驚きにあふれる体験が待っている。アウトドア初心者にこそおすすめ、カナディアン・ロッキーの冬の旅
佐藤 泰那
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一週間おやすみをとって旅に出れば、あっという間に大きな自然に近づける。一步をふみ出すちょっとの勇気さえあれば、すばらしい自然体験ができる。
昨夏、はじめてカナディアン・ロッキーを訪れ、すっかり魅力にとりつかれているランドネ前編集長の佐藤泰那さん。今回は冬の見どころと訪れたいスポットを掘り下げて紹介します。
昨夏、カナディアン・ロッキーの魅力にとりつかれたわたしは、今年4月末から5月にかけてカナダのアルバータ州を訪れました。
成田空港からの直行便でカルガリーを目指し、そこから車を走らせることおよそ1時間。拠点にしたのは、前回とおなじく、キャンモアとバンフの町。滞在したアパートのまわりの樹木には新緑が芽吹き、春の訪れを感じられましたが、間近にそびえたつロッキーの峰々はまだ白い世界で、滞在中にも積雪がありました。
友人から、標高の高い山域は例年より雪深いと聞き、今回は町からアクセスしやすいエリアでハイキングをすることに。向かった先は、グラッシー湖。キャンモアの中心地から登山口まで車で15分ほどで、バスも運行しています。
歩き始めから樹林にかこまれ、30分ほどゆるやかな傾斜のトレイルを登っていきます。親子連れから若いグループ、湖畔の岩場を目指すクライマーまで幅広い層の方たちが行き交い、ほがらかな雰囲気が印象的。エメラルドグリーンに輝く湖を一周ぐるりと歩いたあと、わたしはピクニックを楽しみました。
この旅を経て、雪をかぶったカナディアン・ロッキーの美しさにすっかり魅了されてしまいました。そして、気負うことなく、圧倒的な大自然の近くで過ごせるアルバータ州の魅力を改めて実感したわたしは、次はもっともっと雪を堪能できる時期に訪れたい、と思うようになりました。
そこで、日本人で唯一、カナダで国際山岳ガイドの資格をとり、キャンモアを拠点に活躍している友人、谷剛士さんに相談をしたところ、「初心者にこそ、アルバータでの雪のアウトドア体験をおすすめしたい!」とのこと。カナディアン・ロッキーのスノーシーズンと聞くと、ハードルが高い印象ですが、気軽にたのしめるアクティビティがたくさんあるのだそうです。
「初めて日本からアルバータに来たとき、雪質にびっくりしました。雪だるまがつくれないぐらいサラサラな 『シュガースノー』なんです」と谷さん。
「アルバータは晴天率が高く、日本に例えると山梨県北杜市や長野県佐久市のようなイメージです。気温は下がっても晴れていることが多くて、2月ごろになると日が長くなり春が近づいてきていることを感じられます。冬のアウトドア装備を日本である程度揃えている方なら、インナーを工夫したり、中間着をフリースだけではなく薄手のダウンベストを追加したりすれば大丈夫です」
そこまで聞いてしまうと、ますます雪のロッキーへの思いが膨らんでしまいます。そこで、ランドネ読者やわたしのようなアウトドアのビギナー層におすすめの3つのアクティビティを、谷さんからご提案いただきました。
レイクルイーズでスノーシュー体験
ひとつめはスノーシュー体験。スノーシューは、数千年前から先住民が雪上の移動手段として使用しているものです。雪の上でも体重を分散させるように作られていて、古くから伝わる先住民の知恵を感じることができます。
そんなスノーシュー体験におすすめなのがレイクルイーズ。バンフ国立公園内にある氷河湖で、奥にそびえるビクトリア山の眺めが見事です。サマーシーズンはエメラルドグリーンに輝く湖に世界中から観光客が訪れていましたが、冬になると違った美しさに魅了されます。氷結した湖面の湖畔を散策したり、周囲を無数にめぐるトレイルで、スノーシューでのハイキングを満喫するのは冬ならではの楽しみ方です。
最近のスノーシューは軽量で、装着も簡単ですが、スノーシューの装備に不安がある方は、「Banff Adventures」などのレンタルサービスを利用できます。
そして、冬のレイクルイーズの楽しみはスノーシューだけにとどまりません。絶景の天然スケートリンクを滑ったり、氷のアートも楽しむこともできます。
