「中深海スロージギング」その魅力とベーシック的思考を清水一成が語る【後編】
SALT WORLD 編集部
- 2021年12月29日
“釣りの組み立てが難しい”“なかなか釣れない”というイメージが強い、中深海のスロージギング。だが、釣れるプロセスを理論として説明できるという釣りとしての面白さ、そして奥深さは、他の釣りにはない大きな魅力だ。その魅力を前編に引き続き、中深海スロージギングの第一人者のひとりである清水一成さんが解説する。
「中深海スロージギング」その魅力とベーシック的思考を清水一成が語る【前編】はこちら>>>
多くても2種類のジグを1年は使い続ける
スロージギング用のジグは、それこそ星の数ほどあると言っても過言ではないほど各社から様々な形状とカラー、そしてウエイトが発売されている。その中から何を選べばよいのか、これは初心者ならずとも迷ってしまうだろう。
「中深海スロージギングの代表的ターゲットであるアカムツを例に話を進めると、アカムツはボトムから1mとかなり狭いレンジを攻めるので、正直ジグは横を向かせにくいといえます。ですが、実はむしろ横を向かせなくてもアカムツは釣れます。止めていても食うことがあるほどです。極端なことを言ってしまえば、すべてのタイプのジグで食わせることが可能です。このジグでなければ釣れない、ということはありません」
ではなぜしゃくるのか? という疑問が湧いてくる。
「それはアカムツに興味を持ってもらうためです。アカムツは目が大きく、目でエサを探す魚であるということは容易に想像できます。また、体高があって側線も発達しているため、波動もキャッチしやすい魚だと思います。尻尾も大きくて遊泳力もあります。要は、好奇心が強く、運動能力もある。そんなアカムツなので、それに対するアピールとして大きくしゃくります」
ではジグは何を使えばいいのか、ということなのだが、
「スロージギングの基本をマスターするという観点からいえば、ジグはタイプをあまり変えないということが重要です。ジグの形状(タイプ)を変えてしまうと、引き抵抗が変わってしまいます。ただ、状況によってはフォールスピードを変えたいとなることもあると思います。そんなときは、ジグの形状で変化させるのではなく、同じ種類のジグで重さだけを変えて対応していただきたいと思います。これが重要です」
こうすることで、いつでも潮の状態を比較することができるようになるというわけだ。
「最初の1年ぐらいはひとつのジグ、多くても2種類のジグの重さだけを変えて使い続けてほしいと思います」
自分の中でパイロットとなるジグをひとつもしくはふたつ、決めておくとよいだろう。
ジグのカラーについては、「これは私個人の価値観ですが、ベースとなる色よりは、グローの量に気を遣っています。テストなどではまったく色を塗っていないジグで釣ってくださいと言われることもあるのですが、その場合でもグローのシールだけは貼らせてもらうようにしています。
ただ、グローが強すぎると本命以外のゲストも含めいろいろな魚を寄せてしまうような気がしています。とはいえ、グローがまったくないというのも釣りにくい。ゲストを引き寄せてしまう境目がどこなのかは分かりませんが、グローはやはり入っていたほうがいいと思っています。私の感覚では、多くてもゼブラ程度のグローは欲しいと思っています」
清水さんによると、どのようなカラーが良いのか分からなければ、まずはゼブラを選んでおけば間違いないそうだ。
中深海をより楽しむための心得
最後は、中深海スロージギングをより楽しむためのアドバイスや考え方を教えてもらった。
「テクニック面では、やさしく丁寧にしゃくること。これが大前提です。こうすることで、竿に余計な負荷が掛からず、きれいにしゃくることができます。そして、アカムツに限って言えば、それにプラスして底から1mをどれだけキープできるか、が重要です。底から3mで食うこともありますが、私はこれまで釣ったアカムツの9割を下から1mで食わせています。それゆえの1mで、これが理想だと思っています」
やさしく丁寧にしゃくること。そして底から1mをキープすること。この2つができればアカムツは釣れるはず、と清水さんは言う。
「それ以上難しいことは必要ありません。こんなに深くてこんなにジグが重いのだから、思いっきりしゃくらなければジグは動かない、という先入観は絶対に取り除いてください」
さらに、アカムツ狙いであればアカムツだけが釣れれば一番良いのは確かだが、それしか釣果として認めないとなると、釣れないときに心が折れてしまう。ところが、
「釣果にこだわらなければ、この釣りはジグを投入するたびにいろんな魚が釣れる釣りでもありますので、私はそれはそれで楽しいことだと思っています。そして、たとえばアカムツは独特の叩き方(引き)をするので、アカムツがヒットすればすぐにそれと分かります。
ただ、たとえそうでなかったとしても、たとえば250mの水深で何が掛かったのかを想像し、どんな魚が上がって来るのか当ててみることもこの釣りの楽しみのひとつだと私は思っています。上げてくるまでの250mもの間、ずっと楽しめるわけです。そんなことも追求してほしいと思います」
東京タワー一本分前後の深さの海から、いったいどんな魚が上がって来るのか……。そんなことを考えただけでもワクワクしてしまうというもの。
実際、清水さんも、「釣ったことのない魚を釣りたいというのが今後の一番の目標ですね。見たことのない魚、名前が分からない魚を釣ってドキドキしてみたいですね」と言う。
深海には未知の生物がいても不思議ではない。深海釣りには、壮大なロマンがある。
「たしかにデカい魚もいいんですが、私の場合はデカい=スゴイではないと思っています。それよりも、自分がどうやってその釣りにアジャストできたかのほうが重要です。そういう楽しみ方なら、身近なフィールドでもその魚にたどり着くまでのプロセスを楽しめると思います。そういう釣りをするなかで、贅沢を言えば釣ったことのない魚に出会ってみたい、ということです」
この釣りの奥の深さを楽しむうえで、魚は副賞に過ぎない、と清水さんは考える。スロージギングは大漁を目指す釣りではなく、ロジックを組み立てて海にアジャストしていく過程を楽しむ釣り。そのなかでアカムツなどの魚が食ってきたら、なお嬉しいということだ。
「繰り返しになりますが、この釣りはすべてが必然です。したがって、そのときの海の状態に合わせることができなければ、逆に偶然ヒットすることは期待できないということでもあります。
つまり、この釣りはそれだけロジックが確立されているということです。簡単に釣れる釣りももちろん楽しいですが、中深海のスロージギングの楽しさはそういうところではなく、自分のセッティング次第で釣りがガラッと変わる、というところにあります。そこを突き詰めていくのがこの釣りの醍醐味なのです」
スローの動作のなかには常にたくさんのヒントが隠されていて、それを釣り人が感じ取ることができるかどうかが重要だ、と清水さん。
「そういったことを常に考えてやっていれば、絶対に飽きることのない奥の深い釣りです」
SHARE
PROFILE
SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。