UCIワールドツアー初挑戦 吉川 美穂選手に独占インタビュー(前編)
FUNQ
- 2017年05月03日
今季UCIワールドツアーに初参戦となる、日本期待の吉川 美穂選手。BiCYCLE CLUB独占インタビューをシリーズでお届けします。
昨年の世界選手権では日本人最上位となる21位で元世界チャンピオンのマリアンヌ・フォスらと同じ集団でゴールし、今季から世界のトップカテゴリーのUCIワールドツアー女子レースを走る吉川選手。
高校3年生の夏にソフトボールから自転車競技へ転向した彼女の競技暦は比較的浅く、まだ伸び盛りの選手ですが、24歳になった彼女の胸の内は?
国内での所属チーム ビチ ステンレの本拠地 宇都宮を訪ね、JAPAN CUPで有名な古賀志林道のコースを一緒に走りながら、心境と抱負を伺ってきました。
JAPAN CUPのスタート/フィニッシュ地点にて、UCIワールドツアー参戦で期待に胸が膨らむ吉川選手
UCIワールドツアーに今季初挑戦することへの期待と不安
吉川選手は2017年シーズンに向けて苦手な登りを強化するため、地元の大阪から宇都宮へ活動拠点を移したそうです。
しかし、昨年8月のJCF日本代表メンバーとしてのフランス遠征で、現チームBizkaia Durango(スペイン)チームマネージャーの目に留まり、今回のUCIワールドツアーチーム入りが決まり、ヨーロッパへ渡ることになりました。
バイシクルクラブ(以下 BC):昨年ドーハで開催の世界選手権では日本人選手の中で最上位となる21位。マリアンヌ・フォスなど世界のトップライダーたちと同じ集団でゴールしています。どんな気持ちでしたか?
吉川 美穂選手(以下 MY):そうですね、世界選手権は私の得意なフラットコースで、集団走行の位置取りも特に問題なく走れたと思います。悔やまれるのは、終盤に補給で一旦集団から後ろに下がり、そこからレースが動いて集団復帰に脚を使ってしまったことです。それがなければUCIポイントの取れる前の集団でゴールできたのに!って思いました。
BC:頼もしいですね、そこからさらに上を目指せたとは!Wiggle High Five(イギリス)の萩原選手、FDJ(フランス)の與那嶺選手に続く3人目の日本人UCIプロライダーとなりましたが、ヨーロッパのプロ選手たちに負けない体格とスピードが吉川選手の武器になると思います。日本のレースにはないハイスピードでの集団走行や下りなど、レース展開の違いに不安はないですか?
MY:はい、集団走行や下りはけっこう得意なんですよ。でも登りがちょっと苦手なので、ヨーロッパで何とかこなせるようになりたいです。
2月に初めてスペインへ渡って、チームメイトたちと現地を走ってみたら、チームマネージャーから「ミホ、けっこう登りも走れるじゃない!」って言ってもらえたので、まずはヨーロッパで経験を積んで、克服していきます。
BC:もしくは、クライマーと登りで戦うのはやめて、いっそのこと日本人女子選手で初のクラシックライダーを目指すというのもありですよ。男子のプロ選手で言うならトム・ボーネンのように!
古賀志林道を軽やかに登る吉川選手。日本の女子選手としては軽量とは言えないものの、ソフトボールで鍛えた体幹の強さが伺えます
古賀志の頂上から下りへ。スピードに恐怖感はなく、むしろ楽しんでいる様子
下りは得意だという頼もしさ、置いていかれないように写真を撮るのが大変!
2020年の東京オリンピックは狙っていきたい
BC:2月はバーレーンで開催されたアジア選手権ロードレースで3位表彰台でした。どのようなレースでしたか?
MY:サーキットを周回するコースで、最後のスプリント勝負なら勝てる自信はあったんですが、終盤に脚が痙攣してしまい最後のゴールスプリントで満足なスプリントはできなかったんです。私の力不足です。
BC:アジアでトップクラスの走りができると、本場ヨーロッパでもけっこう走れるものですか?
MY:それがですね、ヨーロッパとアジアでは全然レベルが違います。ですから、これからが私の本当のチャレンジだと思っています。
BC:2020年の東京オリンピックですが、あまり厳しい登りがないコースのようです。やはり狙っていきますか?
MY:はい、もちろんです!コースレイアウト的にも私に向いているコースだと思います。こんなチャンスは一生に一度だと思うんですよ、東京オリンピックはUCIワールドツアーのレースと共に大きな目標です。
BC:今年も含め、この2年半が勝負ですね。怪我には気をつけて頑張ってください。
MY:ありがとうございます!Bizkaiaのチームはスペインというお国柄のせいか、とてもアットホームな雰囲気で環境はいいと思います。まずはUCIワールドツアーでしっかり走れるように頑張ります。
ビチ ステンレにて。オーナーとマネージャーの針谷さん親子、居合わせた宇都宮ブリッツェンの鈴木 譲選手と
国内での所属チームは宇都宮が本拠地、宇都宮といえばやっぱり餃子です
BC:3月には一時帰国してJBCFの宇都宮クリテリウムは見事3連覇で優勝しました。国内では、UCIレース以外のレースに関して引き続きビチ ステンレで走るということですね。
MY:今年の初戦、地元レースで3連覇が達成できて幸先の良いスタートが切れました。チームオーナーでメカニックの針谷さん(宇都宮ブリッツェンのメカニックも務める)と去年引退されましたが、女子選手の先輩としてアドバイスをして下さるチームマネージャーの針谷 千沙子さん、チームスポンサー様たちへ少しでも恩返しができれば嬉しいです。
私たちは古賀志林道を走り、最後に宇都宮名物の餃子を堪能しました。吉川選手の見事な食べっぷりは感動もの!お店の方たちもすぐにファンになって応援してくれました。
吉川選手はアスリートとしての素質だけでなく、健康的で愛くるしいルックス、気さくな人柄で日本だけでなく本場ヨーロッパのロードレースファンの間でもきっと人気が出ると思います。
日本のロードレースをメジャースポーツに近づけていく上で、スター選手の存在は必要であり、これから注目していきたい選手の1人です。
<後編へ続く>
TEXT&PHOTO:加藤 修
- BRAND :
- Bicycle Club
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