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日帰りのジギングでマグロを狙えるフィールド―熊野灘×小野誠―【フィールド解説&メモリアル】

キハダをジギングで狙うと聞いて真っ先に思い浮かぶのが沖縄の久米島。しかしキハダの回遊があり、パヤオが設置されている海域なら近場にも可能性があるはず。熊野灘はその条件にピタリと当てはまるフィールドだった。ここでのジギングを小野誠氏に解説してもらおう。

スローピッチジャークがキハダジギングのカギ

ここ数年、キハダマグロをスローピッチジャーク(以下SPJ)で狙うメソッドが確立され、新たなフィールドの開拓と合わせてキハダジギングにチャレンジするアングラーが増えつつある。今回は私がここ数年通っている熊野灘のキハダジギングを紹介したい。

キハダをSPJで狙うスタイルが確立されたのは、久米島のパヤオが始まりだ。当時はキハダがジギングで釣れるのは久米島や沖縄の遠征釣行だけと思われていたが、キハダの回遊がありパヤオがある海域なら、南方でなくても釣れると確信していた。関西からでも日帰りができる海域で、キハダが回遊しているのは熊野灘だ。

熊野灘は和歌山県紀伊半島南端の潮岬から、三重県大王崎にかけての海域。キハダを狙えるシーズンは年によるが、早ければ5月、遅い年だと7月にスタートして水温が下がる11月ごろまで。ここ数年は室戸岬や潮岬にぶつかった黒潮が南へ蛇行して、まっすぐに熊野灘まで北上しない。

この海域のキハダの回遊は、蛇行して伊豆諸島方面から再び北上した分流が北東から南西の海流によって入ってきていると推察される。キハダは18~31℃の海域に生息しており、マグロ類としては最も高い23~25℃の水温を好む。高めの水温のほうが体がよく動くので、夏場の高水温の時期に最強のファイトを見せる。

キハダをジギングで釣るメソッドが確立された要因としては、SPJのジギングスタイルの功績が大きい。フロントアシストだけのハイピッチジャークで釣ることは難しかったが、テールフックを付けて、上げのジャークではなくフォールアクションを中心に攻めれば大型キハダが反応することが分かったからだ。テールフックを取り付けることでテールに水流抵抗が生まれ、ジグの水平フォール姿勢を持続させることができる。

SPJのスタイルでは時にロッドを振り上げた位置からジグのフォールを開始し、水中に引き込まれるラインをロッドティップで追いかける要領で最長4~5mの水平フォールを演出する。パヤオが設置される外洋で狙うため、ジグをボトムまで沈めることはなく、船長の指示するキハダの回遊レンジを効率よく狙いたい。

久米島では海面下100~150mのレンジが多く、深い場合は200mに反応が見られるが、熊野灘は浅く50~100mを回遊していることが多い。これは水温躍層とベイトのレンジに左右されている。

フォール主体のジギングとはいえ、前述のロングフォールを連続して単調に行う訳ではない。船長の指示するタナ(キハダの反応がある水深)よりも10~20mほどラインを出して、ミドルスピードのワンピッチジャークを始める。

上げのジャークでヒットしてくるのは小型のキハダかカツオが多い。20mほど上げた後にジャークのテンポを変えて、フォール主体のジャークでできるだけレンジをキープしつつ狙う。

ヒットがなければワンピッチジャークを行い、一気に20~25mレンジを変える。同じレンジのフォールアクションで粘るよりある程度大きくレンジを切り替えて狙った方が効率よく探ることができる。またレンジ切り替えのためにワンピッチジャークを行うことは、ヒットには至らなくてもジグを発見させて追わせる効果もある。その後のロングフォールで喰わせるイメージだ。

熊野灘のキハダジギングは、スパンカーで船を立てずにドテラ流しで釣ることにも注意したい。海流と風の向き次第でラインの入射角度が様々に変化するが、狙ったレンジにジグを送り込むためにも、入射角度によってどのぐらいラインを放出すればいいかを覚えておくとよい。

たとえば入射角度が垂直(90度)ならば、そのままのラインの示す数値が狙いのレンジだが、45度だとどうだろう。三角関数で考えればルート2となるが、約1.4倍と覚えておこう。つまり海面から100mのレンジを狙うためには140mラインを出せば良い。

60度だと1.15倍……。あまり難しく考えず、45度=1.4倍を基準に角度が大きければそれよりも少なく、ラインが流されて角度が小さくなればより多く出すことが大切だ。

▲キハダジギングの確立にはスローピッチジャークが大きな役割を果たした、と小野氏。これは6月27日に志摩のトロ丸でキャッチした26㎏のメバチ。

キハダと入れ替わりにビンチヨウも回遊!