2025年の1月には、「アイスマジックフェスティバル」が開催されます。世界レベルの氷の彫刻家が作り出す作品がライトアップされ、キラキラ輝く美しい彫刻のディテールを堪能できます。参加できるのは、フェアモント・シャトー・レイクルイーズを始めとする4つのホテルの宿泊者のみ。野生動物やインフラへの配慮から、人数制限が行われています。興味のある方は早めにご確認くださいね。
イベントとタイミングがあわなくとも、お天気に恵まれれば満点の星空はもちろん、オーロラを見られる可能性もあります。前回、夏にアルバータを訪れた際は夜22時ごろまで明るく、遅くまで車を走らせて楽しんでしまいました。いっぽう、冬は宿泊場所をこだわって選び、ひとつの拠点でのんびりじっくり過ごす滞在にぴったりだといえそうです。
憧れのリゾート、フェアモント シャトー レイク ルイーズにはいつか泊まってみたいし、ベイカークリークマウンテンリゾートなどのコテージで薪ストーブを囲んだり、温かい飲み物を片手に星を眺めたり、長い夜を堪能するのも特別な時間になりそうです。
アブラハム湖でアイスバブル見学
ふたつ目は、ジャスパー国立公園の近くで、先住民族にも大切に守られてきたエリアに位置するアブラハム湖での美しい出会い。アブラハム湖は、ダムの建設に伴ってつくられた人工湖です。この場所に冬にあえて訪れたい理由は「アイスバブル」を見ることができるから。
写真にうつっている、氷のなかの気泡のようなものが、アイスバブル。湖底から湧き出すメタンガスが氷に閉じ込められることで発生する現象のことをいいます。透明感の高い気泡が何層にも重なって奥へと続くようすは、ぷかぷか浮かぶクラゲのようでなんともすてき。
この自然が作り出す芸術作品は世界中の写真家や芸術家を魅了しています。いつかぜひ、冬のアブラハム湖へ行って自分の目で見てみたいものです。きっと幻想的ですばらしい体験でしょうね。
ジョンストン渓谷でアイスキャニオン・ウォーク
最後は、ジョンストン渓谷のご紹介。
バンフの町から車で30 分ほどの場所で、渓谷沿いに遊歩道が整備されているので、スノーシーズンでも歩きやすく、美しい氷爆が人気です。アイゼンは現地でもレンタル可能で、歩き始めから展望がすばらしいのもうれしいポイント。
時間が許せばさらに奥へアクセスすることもできるし、日本のフィールドよりも岩場までのアプローチが比較的短いため、アイスクライミングのデビューにも適しているそう。
不安のある方は、現地でプライベートガイドを依頼するのがおすすめです。谷さんが所属する「ヤムナスカ」をはじめ、日本語でガイドを依頼できるカンパニーもあります。クマが冬眠している冬は、ヘッドライトなどの明かりを準備しておけば、安心してナイトハイキングを楽しめると聞き、ますます行ってみたくなりました。
アルバータでスキーを楽しむなら
カナダの冬といえば、スキーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。せっかく訪れるのなら、スキーも楽しみたいという方にも、アルバータには選択肢がいろいろあります。
さらっと乾いていてスキーやスノーボードに適した雪はパウダースノーと呼ばれますが、アルバータの雪質はなんとそれ以上にすばらしいのだとか。シュガースノーやシャンパンパウダースノーと呼ばれることがあり、段違いの滑り心地に谷さんも初めてカナダを訪れた年は、心底驚いたのだそうです。
世界中のスキーヤーからよく知られているスキー場には、サンシャイン ビレッジと、レイクルイーズ スキー リゾートなどがあります。とにかく雪質を追求したい方は、サンシャイン ビレッジへ。レイクルイーズ スキー リゾートはワールドカップが開かれたこともあり、地形のバリエーションが豊富です。地元の利用者も多く、バンフの市街地近くのノーケイ山は、小規模ながら比較的リーズナブルにスキーを楽しめるそう。
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もっと気軽に雪のアルバータを味わう選択肢もたくさんあります。
まずは、バンフ ゴンドラ。通年営業していますが、とくに冬の景色は圧巻です。
