航空会社のご令嬢!?「マイヅルソウ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #39
成清 陽
- 2024年10月17日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
つい先日、「そうだ、京都行こう。」くらいの軽いノリで足を運んだ御嶽山。山頂部の紅葉はどう見ても終了気味、期待薄。そう思っていたら、葉の散ったあとのナナカマドの実が美しいことこの上なし。バシャバシャ撮っていたら、電池切れ……。見やれば、まだまだフォトジェニックな光景が……。「なんでムダに山小屋ランチの写真撮っとんじゃい!」と、自分にツッコんだ私なのでした。今回は、そんな荒れたココロを癒やしてくれそうな、フェアリーをご紹介(こじつけ!)。清楚な“ご意見番”に登場いただきます!
航空会社とのご関係は
Data
マイヅルソウ(ユリ科)
一般的な花期:7~8月
おもな生育場所:亜高山帯の湿った林内など
華やかさんが多かった、今年の連載前半戦。ただ、美人も続けば見飽きるというのが、諸行無常(!?)でございましょう。って、超失礼な書き出しですが、清楚ではありつつ“知名度の不明度”がマックスなのが、このお花・マイヅルソウではないかと。しかしこのお花、じつは名前の由来が少々いわくつき。「葉脈の独特な曲線、ツルが羽ばたいてるみたいじゃん!」と思った命名者が、舞鶴草なんてビッグネームをつけちゃったんだとか。うーーーーーん。これってなんか、JALさんの旧ロゴ(鶴マーク)に対抗してません?
なして「ご意見番」?
舞鶴草の命名者は、航空会社と蜜月の関係にあったのか、はたまた昼ドラの如しドロドロの関係にあったのか……。とまあ、安いスポーツ新聞記事みたいな話題は置いときましょ。このマイヅルソウが本当におもしろいのは、意外なくらい自己主張がハッキリした、ご意見番であること。全国のヤマを知っているわけじゃないので断言しにくいですが……マイヅルソウがいるのは、(ほぼほぼ)コケと一緒で、(ほぼほぼっ)安定した高湿度の場所。さらに、(ほぼほぼ!)標高1,000mクラスより上にしか棲んでません!研究者じゃないから断言できずに、ほぼほぼ、ほぼほぼ言い続けるのがツライ(笑)。
さてワタシはどこでしょう
マイヅルソウの写真を探していたら出てきた、へたっぴなこのカット。しかしあえてこれをみなさんに見ていただきたいのは、この一枚がマイヅルソウのお好みスポットとオトモダチをハッキリと示しているからです。コケに包まれた森のなかで、ゴゼンタチバナやミツバオウレンが生い茂る、しっとり暗めの森のなか。そして、亜高山帯の山中にしては、わりに厚みが感じられる土……。これこそ(ほぼほぼ☆)マイヅルソウが見つかる条件なんですっ!!なお、これまで出会えたのは尾瀬、火打山、戸隠、蝶ヶ岳山麓、飛騨山地などなど、やっぱり高いところばっかり!
いつ見るんですか?いまでしょ!!
さてさて、今回10月にマイヅルソウをご紹介するのも、じつはワケアリなんですよ。あ、本連載お約束の、ヨコシマな感情を込めた“ワケアリ”じゃなくてですね……。そう、冒頭でもお話したように、いまは紅葉シーズン。その林床で、あっかい実が最盛期なんです。ゴゼンタチバナなども赤い実をつけてますが、マイヅルソウの赤は鮮紅色!この実の存在感はなかなかのもの。探しやすいのは、いつって……いまなんです!!
ナゾ多き白化現象
そして、近年「超個人的ミステリー」に加わったのが、この現象です。秋、黃葉したのちに色素が抜ける葉は種類が限られているんですが、マイヅルソウも同様とはまったく知らず。昨年初めて、まっちろけ葉っぱを見かけたのです。ちなみにこれを見かけたのは、御嶽山の日和田登山口付近。かなりマニアックではありますが、同じように白くなったマイヅルソウをご存知の方!もしいらしたら、情報くださいませ。秋の終わりまであと少し……現場まで、猛ダッシュで駆けつけたいと思います!!
さてさて、今回ご紹介してきた、マイヅルソウ。いかがでしたでしょうか?ハイカーにとって出会う機会は少なくない……はずですが、どうでしょう。出会った&写真を撮った記憶はありませんか~??ちなみに、マイヅルソウの写真撮影には、ちょっとコツが。偏光(PL)フィルターを使わないと、葉がテカってハレーションを起こすんです。これぞ、マイヅルソウの人気がビミョーな理由かも……。もし見かけたら、無理やりでもカメラレンズにサングラスを。その独特の葉脈を、確かめてみてくださいね!
それでは、また。
みなさまのココロに、すてきな花が咲き誇りますように。
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PROFILE
持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!