2018年に尾鷲ディープブルーの川口船長と出会って、初めてジギングで狙わせてもらった。しかしこの年はキハダシーズンのスタートが遅く、5月と6月は釣果を出すことが出来なかった。7月になってようやく回遊があり、私にとって初めて、熊野灘でのジギングで釣果を得た。この頃はジギングで狙わせてくれる遊漁船も、ジギングで狙うアングラーも少なかったが、この2018年の年末から2019年春までビンチョウが爆釣したことで、マグロジギングを始めるアングラーが徐々に増えたようだ。

昨年2019年のシーズンインは早く、5月ごろから回遊がありジギングでの釣果もあった。しかもサイズが良く苦戦するアングラーが目立った。20㎏クラスよりも30㎏台が多く、大型だと40㎏以上がヒットした。

PE3号、細軸のスパークフックのタックル。ドラグの初期設定は2~3㎏でファイト中に徐々に設定値を上げていき、取り込み時には6~8㎏を推奨していたが、このタックルだと無理ができない。大型のキハダとのファイトに不慣れなアングラーが、苦戦の末にフックアウトやラインブレイクが頻発した。また、釣行会では長時間の単独ファイトが出来ず、仕方なく私が交代することもあり反省点が多い。

このため今シーズン2020年は、ファイト時間の短縮を目的にPE4号タックルで挑もうと準備をしている。ラインが太いぶんドラグ数値を上げることができるが、それに伴いフック強度が必要なので、太軸のヘビースパークを使う。フックのセッティングはテールフック1本のみである。

フロントフックを使わない理由は、フォールでヒットする大型は高確率でテールフックに掛かる傾向があること。また、この状態でキハダが走り、フロントフックがエラやヒレ周辺に掛かってしまった場合には、テーリングしているジグの如く抵抗が増えて長時間のファイトを強いられることとなる。

取り込みの際にもマグロ類は円を描きながら浮上するが、フロントフックがヒレに掛かった状態では描く円が非常に大きくなり、取り込みの際にラインが船底を擦ってブレイクする原因となる。これは昨シーズンに私自身が苦い思いをしたためで、その反省を元にリアフックのみで狙いたいと思っている。

昨年2019年は多くのアングラーが熊野灘のキハダをジギングでキャッチした。キハダとシーズンの入れ替わりに回遊するビンチョウのジギング(=トンジギ)でマグロジギングにエントリーする人も、今シーズンはかなり増えた印象だ。

熊野灘なら日帰りの釣行でマグロが狙える。尾鷲や伊勢、志摩方面からキハダジギング便を出してくれる遊漁船もかなり増えた。決して簡単なターゲットではないが、キャッチした喜びを仲間と共感できる夢のファイターであることは間違いない。

普段からブリ狙いのジギングを楽しんでいるアングラーなら、きっとジギングのスキルアップに繋がるだろう。今シーズンは一度、熊野灘のキハダに挑戦してみてはいかがだろうか。

▲徐々に確立され、アングラーも増えたがまだまだ反省点も多い。2020年はタックルやファイトの方法を改善し、キャッチ率の向上を目指す。
▲2020年、小野氏がキハダジギングに使用するSPJタックル。ちなみに特定のベイトが固まることはなく、この釣りにマッチザベイトのパターンは成立しにくいという。

TACKLE

ロッド:シャウト!セデュースSPJ SPJライダー
リール:スタジオオーシャンマークL80Hi
ライン:YGKよつあみ オッズポートWXP1 #4
リーダー:YGKよつあみ ガリスFCアブソーバー18号
ジグ:ランス200g、250g、Snランス140g、170g
フック:シャウト!ヘビースパークシングル3㎝ #3/0、#4/0

出典

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SALT WORLD 編集部

SALT WORLD 編集部

近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。

SALT WORLD 編集部の記事一覧

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