FUJI・TRANSONIC 1.1 DISC【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年02月19日
スポーツバイクジャーナリスのハシケンが、今もっとも気になる最新モデルをピックアップ。
テクノロジーの詳細はもちろん、前モデルとの比較など徹底的に掘り下げて紹介。
100km走行から感じたライドフィールを明らかにする。
5年を経て最新鋭エアロダイナミクス戦闘機が誕生
自転車が日本人の生活のなかに入ってきた明治後期。そんな1 899年、日米商社を創業した岡崎久次郎がイギリスのラージブランドの輸入販売を開始したことに端を発するブランドこそフジだ。戦後はレースバイクの開発に力を注ぎ、90年代にはアメリカ資本となって世界的ブランドへと成長している。
その後のグランツールでの活躍は目覚ましく、ファン・ホセ・コーボのブエルタ・ア・エスパーニャ個人総合優勝に貢献すると、ツール・ド・フランスでも好成績を残していく。その躍進を支えたバイクこそ、2014年に誕生したエアロロードのトランソニックだ。
フジは、長年にわたりトラック競技やトライアスロン競技のバイクの開発にも積極的で、エアロダイナミクス技術を得意とする。いっぽうで、洗練されたシティバイクも数多くラインナップする総合バイクブランドとしても注目される。近年、カスタムカラーオーダーサービス「FUJI R E M IX」も展開し、その魅力をより高めている。
今月は、そんな日本になじみが深く、創業120年を超える老舗ブランドが送る2020モデル「トランソニック1・1ディスク」をインプレッションする。ディスクブレーキ専用設計として生まれ変わった新型トランソニックの実力はいかに。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
最先端のエアロダイナミクス機構を積極的に採用した新型トランソニック。
ディスクブレーキモデルを搭載したフジが誇るエアロロードのテクノロジーを見ていこう。
空力機構のトレンドを融合しつつ、魅力あふれる個性が輝く
新型トランソニックに採用されるカムテールチューブ。翼断面の後端を切り落としたチューブ形状で、空力、剛性、軽さのベストバランスを実現できる。
さらに、システムインテグレーションを実現するため、同じアメリカンブランドのオーバルコンセプトのハンドルバーとエアロステム、シートポストを採用。
フレームは電動と機械式の双方のコンポーネントに対応するが、電動式を採用することでケーブル類のフル内装化を可能にする。5年ぶりのフルモデルチェンジで、最新のエアロロードのトレンドをすべて取り込んだ新型機へと生まれ変わった。
フレームとフロントフォーク素材には独自開発のC 15高弾性カーボンを採用。フロントフォークにはモノコック工法を用いる。そして、カーボン成形を高圧縮で行うことでフレーム内部の余計なバリを排除し、軽さと強度を向上させている。フレームセット重量で1.45kgに抑えることに成功。
このほかにも、フロントフォークエンドのエアロカバーやチェーン脱落時にフレームを保護するチェーンキャッチャーを備えるなど細部の作り込みもぬかりがない。
空力性能を意識した左右非対称フロントフォーク
ケーブル類のフル内装を実現するエアロコクピット
独自開発の超軽量高弾性カーボン「C15」を採用
シェイプアップされた個性的なダウンチューブ
カムテール形状のエアロシートチューブ
トレンドにプラスアルファを加えたリア設計
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
5年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型トランソニックを、
実走派ライター・ハシケンが100km徹底インプレッション。
ソリッドな踏み感に甘えはないが、期待以上のエアロ性能を約束
かつてこれほど男前なフロントフォークに出会ったことがあっただろうか。高速巡航時やスプリント時に身体の余計なブレを抑制する圧倒的な安心感は、バイクに安定した高い操縦性を生み出してくれる。そして、路面をダイレクトに捉えてアグレッシブに突き進んでいく。
このようにフロント剛性の高さを感じやすい一方で、トランソニック初のディスクブレーキモデルは、推進力も得やすい剛性バランスに調整されていることも実感できる。
トルクをかけて加速すると、バイクの振りと呼応して路面とバイクがソリッドな響きを奏でる。そしてきわめてシームレスに時速40km前後のスピードヘライダーを導いてくれる。まるで、レールの上を抵抗なく進む列車のごとく。
タイトなコーナーやレーンチェンジにおける操縦性もエアロロードとしては平均点以上の扱いやすさを備えており、バイクに乗らされているネガティブさも抑えられている。
テストバイクにはオーバルコンセプトの前後50mmハイトのエアロホイール(カタログ重量1770g)がアッセンブルされているが、この手のディープリムとの相性もいいことを確認できた。ディスクブレーキ仕様のディープリムを生かせるフレーム剛性を見きわめることも大切なポイントだ。
フレーム機構としては抜かりなくエアロダイナミクス性能を追求しており、文句のつけようはない仕上がりだ。アメリカンブランドらしく機能を追求した洗練された生粋のレーサーだ。
ケーブル類は一部の油圧ホースを除き、ほぼ完全内装化を実現し、トレンドの先端をいくスタイルを実現している。ブレーキマウントを覆う独自のエアロカバーは、金太郎飴になりがちなエアロロードのなかでも独自性が光る。そして、それらの高いエアロ効果は高速域でのクルージング性能に直結する。
ディスクブレーキ仕様として生まれ変わった新生トランソニックは、最先端のカムテールチューブを採用し、全体的に縦剛性を引き上げるフレーム設計により、剛性レベルはいかにもプロ機材らしいソリッドな踏み感に仕上がる。
正直なところ、そこに甘えはない。エアロロード全盛の時代においても、ほかのアメリカンブランドに負けないポテンシャルを有している。
時速35km以上の高速シーンで群を抜くスピード持続性のため、平地メインのシチュエーションではかなり攻められた。下りでも重心を捉えやすく、これはこのバイクのストロングポイントといえる。
トランソニックに限らずこの手の剛性が高めのバイクは、ケイデンスを落としすぎないことが長時間にわたって快適にライドを楽しむコツ。パワフルに踏みすぎると力負けしやすいので走り方にはスマートさが必要だ。
今回のライドでも、ふだんよりもややトルクを抑えながら走り続けた。それでも、決して体感的に遅さを感じることはなく、むしろ期待以上のエアロ性能を得て走り切ることができた。そして、これら性能に対する値付けはお買い得と言わざるを得ないだろう。
INFO
フジ/トランソニック1.1 ディスク
フレームセット価格:34万円(税抜)
※フレームセット(フォーク+フレーム+ハンドルバー+ステム+シートポスト)
■フレーム材質:カーボン(C15ウルトラHMカーボン)
■ハンドルバー:オーバルコンセプト・990エアロカーボン
■ステム:オーバルコンセプト・790エアロ
■シートポスト:オーバルコンセプト・トランソニックエアロ
■サイズ:46、49、52、54、56cm
■カラー:マットカーボン/シルバー
【試乗車参考スペック】
■コンポーネント:スラム・レッド Eタップ
■ホイール:オーバルコンセプト・950
■完成車実測重量:7.64kg(52サイズ・ペダルなし)
IMPRESSION RIDER
ハシケン
問:アキボウ www.fujibikes.jp
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