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伴野“レイチェル”嶺さん、母・直美さん|低山トラベラー、偏愛ハイカーに会いに行く

低山トラベラーの大内征さんが山好きさんと山を歩く、連載「偏愛ハイカーに会いに行く」。山の愛し方は人それぞれ、とはいうけれど。十人十色の偏愛ワールドをのぞいてみれば、これからの山の愛し方とその先の未来が見えてくる、かもね。

今回の偏愛さん

伴野“レイチェル”嶺さん 母・直美さん

よちよち歩きのころから山を歩き始め、6歳で山梨百名山を全山、小学6年生でキリマンジャロを踏破した少女と、その母。現在は日本三百名山全山登頂を目指している。行動中は景色や草花を愛でたり、ふもとでは各地の食や文化体験を堪能するなど、山+αもふたりで楽しんでいる

山梨百名山発、キリマンジャロ経由、日本三百名山行き。
山に熱中するスーパー小6と、それを支える偉大なる母!

友人が山梨で営むキャンプ場に顔を出したときに、その母娘は現れた。もともとインスタグラムで彼女たちの〝活動〞を見ていた僕は、その姿を見た瞬間に、レイチェルと直美さんだとわかった。たしかレイチェルは小学校2年生くらいだったかな。すでに山梨百名山を踏破しており、日本三百名山に挑戦し始めたころだったと記憶している。

実際に接するレイチェルと直美さんは、人懐っこくて優しいオーラに満ちていた。低山を偏愛するヒゲおじさんの心の扉をいとも簡単に開け放ち、これまでの活動やこれからの夢のことなど深い話をするまでに、そう時間はかからなかった。それぞれの〝持ち場〞は異なっても、自分の意思と脚をもって人生を歩んでいるという点で、お互いにリスペクトである。こういうことに、年齢やキャリアは関係ない。そんな経緯があったからこそ、いつか「偏愛ハイカー」に登場してもらいたいと思っていたのだった。

▲「ここ数年、年末年始は車で山梨県から九州へ山旅をしています!」。法華院温泉山荘からの大船山でギャルピース(笑)

そして、2023年の暮れのこと。久しぶりに会ったレイチェルは小学校6年生になっていて、ますます山に熱中していた。といっても、ただ数をこなすのではない。言葉の端々に〝視点〞のようなものが育まれていて、山をとおして別のテーマや山の個性を見い出しているようだった。学校では本好きが高じて図書委員長になり、好きな本は?と聞くと「偉人伝!」と即答。ナイチンゲールを尊敬し、近年だと七大陸最高峰・北極点・南極点の到達を世界最年少で成し遂げた南谷真鈴さんが好きとのこと。

▲「たくさんの想いを込めてデザインしたタイニーピン。武田信玄公をお祀りする武田神社で発売中。山で使ってほしいです!」

眩しいくらいに溌剌としていて、聡明で、体力も知力も向上している。4歳から本格的に登山を始めたレイチェルをずっとサポートしてきた直美さんは、もう自分のほうがついていくのがきつくなってきたと目を細めるばかり。僕の小6のころってどんなだったかな、と思わずにはいられない。偉人伝と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、プロレススーパースター列伝の漫画本。まあ、そんなもんか……。

▲「優しくておもしろくて、いろんなことを知っているお山の先生みたいな征さん」

初の海外はタンザニア
キリマンジャロの“奥”に見えた光と影

歳をすぎてから本格的に山を歩くようになった僕からすると、小学校に入学する前から「山梨百名山」に挑戦しようと思うこと自体が尊いし、それを1年9カ月で達成してしまったというのだから想像の斜め上をゆく存在だ。簡単には到達できない遠くて高い目標を打ち立てて実行する。これって、大人になってもなかなかできることではないだろう。低山おじさん、ちょっと気が引き締まる。

そんなレイチェルの今後の人生に関わっていきそうな強いインパクトが、キリマンジャロでの登山〝以外〞での体験にあった。現地の人との交流や暮らしの奥深くに、地球の環境や各国の人の営みに対する観察力と問題意識が芽生えたのだという。楽しい山登りの話はほどほどに「下山後の見聞がすごく貴重だった」と、いくつかの体験についても話してくれた。その内容をここで詳しく書くことはしないけれど、それが僕の印象にも強く残ったほど。ああそうか、こういうことが〝偉人伝〞とつながっていくんだなあ。

▲出発前には低酸素室や高地トレーニングジムに通い、高山病対策を
▲「キリマンジャロ山頂のウフルピークで、ガイドのフレディさんと支援者さんの名前が入った旗を掲げたきは、なんともいえない気持ちになりました」
▲「ずっと見たかった氷河も間近で見ることができました!」。

レイチェルの歴史は直美さんの歴史でもあるわけで

レイチェルと僕の会話を温かい眼差しで聞いていた直美さん。ときどき母らしく諭す瞬間があったり、思い出すあれこれに言葉をつまらせることもあったり、そういうふる舞いを見ていると、レイチェルの挑戦は直美さんの挑戦でもあるのだと気づかされる。もともと大会入賞の経験があるほどのトレイルランナーだった直美さん、レイチェルの誕生とともに山歩きにスタイルをシフト。はたしてレイチェルが〝靴を履いて歩いた最初の一歩〞は1歳のころ、甲府市にある武田の杜だった。

それから11年。もうすぐ中学生になるレイチェルと、まだしばらくは二人三脚の旅が続く。「海外で貴重な経験をして意識が世界に向いていることはよしとして、地元山梨でおなじ世代の山好きな子たちと交わりながら、いろんな〝偉人〞が身近にもいるということを知ってほしい」と話してくれた。うん、たしかに!

レイチェルの「嶺」という名前にはいくつかの意味が込められているようで、中でも「神聖な山(嶺)」と「光(ray )」が重ねられているという話が、僕の気に入った。いい名前だなあと思うのだ。逆に「レイチェル」はどこからきたのかと聞くと、山梨百名山の記念すべき第一座目となった「小楢山」に登ったときに、直美さんの山仲間たちがつけた。嶺、光、そしてレイチェル。うん、いいリズムだ。

▲牛奥ノ雁ヶ腹摺山の山頂にて。山名は「雁が腹を擦るくらい高い」という意味をもつ。なんとこの周辺には、ほかにも「雁ヶ腹摺山」が二座もある

この日の牛奥ノ雁ヶ腹摺山は、山頂の風はとても冷たかったものの、終始穏やかで暖かい陽射しのなかでインタビューをすることができた。日本一長い名前の山から日本一高い山を眺められるとか、山梨百名山ではないとか(いい山なのに!)、でも秀麗富嶽十二景だとか、なにかとトリビアの多い山ではある。

▲独特の縞枯れ現象の山頂間近で、軽快に高度を上げていく。背中が頼もしい!

ちなみに、山梨百名山の中でレイチェルが好きな山は、富士山がよく眺められる山梨県南部町の白鳥山(568m)。あちらの山には「山梨百名山の中でいちばん低い山から、日本一高い山を眺めることができる」というトリビアがついてくる。

▲欠かせない行動食は? の問いに、間髪入れず「グミ!」と即答

低山トラベラー、山旅文筆家
大内征(おおうち・せい)

歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道

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大内征

ランドネ / 低山トラベラー、山旅文筆家

大内征

歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道。

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