【村越正海×栗山佳尚】2人のエキスパートが語る、相模湾エビングキハダ対談【Part 1】
SALT WORLD 編集部
- 2021年09月10日
人気の相模湾、キハダゲーム。ルアーマンにとって、キハダへの最短距離と認識されながらも、いまだ経験がない、という方が多いのがエビングではないだろうか? ここでは提唱者である村越正海と継承者である栗山佳尚、2人の対談を通して、その全体像を3回にわたって紹介。今回はその、【Part 1】をお届けする。
2人のエキスパートが語る、その全貌。
ソルトワールド 相模湾でエビングを始めたのはいつ頃ですか?
村越正海(以下、村越) 糸満沖のパヤオで知った釣り方だけど、沖縄全域でよく釣っていたので、地元でもある相模湾で使ってみようと思ったのがきっかけかな。2006年だと思う。いまみたいにキハダが相模湾内に回遊してくる、少し前の年だったと記憶しているよ。
栗山佳尚(以下、栗山) どんな船で釣ったんですか?
村越 キハダ専門のキャスティング船、コマセ船が出ていなかったので、カツオ、メジ狙いのコマセ船に乗せてもらって釣ったね。
栗山 結果はどうでした?
村越 エサ釣りの人は全滅だったけど、10kg前後のメジが2匹釣れたよ。当時の相模湾では夏はシイラをやって、秋になるとコマセ船に乗ってカツオ、メジをジギングで楽しんでいた。と言いたいところだけど、そのカツオ、メジがジグでなかなか釣れなかった。どうにか釣れないか、とずっと考えていたところにエビングがハマった感じかな。
ジグを40gとかにすれば喰ってきたりもしたけど、コマセ船でエサ釣りの人と同船して釣るにはトラブルの原因になりがち。でも、エビングならジグをいくらでも重くできるので、共存できた。
▲沖縄県糸満沖のパヤオで初めて経験したというエビング。あまりの釣れっぷりに、「これは事件だな、凄いなと思った」という村越。いまやエビングは相模湾の定番釣法だ。
▲大型魚への優位性、誰でもしっかりジグをシャクれることから、基本パターンとしてギンバルジャークを推奨している。
今後、エビングのますますの発展に期待
ソルトワールド エビングは徐々に相模湾に浸透していった、という感じですか。
村越 そうだね。受け入れてくれる船宿の問題であったり、ワームでしょ、と毛嫌いしていたルアーマンの問題もあったりで。ゆっくり浸透していったね。
栗山 僕も最初は抵抗がありました。ハードルアーで釣りたい、という気持ちもありましたしね。自分のなかでは大型のキハダが釣れる、ということで一気に考えが変わった部分があります。
村越 栗山くんはバシッとエビングを始めるまでにけっこう時間が掛かっていたよね。意外に古風だから。
栗山 キャスティングでのキハダ狙いでは相模湾にだいぶ通いましたが、なかなかキャストチャンスにも恵まれなかった。でも、エビングなら飛躍的に釣れる、とまでは言わないけれど、1日ずっと釣り続けることができる。これが本格的に始めるきっかけでしたね。
村越 3年くらい前かな。エビングは、栗山くんに任せた! って言ったのは?
ソルトワールド ある程度確立できたから、今後は栗山さんに、ということですか?
村越 もちろん、自分なりに確立できた、ということもあるけれど、物事を進めていくには、違う目線、発想というものが絶対に必要。エビングが釣りとして伸びていくことも期待して、栗山くんに任せる、と言った部分もあるね。
ソルトワールド 相模湾のエビング、シーズンはどのように捉えていますか?
栗山 僕はひとりで釣行して、コマセ船に同船するスタイルが基本。一般的なアングラーもこのパターンが多いのでは、と思います。コマセ船に乗るなら解禁となる8月1日がスタート。7月中に釣れないか、といえばそんなことはないし、仕立や専門船で出ればチャンスは十分にあると思いますけどね。
コマセ船で楽しむ場合、一般的には9月中旬くらいまでがエビングシーズンかな、と思います。自分は11月くらいまで狙いますけど、後半になるとコマセ釣りに対して、エビングでは難しくなるし、秋以降、海が悪くなることが多くなると、エビングでの釣り座であるミヨシでは釣りづらくなることが多いですから。
▲ファイトを満喫する栗山とアドバイスを与える村越。一般的なアングラーは栗山のファイトスタイルが参考になるだろう。
▲コマセ船で楽しむ場合、ミヨシ部分のスペースがルアーマンの舞台となる。シケに弱いのが難点のひとつだ。
タイミングを見極め、エビングで釣果を上げる
ソルトワールド シーズン中、エビングが一番効果的な時期はいつですか?
