桁違いのクライマーが群馬の超山岳ライドイベントに挑戦|10,000UPチャレンジDay【DAY1】
Bicycle Club編集部
- 2023年08月07日
全国のクライマーの皆さん、ご機嫌いかがだろうか?
ヒルクライムイベントはたくさんあるが、関東最強ともいえる山岳ライドイベントが7月8、9日に開催された。その名も「10,000UPチャレンジDay」。
場所は群馬県北部に位置する5市町村(沼田市・片品村・川場村・昭和村・みなかみ町)を合わせた利根沼田エリア。周りを谷川岳・日光白根山・赤城山・武尊山・至仏山など名だたる山々にぐるりと囲まれた、美しい自然豊かな土地である。この場所で2日間、上って下って上って下って……、とにかく走りまくろうじゃないかというイベントだ。
INDEX
◎写真&文:大星直輝
獲得標高なんと11,123m! 5つの山岳コースを2日間で走破
今回のイベントの総走行距離は約487km、獲得標高は11,123m(1日目約236km 獲得標高5,286m、2日目の走行距離は約251km 獲得標高5,837m)。いかなる豪脚クライマーも満足度100%オーバー必至の激ハード山岳ライドイベントである!!
なお、10,000UPのイベント名にもかかわらず、実獲得標高11,000mオーバーという大盛りサービスっぷりだ。
じつはこのイベント、「ツール・ド × 10,000UP in Gunma」として2年前より紹介されている5つの山岳コースを2日間にまとめたもの。距離順に日光白根山upコース125km・至仏山upコース110km・武尊山upコース90km・谷川岳upコース90km・赤城山upコース80kmの5コースである。
各コースはコース獲得標高がその山の標高と同程度に設定されている。すなわち各コースを走り切れば、その山を自転車で上ったと同等の達成感も味わえるようになっている、すごい!
なお昨年のチャレンジDayイベントでは3日間の設定で開催された(台風の影響により走行自体は2日間)。今年はさらなる高みを目指し、通常1日1コースを走る想定で作られたこのコースを2日で走破しようというわけだ。
国内屈指の豪脚クライマーが集結
チャレンジャーは多数の応募者の中から主催者によって厳選された11人と、大会公式チャレンジャーの篠さんと高岡亮寛さん。
YouTuberとして活躍する自転車インフルエンサーの篠さんは今回の紅一点。昨年もチャレンジした生粋のクライマーだ。またツール・ド・おきなわ7勝など数々のレースで勝利を掲げてきた最強市民ライダー、Roppongi Expressの高岡亮寛さんの走りにも注目が集まった。
さらに今回は地元である群馬グリフィン・レーシングチームより、2022年全日本選手権個人TT優勝や乗鞍ヒルクライムチャンピオンクラス優勝など輝かしい成績をもつ金子宗平選手と、チーム副将の小山貴大選手、渡辺将大監督など超豪華なサポートメンバーが参加した。
道の駅・川場田園プラザから長い挑戦がスタート
梅雨明け前ということもあり、当日は弱めの雨模様。5時前に参加者全員が道の駅・川場田園プラザに集合。ブリーフィングと軽い自己紹介を済ませたのち、長い初日の旅に出発した。
ちなみに某旅行情報誌が発表した道の駅ランキング全国一位にも選ばれたこちらの川場田園プラザは、利根沼田地域の観光名所として近年人気急上昇のスポットだ。広々とした敷地内に飲食店や物産店などが多数出店しており、その場で握ってもらえる地元の川場村のブランド米「雪ほたか」を使ったおにぎりや、新鮮なフルーツなどがサイクリストの補給にも最適だ。
タイムリミットは日暮れまで
スタート直後から、高岡さん率いるハイペースな先頭グループと、長丁場に合わせて抑え気味に走るという篠さんのグループに分かれて進行。レースではなく完走目的のイベントであるものの、日が暮れる前に戻るといった条件はつけられている。
いくつかの峠道においては夜中の走行は可能な限り避けてほしいとのことで、路面状況や野生動物、ときには熊にも出会う可能性もあるそうだ。一晩中走って完走しようと考えるブルベライダーなどは特に注意してほしい。
初日は5時半スタートの18時半ゴール目標、間に合わなければ回収もあり得るとのこと。これがのちに参加者への心理的プレッシャーとなるのか!?
