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万人ウケの王者「オオカメノキ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #34

登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!

ときは昭和、ある小学校。「……くん。……くん」。出席をとっていき、次はいよいよワタシの番。しか~し、必ず詰まる先生。「なる……なりせい?なるせくん!」。どれも違うわっ!もう星の数ほど呪いましたね。自分の名前、そして名前を間違えても悪びれないセンセイを。なんで急にこんな話をするのかって、今回ご紹介するお花、悔しいほどにオマナエが覚えやすいからっ!!ということで今回は、親しみやすさが抜きん出るお花を紹介します。

絶大な人気を誇る“ヤマノカメ”

Data
オオカメノキ(レンプクソウ科)
一般的な花期:5~6月
おもな生育場所:湿った林縁部など

山好きたるや、花をスルーしていることって、意外と日常だと思うんです。ところがオオカメノキとなると、みなさんの表情がぱっと明るくなる。一度教えてもらった経験さえあれば「えーっと、これなんだっけ?カメ?」「そうそう、カメだ!」となるわけです。さすが、ペットショップでも人気の爬虫類。で、どこがカメかといえば、葉っぱが丸くて彫りが深くて、甲羅みたい。花は、アジサイみたい。連想ゲームで、すぐ“顔”が覚えられるわけなんです。

で、咲いてるのかね、キミは

この親しみやすさには、口の悪いことで有名なワタシも、とんとワルグチが思いつきませぬ。とにかく花は清楚だし、名前は覚えやすいし、説明するとみんなにウケますからね。なんか理由はようわからんけど、クラスの人気とるヤツいますでしょ?あんな感じなんです。ツッコミどころがあるとするなら、「咲いているかどうかが、微妙にわかりにくい」ところかな。写真のオオカメノキ、じつはまだ3分咲きくらいなんですよ。葉っぱもまだ開きかけで、“子ガメ”ですしね。

花がまぎわらしいのじゃいっ!

そう、この「飾り花」の存在が有名なんです。アジサイ同様なんですが、白い花はなんとニセモノ。中心部の星型の花がホンモノ(雄しべ雌しべアリ)なんです。なんでそんなオイタをするの!って責めたくなるところ。でもこれ、結構まっとうな理由があるそうで。要は「林のなかだと虫に見つけてもらいにくいから、白いポンポンを持っているんだよ!」ということらしい。ほうほう。すると上の写真なら満開、というわけですな。

別名の真偽は煙に巻かれたまま

うむう。本当にグウの音も出ないくらいにスキがない……と諦めたくなりますが、そこはイジワル発揮。オオカメノキ、じつはヘンな別名があるんです(こっちが正式とも)。それが「ムシカリ」(虫狩り)。昆虫に葉っぱを食べられてしまうからという、ソレラシ~イ理由がついていますが、これは個人的に疑問符ですねぇ、うへへ。だって、秋になって赤い実をつけているオオカメノキを見ても、葉っぱが無傷。でも、ちゃちな疑いでは揺るがないのがこのお花の人気。どうしても清廉潔白に見えるのがクヤシイ~!!

かわいらしい冬芽には脱帽です……

ちょっとやそっとでは揺るがない、オオカメノキの人気。それを確かなものとしたのが、この冬芽でしょうね。「フユメって何?クイモノ?」くらいの人でも、この小人ちゃんを見ると「オオッ」と思わずにはいられない。で、「小人がキメポーズしているのが来年の花芽ですよ」なんてガイドされると、思わず口元が緩んじゃう。しかもこれ、背景は紅葉。つまり、秋山ハイシーズンから小人がお出迎えしてくれるんですもの。そりゃもう、人気は炸裂です。連載で取り上げるのが遅くってゴメンナサイ(敗北宣言)!

 

さてさて、今回ご紹介してきたオオカメノキ。いかがでしたでしょうか?どうしても高いところにある樹の花ですが、そんな逆境を跳ね返すかのように、オオカメさんは手の届く低いところにもあり、清楚でかわいく、さらに顔を覚えやすいとあって大人気。これほどまでにガイド中にウケる花を、ワタシは知りません。以上、すっかりお株を奪われた “ヤマノカメ手帖”でしたッ☆

それでは、また。
みなさまのココロに、すてきな花が咲き誇りますように。

 

植物ライター
成清 陽
持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中です!

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PROFILE

成清 陽

ランドネ / 植物ライター

成清 陽

持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

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持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

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