栗山 開幕から2週間くらい、コマセに慣れる前の時期です。この時期は出船時間すべてでヒットチャンスがあります。コマセ釣りより釣果を上げることが可能な時期でもあります。
開幕から時間が経過するにつれてコマセを捕食する時間帯が出てくる。そうなるとエビングでも喰いやすい時間のピークが出てくる。経験上、朝一番と終了近くはエビング有利かな、と思います。
あと新しい群れが湾内に入ってきたばかりのときはコマセに対してエビングが有利かな、と感じるときがあります。
村越 コマセ釣りとエビングの比較ではそうなるのかな? ただ、僕の場合は異なる捉え方をしている。コマセ釣りで釣れているんだったら魚がいることは確か。だったら、エビングも成立していると思うんだよね。
コマセを撒き続ければ餌付けと同じなので、8月1日以降、時期が進めば進むほどコマセ以外の釣り方で釣りにくくなるのは当たり前。でも、湾内に魚がいる限り、エビングは成立すると考えていい。
魚がいることが分かっていることは水面でキハダが跳ねているのと同じ。それならキャスティングで追いかけるのと同じモチベーションを、保ち続けられると思う。そういうスタンスで楽しめれば十分にエビングもオンシーズンと言えると思うんだよね。
栗山 近年、後期になるほど釣れるキハダのサイズが大きい傾向がある。だからできる限りは狙い続けたいですね。
ソルトワールド 相模湾ではコマセの存在を無視することはできないんですね?
村越 コマセ開幕当初はエビング有利、ということは多くのコマセ釣りの人が認めていると思う。その対処法として彼らはオキアミではなくてワームや人工のオキアミを使うことが当たり前にもなっている。これで釣れるわけだけど、そうなると我々も次のステップとして、その状況から学ぶこともある。ワームを使っているのは同じだけど、ハリスが長いから釣れるのか? ハリスが細いから釣れるのか? こうしたことを今後は解き明かしていきたいよね。
ソルトワールド エビングの基本的な部分でアドバイスはありますか?
村越 まずは絡みを防止することかな。手前マツリ、つまり自分のリグを絡ませてしまう人が多いね。まず、第一にパチモンのテンビンを使っている人は、そのハードルを越えることは出来ないかな(笑)。冗談は抜きにしても、しっかりしたテンビンを使うことは大切だね。
テンビンを使い慣れていないルアーマンは、ハリスの処理が分からない人もいる。とりあえずドボンと入れてそのまま沈めてしまう人がとても多い。そうするとリーダーとハリスが絡んでしまう。これを避けるためには、まずはハリスを張ることが大切。ワーム、テンビン、どちらを先に投入してもいいけれど、ハリスが張ってから沈めていくことが大事。慣れてきたら軽く投げて、着水のときにハリスをターンさせて張ってしまうこともできるけどね。
あとは、タナまで下ろしてもすぐにシャクり始めないこと。ハリスが潮に馴染んで伸びてからシャクり始めるのが基本。エサ釣りの世界では当たり前の動作だけれど、ルアーマンはテンビンを使う経験が少ない人が多いから、まずはこういう基本的なことをマスターしてほしいね。
栗山 他の釣り人との関係では、投入するときに、まず左右の釣り人のラインの入り方を確認してから投入する、というのも大切ですね。
村越 あとはワームの刺し方。深く刺し過ぎている人が多いと思うな。深すぎるとワームが沈んでいく間にクルクル回ってしまって、絡んでしまう原因になる。喰いも悪くなると思うよ。チョン掛けが基本なので、これを守ってほしいね。
▲村越正海。ショア、オフショアと幅広くソルトルアーの世界を切り拓いてきたパイオニア。ダイワフィールドテスターを務めるほか、セイカイコレクションを主宰。
▲栗山佳尚。ダイワフィールドスタッフとして活躍。ルアー船の船長経験を生かした、複眼的な見方でフィールドを捉える名手だ。
(文中敬称略)
【この記事は2021年7月現在の情報です】
【村越正海×栗山佳尚】相模湾エビングキハダ対談【Part 2】はこちら>>>
【村越正海×栗山佳尚】相模湾エビングキハダ対談【Part 3】はこちら>>>
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近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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