サーキットブレーカーを発動したシンガポール|世界の自転車事情【 #RideSolo】
Bicycle Club編集部
- 2020年04月05日
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日本国内でも新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大するなか、編集部では【緊急特集#RideSolo】の2回めとして「ゆるやかなロックダウン」を発動したシンガポールの自転車事情お届けする。
シンガポール政府はこの政策を「サーキットブレーカー」と呼んでおり、生活必需業種をのぞく多くの民間企業のオフィスやオフィスや学校の閉鎖、その期間は4月7日から5月4日までとしている。ただし、この状況下でも、自転車はデリバリーに欠かせないインフラとしての認識があるため、小規模で修理が可能なおもな自転車屋は営業を継続するという。
シンガポールの状況はこれからの日本でも参考になる可能性がある。そこでシンガポールで医師として活動、ライダーとしてもグランフォンド世界選手権に出場経験をもつ林啓一先生が「どんな対策しているのか?」を紹介していく。(この記事4月4日時点のものです)
シンガポール政府WEBサイト
制限を強化した今のシンガポールの自転車事情
林啓一 東京大学医学部卒。小児科を専攻し、現在はシンガポールのクリニックで小児科に加えてプライマリーケアを担当。写真は所属するシンガポールのアマチュアチームAllied World – Treknology3、著者は左
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行で、グランフォンド世界選手権の予選でもあるツールドビンタンなどのレースはすべて延期、「モチベーションをどう保つか?」がサイクリストの関心事でした。シンガポールは台湾や香港なみに流行を抑えてきていましたが、徐々に海外からの持ち込みよりも国内発生が増え、3月25日から学校や職場以外での集まりは10人までになりました。
サイクリングクラブも公式なグループライドは休止、私的なライドも10人までになりました。4月1日にはエイプリルフールではなくて、モチベーションを保つために楽しむためのイベントとしてツールドシンガポールと名うって、シンガポールでサイクリストになじみのStrava区間の合計タイムを紳士淑女的に競うというイベントをCycosports社(シクロスポーツのイベント会社)が企画し、多くの競技志向ライダーが参加始めたところでした。
4月3日に「サーキットブレーカー」を発動
原稿依頼を受けた4月に入ってそれでも国内発生増加が止まらず、4月3日に首相がサーキットブレーカー(過剰電流が流れた時のブレーカー、株式市場が乱高下したときのブレーカーになぞらえて)として必須な職場をのぞき学校や職場を休止、食事も持ち帰りだけになりました。
その晩にはシンガポール自転車連盟の会長のDr Hing Siong Chenから、「健康を保つためにも自転車は推奨されるが、ソロもしくは同一世帯の家族とのペアで事故に気を付けてライドを」という発表がありました。オランダ王立自転車連合の方針とほぼ同じです。
シンガポール自転車連盟が推奨するCOVID-19対策
シンガポール自転車連盟(SCF)のフェイスブックページより
https://www.facebook.com/singaporecyclingfederation/
ここで紹介するのはここではシンガポール自転車連盟(SCF)のフェイスブックページに掲載された指針をもとに林啓一先生が注釈をつけて解説したものです。原文が最後に掲載します。
※4月5日にアップデートされました 最新の情報はこちらを確認ください↓
https://funq.jp/bicycle-club/article/578410/
サイクリストが注意すべき6つのすべきこと
1.適度な運動は良質の睡眠を伴い、免疫を保つに重要
身体的な健康だけでなく精神的な健康にも運動が薦められており、薬を処方するように運動を処方するExercise is Medicine (EIM)は米国のイニシアチブで毎年5月がEIMの月となっています。
(参照)exercise is Medicine
https://exerciseismedicine.org/
2.ソロでもしくは同一世帯の家族とペアで
具合が悪いときはライドしないのはもちろんのこと、発症前でもウイルスだしていることはあり、激しい息遣いでもウイルス排泄される可能性も分かって来ました。ペアで乗る時も1.5m離れて横で並走(シンガポールの道路交通法では合法です)するか、ドラフティングも相当な距離をあけるのが安全です。
密閉空間ではなく大気で拡散されるので実際にはドラフティングしていてもウイルスを大量に吸入することはないと考えられますが、健康第一の距離を保って欲しいと思います。
※4月11日 シンガポール政府が「サイクリストの異なる世帯単位ごとの間には、信号機であっても20mの間隔を空けることを法律で義務化した
