとつである。

そのいっぽうで、どん底でもなんら変わらない付き合いをしてくれる友人が少なからずいたのは救いだった。そのひとりである友人の堀井康裕さんに、なかばムリやり箱根の明神ヶ岳まで連れ出されたことが、これまた大きな転機となった。

▲猪野さんに山登りを勧めた堀井康裕さん(写真内左)。登山を始めたのは意外に遅く、30歳から。当時は最低でも月一、いまでは年一でプライベート登山。もっと登ってほしいものだ。

初めての登山はしんどくて、ずっと歩き続けるのはとてもきつい。自然、ときおり立ち止まったり、ふり返ったり、深呼吸をしたり。日常生活では意識をしないこの動き、人生にも通じるという気づきにつながった。それから山のことが気になりは じめ、書店で手に取った『PEAKS』で高橋庄太郎さんを発見することになる。この流れ、運命そのもの。  

PEAKS読者にはおなじみの庄太郎さん、じつは山岳/アウトドアライターとして独立される前は、メンズノンノの編集部員だった。メンズノンノの専属モデルを2年間務めた猪野さんにとっては、お世話になった編集担当者なのだ。そんな人が、なぜか登山誌でライターをやっていたのだから、それは驚いたことだろう。しかし、猪野さんは明確な目標をひとつもつことになる。それは「いつか庄太郎さんといっしょに登山誌に出る!」ということだ。  

果たして「山にも登れるファッションモデル」というポジションを築いた猪野さん、山と渓谷社から当時出ていたワンダーフォーゲル(現在は惜しくも休刊)での山モデルデビューを皮切りに、アウトドアライターへと転身していくことになる。そして、目標としていた高橋庄太郎さんとの登山の仕事も『PEAKS』で実現。そこで交わした握手のことは、生涯忘れられないと語ってくれた。

▲ 焚き火色が強いが、しっかりと系列誌の表紙を飾っているから本物のハイカーのようだ。いつかオジサンふたりで表紙を飾りたいと密かに思っている

じつはランドネから生まれた「焚き火マイスター」

猪野さんはいま「焚き火マイスター」として大活躍している。焚き火の楽しみ方を伝える伝道師であり、そのスキルや道具の使い方などをワークショップをとおして体験してもらうことが生業だ。テレビなどの番組監修や自身の出演も多い。

とはいえ、なにか独特の〝間〞のようなものがあって、焚き火でがっつり稼ごうぜという感じではない。ガツガツしないのは、これまでの人生経験に裏打ちされた彼の美学のようなものではないか。僕の目には、猪野さん自身を救ってくれた「焚き火」への、ささやかな恩返しのように映っている。

▲ 祖父の代からある林。小さいころから日常的にここで焚き火をしていた

そういえば、焚き火マイスターという名称はどうやって思いついたの? と聞いてみると、意外な答えが返ってきた。それは、ちょっとした焚き火の撮影が増えていくなかで、そろそろ肩書きみたいなものをもってもいいよね、という話題になったのがきっかけ。そこでなんとなく付いてしまったのだとか。けっして自ら名乗っているわけではないらしい。で、その撮影、なんとランドネの誌面の企画だったんだって!

▲ 猪野さんが焚き火をするうえで大切にしていることは、「できるだけ早く焚き火を作って、みんなでそれを囲んでゆっくりすること」だそう

低山トラベラー、山旅文筆家
大内征(おおうち・せい)

歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道

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大内征

ランドネ / 低山トラベラー、山旅文筆家

大内征

歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道。

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