
タデイ・ポガチャル35km独走 モニュメント9勝目の偉業|リエージュ~バストーニュ~リエージュ

福光俊介
- 2025年04月28日
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春のクラシックシーズンを締める大一番、リエージュ~バストーニュ~リエージュが開催地ベルギー時間の4月27日に行われ、世界王者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)がフィニッシュまでの35kmを独走。2年連続3度目の優勝を飾ると同時に、モニュメント9勝目。3日前のラ・フレーシュ・ワロンヌも勝っており、今季のアルデンヌクラシック3戦のうち2つで頂点に立った。
最も歴史あるワンデーレース
今回で111回目を迎える伝統のレースは1892年に初開催され、最も歴史あるワンデーレースと言われる。“ラ・ドワイエンヌ”(最古参)と愛称でも呼ばれ、クラシックレースの華でもある。
大会名の通り、ベルギー南部・ワロン地方の主要都市リエージュを出発し、バストーニュに向かって南下。そこから針路を北に変えてリエージュに戻る252kmのルートが設定された。その間、11カ所の登坂区間があり、いずれも距離こそ短いながら最大勾配にして10%級の急坂ばかり。獲得標高は4300mに達し、その難易度は山岳コース並み。ポイントとしては、173.5km地点コート・ド・ストクー(登坂距離1.1km、平均勾配11.9%)、177.7km地点コート・ド・ラ・オート・ルヴェ(2.2km、7.5%)、218km地点コート・ド・ラ・ルドゥット(1.6km、9.5%)、238.7km地点コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(1.4km、11.4%)などが挙げられる。

最大勾配16.5%のコート・ド・ラ・ルドゥットでアタック
リアルスタートから30kmまでに逃げが決まり、12人が先頭グループを形成。最大5分30秒までリードを広げた。メイン集団はポガチャル擁するUAEチームエミレーツ・XRGと、レムコ・エヴェネプールがリーダーを務めるスーダル・クイックステップが主にコントロールを担う。

形勢がほぼ変わることなく前半を終えたが、119.4km地点のコル・ド・オシールでトビアス・フォス(ノルウェー)とボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)のイネオス・グレナディアーズがカウンターアタック。これでメイン集団のペースが上がり、2人からおおよそ30秒差で続く。フィニッシュまで80kmほど残したところでイネオスの2選手を捕らえ、逃げ続ける選手たちとの差も約1分まで縮めた。

こうなると、逃げの吸収も時間の問題に。勢いで勝る集団は、コル・デュ・ロジエの頂上手前で先行していた選手たちをすべてキャッチ。残り60kmでレースを振り出しに戻し、UAEのペースメイクでレース後半へと突入した。

この日の大きな瞬間は、残り35kmでやってきた。コート・ド・ラ・ルドゥットを迎えると、それまでアシスト陣の働きを受けてきたポガチャルがスルスルと先頭へ。シッティングのまま加速すると、最大勾配16.5%の上りを軽快にこなし、他に追随する間を与えない。後ろではジュリアン・アラフィリップ(チューダープロサイクリングチーム、フランス)が腰を上げ、トーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリングチーム、イギリス)、ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)、ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)も続いて2番手グループを形成。

ラドゥットの頂上で10秒だったタイム差は、数キロのうちに30秒まで広げ、徐々にポガチャルの勝ちパターンに。次の上りコート・デ・フォルジュでは1分以上の差となり、続く4人パックの後ろではレムコたちのグループが前への合流を目指していた。
その後も快調に飛ばしたポガチャルは、最終登坂のロッシュ・オ・フォーコンで後ろとの差を1分20秒として、独走勝利を濃厚に。2番手グループではヒーリーとチッコーネがアタックし、アラフィリップとピドコックを振り切ることに成功。2人が表彰台の位置をかけて最後の争いへと移った。
あとはフィニッシュに到達するだけとなったポガチャルは、リエージュの街に戻ると笑顔でウイニングライド。横についたカメラバイクに向かってポーズを決め、最後は沿道のファンとタッチをかわしてリエージュ3度目の優勝の瞬間を迎えた。

大成功の春を終えてツールへシフト
この優勝でポガチャルはモニュメントで9勝目とし、エディ・メルクス、ロジェ・デフラミンクに次ぐ歴代3位に。また、モニュメントで6大会連続となる表彰台。ツール・ド・フランスの直近王者にして、世界王者の証であるマイヨ・アルカンシエルでリエージュを勝ったのは、1972年のメルクス以来。まさに記録尽くしの快勝だった。

これで、ポガチャルは今季出場したレースすべてで3位以内(ステージレースは個人総合成績)とし、驚異的なアベレージでシーズン前半を終了。早くからワンデーレースへの注力を宣言し、リエージュ終了後は休養を経てツール2連覇へ向けた調整に入る予定。次戦は6月8日開幕のツール前哨戦、クリテリウム・デュ・ドーフィネとなる公算だ。
歓喜のポガチャルから1分3秒後、チッコーネとヒーリーが集団の猛追を逃れて2位争い。ここはチッコーネが先着し2位確定、ヒーリーは3位で表彰台3枠が確定した。

リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝 タデイ・ポガチャル コメント

「シーズン前半を最高の形で終えられて本当にうれしい。ここまでのシーズンは完璧だ。ラ・ルドゥットでのアタックは予定していなかったが、それまでのペースが速く、多くのチームが人数を減らしているのを感じていた。だから、脚を試しつつトップに立てるか試してみたつもりだった。その後の上りも調子が良く、これならフィニッシュまで行けると確信できた。
この後は少し休養して、次に向けた準備に入る。まだまだシーズンは長いけど、楽しみがいっぱいある」
リエージュ~バストーニュ~リエージュ2025 結果
1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG、スロベニア)6:00:09
2 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)+1’03”
3 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)ST
4 シモーネ・ヴェラスコ(XDS・アスタナ チーム、イタリア)+1’10”
5 ティボー・ネイス(リドル・トレック、ベルギー)ST
6 アンドレア・バジョーリ(リドル・トレック、イタリア)ST
7 ダニエル・マルティネス(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、コロンビア)ST
8 アクセル・ローランス(イネオス・グレナディアーズ、フランス)ST
9 トーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリングチーム、イギリス)ST
10 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト、アメリカ)ST
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