TREK・MADONE SLR 7 DISC【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年04月15日
スポーツバイクジャーナリスのハシケンが、今もっとも気になる最新モデルをピックアップ。
テクノロジーの詳細はもちろん、前モデルとの比較など徹底的に掘り下げて紹介。
100km走行から感じたライドフィールを明らかにする。
革新的機構をたずさえ、新時代を突き進むマドンの進化形
エアロ性能とトータルインテグレーションの追求は、あらゆる最新ロードバイクのキーテクノロジーだ。そのマイルストーンとして存在を示してきたマドンは、第6世代へと進化してきた。
これまで、アルベルト・コンタドール、ファビアン・カンチェラーラをはじめ伝説のライダーたちの愛機としてレーシングシーンを牽引してきたのもマドンだ。
近年は、エアロダイナミクスの開発に注力するライバルブランドも増え、サイクリストとしては魅力的な選択肢が増え続けている昨今だが、それでもマドンには熱烈なファンがおり、多くの支持を得ている。今月は、そんな最新マドンの魅力に改めてフォーカスしていきたい。
トレックのロードラインナップは、エンデュランスモデルのドマーネ、クライミングモデルのエモンダ、そしてエアロモデルのマドンを展開する。なかでも、2003年に軽量オールラウンダーとして登場したマドンには、今日まで長らくブランドの顔として君臨してきた数々の実績とメーカーとしてのプライドが詰まっている。
KVFエアロチュービングや、振動吸収システムのアイソスピード機構など、ライバルの一歩先を行く先進テクノロジーを開発してきた。そんな時代の先端を走り続けるトレックのフラッグシップを徹底解剖する。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
前作から3年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたトレックのエアロロード
「マドンSLR」はさらなる空力性能を獲得しつつ、
飛躍的に快適性も向上させることに成功している。最新型マドンに搭載されるテクノロジーに迫る。
KVFチューブとトップチューブ式アイソスピードの融合
マドンの最高峰グレードであるSLRシリーズに採用されるカーボンは、トレックが誇るカーボンテクノロジーであるOCLVの最高品番である700グレードが採用される。そして、アメリカのウィスコンシン州にある研究施設にて、高度なCFD解析とともに空力性能を追求して実現させたKVFチューブを採用する。これにより、高剛性と強度、さらに軽さも高次元で実現している。
ジオメトリーは、前作まで展開していたH1フィットとH2フィットを統合してバランスをとったH1・5フィットを新たに開発。走行性能に影響を与える各ジオメトリーは踏襲しつつ、セッティング幅を広げ、より多くのライダーが恩恵を得られるジオメトリーに生まれ変わった。
そして、快適性を追求してきたアイソスピード機構はトップチューブ式の最新型へとアップデート。空力性能を損なわず、直線と曲線を組み合わせた最新型エアロフレームと見事な融合を果たしている。
このほか、角度調整が可能な2ピースエアロハンドルの新採用。アクセサリー類とのシステムインテグレーションも実現させ、前後ライトともにスマートな取り付けを可能にしている。
セッティングの自由度を高めた2ピースハンドルバー
OCLVカーボンテクノロジーによる高品質の約束
最新型KVFチュービングにより空力性能を追求
整流効果を高めたフロントエリア
最新型アイソスピードが縦剛性をコントロール
内装固定式シートチューブ
歴代マドンに採用されるBB90を採用
タイヤクリアランスを確保し28Cに対応
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
各方面で高評価が聞かれるマドンSLR。今回、実走派ライター・ハシケンが
しっかりと100km乗り込むなかで感じたライドフィールを感じたままにレポートする。
剛と柔の二面性を持ち合わせるエアロロード
新型マドンには過去に一度だけニューモデル発表会で試乗する機会はあったが、今回はしっかり時間を確保して100kmという距離を乗り込み、エアロロード全盛の時代におけるマドンを感じてみることにした。
春を感じる陽気のなか、ペダルをひと踏み、ふた踏みする。圧倒的なフレームボリュームを感じたかと思えば、スムーズに背中から押し出されていく。そのインパクトは、けっしてドンと強く押される感覚ではない。じつにシームレスにスピードが乗り出す。
そして、シフトアップのたびに、最高グレードのOCLV700カーボンで成型されたフレームは、まるで和太鼓のようにわずかなウィップ感と乾いたトルク音を奏でながらエスカレーションしていく。
普段ならまだ慣らし運転の段階だが、トルクをかけるほどに増幅する推進力に引き込まれ、気づけばスピードは時速50kmを超えていた。高速域でも車体が不安定にならず、しっかりと路面を捉える直進安定性はピカイチだ。
そのままハイスピードをキープしたままワインディングが続くコーナーをクリアしていく。そこに広がるのは、ヘッドからフォークにかけての横剛性に支えられたソリッドな路面との接地感だ。それは、まるでカミソリのような切れ味だ。
だが、マドンの光る個性はその先にあった。コーナーをクリアするごとに、どこかゆとりを感じるライドクオリティが強まっていく。ディスクブレーキロードに多くみられる、エンド剛性が高まり走りが鋭くなった昨今のバイクとは一線を画す上質さ。マッシブなフォークに先入観を持っていると、驚かされる。
さて、ライドの途中で、新型マドンのトピックともいえる新型アイソスピード機構の振動吸収量を変更することにした。ここまではスライダーの位置はもっともヘッドチューブ寄りの設定(表示はSOFTER)で走っていた。つまり、もっとも振動吸収性が高い状態だ。
アイソスピードは基本的に縦剛性のみをコントロールする機構で、路面からの突き上げを減衰する効果を発揮する。比較的路面状態のいいふだん走っているアスファルトの上でさえ、微振動を吸収してくれている効果を感じられる。
試しに、サドルに座った状態で段差を越えるときに、片手でトップチューブ裏側のアイソスピードに触れてみた。すると、実際にアイソスピードに振動が伝わり、減衰していることがわかった。
今度は、調整式スライダーをシートチューブ寄りに設定し、硬い設定(表示はFIRMER)で走り出す。すると、そこには明確に違いがあるのがわかった。振動吸収量が減ったというよりも、スパルタンな走りの印象を強くするという方が正しいだろう。
どちらも走りのフィーリングが異なるため、使い分けたい。個人的には、路面のいいサーキットエンデューロを走るときは硬めの設定で、そのほかのロードレースやロングライドならば柔らかい方向で設定することになるだろう。こうして、シーンに応じてバイクの特性をカスタマイズできる点もマドンの魅力のひとつといえる。
ひとしきりアイソスピード機構を楽しんだのち、サドルから腰を浮かしてダンシングへ移行する。エアロロードながら左右へのバイクの振りは軽快で、推進力も得やすい。単純な平坦番長なエアロロードではない。かなりポジティブな印象を残してライドを終えた。
INFO
トレック/マドン SLR 7 DISC
完成車価格:93万9000円(税抜)
■フレーム:700シリーズOCLVカーボン
■フォーク:700シリーズOCLVカーボン
■コンポーネント:シマノ・アルテグラDI2 R8000
■ブレーキ:シマノ・アルテグラ油圧 R8020
■ハンドルバー:トレック・マドンアジャスタブルエアロVR-CF
■ホイール:ボントレガー・アイオロス プロ5
■タイヤ:ボントレガー・R3 ハードケースライト(25C)
■サイズ:50、52、54、56、58、60cm
■カラー:パープルフェーズ、ヴェイパーレッド、ブードゥートレックホワイト
■完成車実測重量:8kg(52サイズ・ペダルなし)
※今回の試乗車とは一部スペックが異なります
問:トレックジャパン www.trekbikes.com/jp
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