サルファー山の頂上には展望台があり、360度のパノラマ絶景を見渡すことができます。壮大なランドル山やバンフの町並みの雪景色を眺めていると、非日常の美しい世界に気持ちが開放されるはず。山頂からの眺めを堪能するだけでも十分満足ですが、時間や体力に余裕があれば、遊歩道を散策することもできます。
わたしが訪れてみたいのは、レストラン「スカイビストロ」。標高 2,255mのパノラマビューを眺めながら、地元の食材を使った料理をいただけるなんて、想像をふくらませるだけでうっとり。カナダはワインの産地としての注目度も上がっていますが、小規模の醸造所が無数にあり、国内でしか出会えないものもたくさんあります。料理と景色とのペアリングを追求してみるのも、いい時間になりそうです。
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カナナスキスのノルディックスパも、気になっている場所のひとつです。
山々に囲まれた広い敷地の屋内外にリラックスして過ごせるスペースがあり、冷たいものから温かいものまで5つのプールがあるのだそう。
マッサージや軽食をいただけるビストロもあるので、 雪のアクティビティへ出かけた翌日に予約をしておき、ゆっくりと体をゆるませる時間を過ごせたら、最高に気持ちがいいだろうなと思います。
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そして冬と言えばロマンチックなクリスマスも気になります。アルバータ州にはおすすめの場所がいくつかあります。
タイミングが合えば、カルガリー近郊のスプルース・メドウズで開催されるクリスマスマーケットにも行ってみたいものです。
アートや雑貨、コスメなど300以上の作り手による工芸品が集まり、ショッピングを満喫できます。ヨーロッパをはじめ世界中の冬のグルメをいただくこともできるのだそうです。
クリスマスの時期を逃した方へおすすめしたいのは、バンフの町なかにある「The Spirit of Chiristmas」というショップ。ここは一年中いつ訪れても、クリスマスにまつわるありとあらゆるオーナメントやグッズなどが並び、眺めているだけでお祝い気分にひたることができます。
旅の記念やお土産を買うにもうってつけで、わたしが必ず立ち寄るお気に入りのひとつです。
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ここまでご紹介してきたカナダ・アルバータ州での時間。これまで春と夏に訪れてきましたが、冬はいっそうここにしかない格別な体験が待っていることを知り、ますます心惹かれています。カナダの冬は長く、3月ごろまでは楽しめるので、いまから計画しても間に合うかも…?!
アルバータへの旅をスムーズに楽しむためには、ウエストジェットの成田(東京)とカルガリー(アルバータ州)を結ぶノンストップ便が便利です。フルサービスキャリアであり、今年から通年運行になったことでますます使いやすくなりました。現地で防寒着をレンタルすることもできるけれど、衣類がかさばりがちな冬の時期は、やっぱり直行便が便利。わたしは次回旅するときも、ウエストジェットを選ぶと思います。
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PROFILE
佐藤 泰那
アウトドアメディア「ランドネ」編集部を経て、2020年に独立。株式会社クッカを起業し、山登りやアウトドアを楽しむ方のためのコミュニティ運営やコンテンツ制作を行う。また、編集者としての経験を生かし、地域のコンサルティングや商品開発、イベント企画などにも携わる。2023年より株式会社ほぼ日に所属。山とふもとを巡る旅とお酒が好き。
アウトドアメディア「ランドネ」編集部を経て、2020年に独立。株式会社クッカを起業し、山登りやアウトドアを楽しむ方のためのコミュニティ運営やコンテンツ制作を行う。また、編集者としての経験を生かし、地域のコンサルティングや商品開発、イベント企画などにも携わる。2023年より株式会社ほぼ日に所属。山とふもとを巡る旅とお酒が好き。