尾瀬の“入域料の導入”について思うこと|まだ知らない尾瀬ストーリー#02
HagiwaraMai
- 2024年12月20日
“尾瀬”と聞くと思い描く景色はどんなものでしょうか?
「湿原と山と木道」という景色を思い浮かべる方が多いかもしれません。尾瀬はその景色があまりにも有名で、その成り立ちや歴史、その周辺地域のこと、そこに関わる人々のことはほとんど知られていません。じつは尾瀬には感動的なストーリーがいくつもあるのです。
尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterの私が、尾瀬のさまざまなストーリーをお届けします!
尾瀬の“入域料の導入”について思うこと
先日、群馬県の山本一太知事が尾瀬国立公園の入域料の導入を検討すると発表しました。じつは以前にも、環境庁が入園料徴収構想を発表するなど話題が持ち上がったこともあったのですが、断念されてから公に議論されることはなくなっていました。
この”入域料”に対して、批判を恐れずにいうと私は賛成でも反対でもありません。
なぜなら先日、とある方に「尾瀬も入山料などとったほうが良いと思うけど、一方で経済的に厳しい人たちが来られなくなるのは嫌だよね」と言われたことがきっかけでした。
それまで尾瀬で働くなかで、もう行政や東京電力に頼ったやり方を続けることは厳しいと思っていたけれど、この言葉を聞いて私自身の生い立ちを思い出し、胸がきゅうっと締め付けられたのです。
私はこんなふうに尾瀬の発信を始めていることから、もしかすると高校生のときから尾瀬に関わることのできた、羨ましい人生を歩んできたと思ってくれる人もいるかもしれません。けれど実際は母子家庭で育ち、光熱費も払えない、明日のごはんも食べられるかどうか、という生活を経験し、なんとか尾瀬高校に入学。その後は新聞奨学生として配達をしながら専門学校に通ったという過去があります。
これらの経験があってか、ビジターセンター職員として働いていたとき群馬県の事業の尾瀬学校(現:尾瀬ネイチャーラーニング)で尾瀬に来た生徒のなかで、スニーカーに穴が空いてボロボロだったり、トイレチップを払えない(またはもったいないから)と言って、トイレを我慢する子がいると、ものすごく同情していました。
尾瀬のとあるイベントでは「戸倉〜鳩待峠行きのバス代が値上がりしたから、毎年行っていた場所だったけれど、もう尾瀬には行かないなぁ」と言われたこともあります。
自然を楽しむにも、守っていくにも当然お金がかかる。
入域料徴収が始まったら、(金額によるかもしれないけれど)足が遠のく人が増えるのは間違いないかもしれない。そもそも勝手に範囲を決めて、貴重な自然だからと管理をしているのは人間の都合なのだけれど、そうしなければ失われてしまうことは確か。
入域料の問題から、じつは根本的に何が大切で、何が必要なのかを考える良いきっかけになるのではないかと思っています。
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PROFILE
ランドネ / Oze Nature Interpreter
HagiwaraMai
尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。
尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。