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坂を上るときは休むこともポイント!?プロから習う上がりが楽になるテクニック

最近は、街のあちこちで見かける自転車乗り。特にロードバイクに乗って颯爽と走り過ぎるライダーを見ると「かっこいいなぁ」と思わず目で追ってしまう。ロードバイクの魅力は、なんといってもそのスピード感。でも、速いペースを維持して走るテクニックは、簡単に身につけられるものでもない。

それでは、なぜプロ選手は速いペースを維持できるのか? プロだって無尽蔵にエネルギーが使えるわけではない。巧みなテクニックでON&OFFを使い分けているからだ。そのテクニックを宇都宮ブリッツェンの小野寺玲選手(上の写真右)に教えてもらった。

小野寺玲選手は、1995年生まれ。2017年U23TT日本チャンピオン。いまはTTとスプリントを得意とするが、もともとはクライマーだった。ここでは苦手なヒルクライムを克服するテクニックを教える。

平地からの切り替えでスイッチOFF

012 Jプロツアーで優勝するなど活躍する小野寺玲選手。ただし、ヒルクライムはクライマーほど得意ではないという。そして、今回の生徒を務めてくれたもえさん(上の写真右)は、モデルとして活動する傍ら、自転車を趣味に持つアクティブな女性。富士ヒルクライムのタイムは2時間30分以上だ。急勾配で有名なあざみラインでは脚を着くしかなかったといい、ヒルクライムはどちらかといえば苦手。

もえさんのフォームを見て、小野寺選手が気がついたポイントは、ハンドルの握り方だ。「まずハンドルの握り方が気になりました。平地であれば安全のためにブレーキレバーに手をかけて走るのは大切なんですが、勾配のキツイところ、すぐに止まってしまうような上りではブレーキレバーに手をかけていないほうが、力がいれやすく、走りやすいはずです」と小野寺選手。

平地でも上りでもフォームを変える意識がなく、同じままのフォームだと、ついついブレーキレバーに手をかけたままになってしまう。そこでハンドルを持ち直すだけで、速く楽に走れるのだ。さらに小野寺選手は付け加える。「ハンドルの持ち方はブラケットだけではありません。フラット部分も持ってみましょう。空気抵抗があまり関係ない上りでは、上体が起き上がったアップライトなポジションのほうが呼吸も楽になるので走りやすいはずです」

ハンドルの持ち方も、ブラケット部分、下ハンドル、そしてフラット部分と変えることで、パワーのONとOFFを使いわけられる。

プロテクニック フラット部分を握ってスイッチON&OFF

011 ヒルクライムではフラット部分をもつことで、アップライトなポジションになる。こうすることで呼吸が楽になり、力を入れたり抜いたりするのも楽になる。ブラケットを握るよりも、リラックスできる。さらにハンドルの握り方でも意識が変わる。親指の握り方を変えることで、力のONとOFFを使い分けよう。

親指を握り込んで、引く

010 【ON】フラット部分を持ちながらも、それなりに力を入れて踏みたいときは、親指を握り込む。ハンドルをお腹の方向へ引くことで、しっかりとペダルを踏み込むことができる。

親指を上に乗せ、押す

009 【OFF】上りでもリラックスしてペースを維持するときは、親指を上にする。ハンドルの握るのではなく、あくまでもハンドルを掌で前に押し出すイメージだ。脚を休ませることができる。

プロテクニック 上りへ移動したらブラケットを握り直そう

上りではハンドルを握り直すだけで力を入れられるようになる。ところが、平地のフォームのままでは力を出せなくなってしまう。ハンドルの握り方もそうだが、サドルの座り方もそうだ。普段平地でしか走る機会のない人はフォームを変えることを意識しよう。

上りではブラケットをしっかりと握る

008 勾配がキツい上りではブラケットをしっかりと握り、力を入れる。小野寺選手の場合、薬指を中心にハンドルを引きつけ、小指でハンドルの脇を押さえる。

上りでもブレーキレバーを握ったまま

007 【写真は△の例】急な上りで、安全な場合にはブレーキレバーに手をかけている必要はない。勾配がゆるくスピードが出ているときはブレーキをすぐにかけられるように気をつけよう。

コースのなかでON&OFFを作る上手なペースのつくり方

006 ヒルクライムを少しでも速く、楽に走るにはペースづくりが基本となる。苦手なヒルクライムを克服する究極の気分転換メソッドとは?

「もえさんの場合、心拍がすぐ上がるので、まずは最大心拍数を知っておき、レースの距離に合わせて、無理のない強度を設定することをおススメします。ただ、体調によってもペースは変わってしまうので、プロ選手でもその日のベストなペースを見つけるのは難しいんです。走りながら、その日のペースを早く見つけられるように習慣づけたいです。

ヒルクライムレースなら、ある程度落ち着いたところで、自分に近いペースの人を見つけるのが良いと思います。序盤は突っ込みすぎない余裕を持って走り、自分のペースを速く見つけることが秘訣ですね」

ちなみに事前にコースを知っておくべきか?小野寺選手に聞くと「コースを知っておくと余裕が生まれることが多いです。逆にキツさを知ってしまうとかえってダメなこともありますね」という。一筋縄にはいかないのだ。
005 初級者なら最大心拍数(一般的に220マイナス年齢で計算)の6~7割を目安に走ってみよう。そして徐々に慣れてきたら強度を上げていこう。

プロテクニック スタートはゆっくり

004
ヒルクライムのベーシングの基本は、ゴールに向けて徐々に運動強度を上げていくこと。なので、序盤は抑えめのペースから始めていく。レースならば自分より速いライダーのペースに惑わされないようにしよう。なので、走り始めてある程度落ち着いてきてから、自分に合ったペースメーカーを探すのがコツだ。

プロテクニック 苦しくなったら景色を見る

003 一点に集中するとキツく感じてしまうので、苦しくなってきたら、勾配が緩むようなところや、脚を回せるところで小野寺選手はまわりの風景を見るようにしているという。「コーナーで下に見える街並みや、逆に空をみることで、頂上に近づいて来ていることを感じてリフレッシュするようにしています」

プロテクニック ゴールに向けて、後半はペースアップ

002 最後に出し切れるようにゴールするのがベスト。ただ、実際にはオーバーペースでペースダウンしてしまったり、逆にペースが遅すぎて出し切れないこともある。レースだけでなく、日頃のトレーニングで心拍数やパワーの値を知っておくと、より適切なペーシングができる。とはいっても一般的には、ヒルクライムレースでは前半ライバルのペースに巻き込まれ、後半ペースダウンするケースが多い。

ポイント 平地でヒルクライムの練習をするならSFRを試そう

001 平地で上りの練習をするには、ハンドルのフラット部分を握り、重いギヤを踏む、SFRというトレーニング法がある。週に1回くらい、1~2分×5セット、レスト2分を目安にする。

プロのテクニックを学んで、練習に取り入れ、ヒルクライムへの苦手意識をなくしスピードアップを図りたい!

(出典:『BiCYCLE CLUB 2018年11月号 No.403[付録あり]』)
(千葉泰江)

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