3.鼻をかんだり、痰や唾を飛ばさない
もしあなたが友達と走るなら安全に気を付けましょう。そしてトレーニングパートナーは固定し、距離を取りましょう。スノットロケットと呼ばれる手鼻をかむのも不潔ですし、痰や唾液を飛ばすのもご法度です。どうしてもの時は停車して、テッシュペーパーなどを使って、適切に処置してください。
※4月5日のアップデートで、トレーニングパートナーは同居家族のみと変更されました
4.ハードワークアウトに注意
フルマラソン後に感冒(風邪)が増えることが有名なように高強度の運動後に免疫力が低下し感染しやすいと考えられています。ロンドンマラソン参加者の研究ではアレルギー症状があるとより感冒になりやすかったというのもありますので、今まで以上にアレルギーのコントロールもお願いします。
5.危険なライドは落ち着いてから
ジャンプやトリック、ダウンヒルを攻めたりするのは怪我のリスクが高く、逼迫している医療システムに負荷になりますし、最悪救急外来や入院で感染を貰うことにもなりかねません、パンデミックが落ち着くまでは他の安全な代替方法を考えましょう。
6.オンラインライドの推奨
シンガポール自転車連盟ではこれを機会にZwiftやRGTなどオンラインライドで新しい友達を作るのもいいのでは?と推奨しています。
原文はこちら(4/4/April)
Zwift
RGT CYCLING
自転車の活用を推進するシンガポール事情
シンガポールの前首相リークワンユーさんは昔ラレーの自転車に乗っていて、留学時代もケンブリッジで恋人(のちの夫人)とサイクリングを楽しんだようです。首相になってからも官邸で自転車に乗るだけでなく、80歳になっても室内で固定自転車を漕いでいたそうです。
そのリークワンユーさんが環境に優しく、健康や高齢化に良い自転車を広めるために、クルマやバスよりもサイクリング道の充実をと言って始まったのが、現在のPark Connector Networkです。既存の公園をつなぐ自転車道で、自動車が来ないので安全で、安心してサイクリングを楽しめます。 Round Island Route (RIR)という一周150 kmのルートは未完成ですが、日差しやヘイズという大気汚染がなければ年中楽しめます。
Land Transport Authority (LTA)というシンガポールの交通関連の行政機関は新車購入権(COE)入札システムを生かして自動車の台数を制限し、渋滞を経済メカニズムで防いでいます。路上駐車についても非常に厳しく、道路に設置された監視カメラで遠隔で罰金を食らうこともあります。ということで渋滞が少なく、路上駐車がなく、並走やフライオーバーの走行も認められているので、ロードバイクの集団走行にも適した都市です。
自転車通勤をはじめとするアクティブな通勤を促進の一環として、駐輪場、シャワー、ロッカーなどを整備するのに補助金を出したりするActive Commute Grantというシステムもあります。
Active Commute のWEBサイト
www.lta.gov.sg/content/ltagov/en/industry_innovations/development_funds/active_commute_grant.html
林啓一
編集部では“RideSolo”(ライドソロ)をお薦めします
4月5日現在、世界中で「ロックアウト(都市封鎖)していない自転車に乗れる国や地域」では、社会的距離をとるために「一人で走る“#RideSolo”(ライドソロ)」が自転車に乗る上でキーワードとなること。
今回紹介するシンガポールでも、一人もしくは同居家族なら一緒に走ることを認めていているが、これは社会的距離(SOCIAL DISTANCE)を確保することで、感染拡大を防ぐという意味がある。
この先、各国、地域ごとの事情。そして刻一刻と変化すると状況のなか、この“ライドソロ”がいつまでベターな方法かはわからない。ただ、今(4月5日現在)、感染が広がりつつあつる地域でできることは集団ではなく、一人で安全に自転車に乗ることだ。
いままでクルマ、自転車、そして歩行者の間は安全のため距離1.5mが求められてきた。そしてCOVID-19の感染拡大対策として、さらに人と人と社会的距離(SOCIAL DISTANCE)も求められる。そのキーワードが”#RideSolo”だ。
最後に、基本は健康で安全であること。住んでいる国や地域の自治体からの要請、指示に従うことが前提であることをあらかじめ付け加えさせていただきたい。編集部でもひきつづき#RideSoloをキーワードにヒントとなる情報をアップデートしていく。
※新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報は 厚生労働省 や 首相官邸、お住まいの各自治体など公的機関の情報でお確かめください。
参照
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
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