序盤から最難関の日光白根山upコースへ
初日の第一コース・日光白根山upコース125kmは前半にメインヒルクライム2本が待ち構える、今回5コースの中でも最難関のコースだ。
アップもそこそこにいきなりメインの1本目を上り終えた参加者は、車列も伸び後半グループはすっかりバラバラに。続く2本目のメインである日光白根山・丸山高原センターステーションは標高1,400メートル。ここまで一気に駆け上がる。
下った先にある農業用道路の利根沼田望郷ラインは、まるで北海道のような雄大な景色が広がる。野菜王国・フルーツ王国をうたう利根沼田地域一帯は昼と夜の寒暖差が大きく、とてもおいしい農作物の宝庫だ。
今回参加者には採れたてのさくらんぼ・紅秀峰やブルベリーが提供された。桃・ぶどう・りんご・柿など季節の移り変わりとともに収穫物も変わり、6月から11月の半年間はいつ来ても旬なフルーツが楽しめる。
エイドには充電チャージステーションも
こういった長丁場のイベントではサイコンやスマホのGPSによる充電切れが致命的だ。もちろんベテランライダーであればモバイルバッテリーなどで対策済みだろうが、備えあれば憂いなし!とのことで、東京電力パワーグリッド(株)高崎支社による充電チャージステーションがエイドに設置された。
三菱のアウトランダーPHEVからPOWER MOVERという機器を使って電力を取り出すことにより、こういったイベントや災害時などどこへでも移動して電力の供給ができるという。
現役プロ&最強の市民レーサーによる強烈な引き
ライドの先頭では上りを高岡さん、平地を金子選手が引き、ぱんちさんと西山さんがそれに付くといった流れで進行。トップアスリート二人による引きは強烈! 想定到着時刻の1時間以上早い約5時間で1コース目を走り切った。
トップで戻った高岡さんは「ほぼ平地のないアップダウンで、上り好きにはたまらないコースで楽しい。初めてなのでサイコンでコースプロフィールを見ながら、無理せずに走っている」とあくまで普段どおりだという様子。
しかし共に走った2人は違った。
「じつはヒルクライムが苦手で、エンデューロレースが得意」と語るHonda栃木所属のぱんちさんは「まだ初日の半分なのが信じられない。もう全てが終わっている位の疲労感を感じてる」と遠い目をしていた。
また、普段はショップでメカニックをしつつ、ヒルクライムレースも積極的に参加するという西山さんは「あまりに必死で、走行中は高岡さんと金子さんのお尻しか見ていない。もはや上ってるのか平地なのかもわからない(笑)。やばい領域でギリギリでついていってる感じでした」と語った。
それでも国内トップクラスのレースで活躍する2人についていけるだけで、相当な実力者である。「トップ選手と走るなんてなかなか無い機会なので、いける所まで頑張りたい」と後半に向けての意気込みを語った。
関東の水瓶、奈良俣ダムからさらに上を目指す
初日後半は至仏山upコース110km。みなかみ町をスタートして20kmほど走ると奈良俣ダムがある。利根川水系楢俣川に建設された、首都圏に水を供給する関東の水瓶だ。
ダムを過ぎると水上片品線を15kmほど上るヒルクライムが始まり、地元で最もハードと噂される坤六峠(こんろくとうげ、1,620m)へと向かっていく。先頭グループを引き続けた高岡さんは徐々にパワーを上げていき、ついに後続を振り切っての一人旅に突入。なんと昨年乗鞍ヒルクライムチャンピオンの金子選手まで引き離して、残りゴールまで独走ということとなった。
金子選手は途中まさかのハンガーノックに。元々痛めていた肋骨のケガの影響もあってか、頂上で完全に燃え尽きる。補給の大切さはもちろんだが、ヒルクライムチャンピオンをここまで追い込む今回のコースの過酷さに改めて驚かされた。
全員がゴールへ到着! 1日で体重が5kg落ちた参加者も
そして全員無事に見事な初日ゴール。先頭の超特急高岡トレインに振り落とされまいと必死だった西山さんとぱんちさん。「異次元な強度で夢のような経験でした……」と語る。ハードな練習をすると2〜3kg体重が落ちるという西山さんは、この日なんと5kg体重が落ちたという。
マイペースで走り切れたというにじるさんは「1カ月前の富士ヒルクライムをピークにしてしまったため、その後11キロも体重が増えてしまった。重くなったことで昨日までとても不安だったけれど、初日を無事に走りきれてホッとしてる。今日は老神温泉に泊まって休養したい」と安堵の表情を浮かべた。
小山貴大選手は「普段の練習より全然ハードです。ただ自分は群馬出身なので、ここは完走しとかなきゃと思って、気合い入れてきました。明日も走って、必ず10,000mマイスターの称号とって帰ります!」と意気込みを語った。
2日目へ続く!
▼2日目のレポートはこちらから
関東最大級の山岳ライドに参加してみよう!
利根沼田サイクルツーリズム推進委員会では、今回紹介したコースに挑戦できる期間限定キャンペーン「ツール・ド×10,000UP in Gunma」を開催中。サイクリング専用アプリ 「ツール・ド」を使って好きな時に挑戦でき、コースを1つクリアするごとに走破の証がもらえる。さらに、5つのコース走破で10,000UPマスタートロフィーを贈呈! 期間は11月19日まで。参加方法など詳細は公式サイトをチェックしよう!
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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