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世界のプロロード選手を目指す君が正気なわけがない(褒めてます)

自転車選手、とくにツール・ド・フランスなど世界のプロロード世界で走るプロ選手はどのような職場なのか? UCI(世界自転車競技連合)公式代理人の山崎健一さんが赤裸々に解説する。

※メインカット
2017年、20歳時のエガン・ベルナル。この翌年にチーム・スカイ(現チーム・イネオス)が獲得し、2019年のツール・ド・フランスで優勝することになる。PHOTO:Kenichi YAMAZAKI

プロの交渉からみた厳しい世界

2019年ツール・ド・フランスの表彰式 A.S.O./Pauline BALLET

スポーツバイクに乗る若者ならば、やはり一度は世界最高峰「ツール・ド・フランス」で活躍できる世界のプロロード選手を夢見るもの。

しかし現状、世界のプロロード世界がどのような職場なのか?目指すのがどのくらい難しいのかが分かりにくく、それを目指す若者やその親御さんにとっては少々雲をつかむ様な話。

そこで今回は、若い10代の選手達、そしてその親御さんに向けた話を中心に、目指している「世界プロロード界」の正体、そしてそこに向かう進路はどのようなものか?を紐解いていきたいと思います。

なお、始めに断っておかねばなりませんが……
UCI(世界自転車競技連合)公式代理人である私は選手契約やビジネス面を行う人間なので、あくまでも『強くて才能のある選手』がどうやってプロ契約を取るか? 視点でしか語れず、トレーナーやコーチ立場で「どうやって強くなるのか!?」は述べられません。(そこを教えろ!と期待された方々……本当にすみません……)

というわけで強引に続けますが・・世界のプロロード選手に成りたい「強くて才能のある選手」が余計な回り道をせずに目標に向かうためのちょっとした一助になれれば幸いです。

そもそも世界ロード界における“プロ“の定義って何

世界中にはプロと称するチームが多数存在しますが、実際にはどのレベルからを“プロ”と見做すべきなのでしょうか?

世界の自転車競技界を管轄するUCI(世界自転車連合)が認定する男子自転車ロードチームのカテゴリーには、上から下記の3つがあります:

「① UCIワールドチーム」(2020年度は19チーム。UCI規定上の最大選手数=570人)
「② UCIプロチーム(旧UCIプロコンチネンタル)」(2020年度は19チーム。UCI規定上の最大選手数=570人)
「③ UCIコンチネンタルチーム」(2020年度は170チーム。UCI規定上の最大選手数=2720人)

UCIのチームカテゴリー

チームカテゴリーに準じたレースにしか出場は許可されない。

しかし、世界で一般的に“職業プロ“と定義されているのは上位2つの「①UCIワールドチーム」と、「②UCIプロチーム」のみです。実際、世界最高峰のツール・ド・フランスなどに出られるのもこの上位2カテゴリーチームでなければ不可。

では、その上位2つの①②カテゴリーと「③UCIコンチネンタルチーム」との境界線は、何なのでしょうか?
上位2カテゴリーチームの場合、UCI +第三者監査法人自らが、客観的かつ厳密な審査基準(財務体制、企業体制などなどの規定をパスしなければならない)に照らし合わせてチーム登録を認可し、定期的に経営&労基監査を行うのに対し、「③UCIコンチネンタルチーム」はチーム登録国(過半数の選手の国籍に依存)の自転車競技連盟による認可しか必要としない点です。

結果として、「③UCIコンチネンタルチーム」の企業体制(予算、契約条件等)は、国によって非常にまちまちで、1000万円の予算で設立出来てしまう国もあれば、1億円近く必要な国もあります。いわゆる“ブラック“な雇用体制も国によっては残念ながら黙認されています。

つまり、企業体としてUCIなどにより世界共通の監査基準で直接モニタリングされているのは現状男子の「①UCIワールドチーム」と「②UCIプロチーム(旧UCIプロコンチネンタル)」のみとなり、自ずと選手&スタッフも一定以上の雇用体制が守られます。
よって、皆さんが想像するような欧州プロレースで、名実ともにプロ選手と云えるのは、やはり「①UCIワールドチーム」と「②UCIプロチーム(旧UCIプロコンチネンタル)」に所属する選手からとなりそうです。

世界の“プロ選手”になるのはどのぐらい難しいのか?

毎年野球の甲子園(春&夏)に出場出来る選手数は約650名で、日本最難関とされる東京大学の入学者数は毎年3,000人。そして世界トップのUCIワールドチーム(2020年度は19チーム)所属選手数は2020年7月現在543名で、毎年度新たにUCIワールドチーム選手に成れるのは世界でたった50名程度です。なおフランスにおいては約71,000人の登録ロードレース選手がいますが、UCIワールドチームに雇われているプロは50名程度に過ぎません。

よって世界のプロ選手に成るには、日本でも最難関とされる甲子園や東大受験競争の比ではないほど少ない枠を、“世界中のライバル”たちと争わなければなりません。

欧州に於いてトップスポーツの一角を占めるロードレースでは、問答無用に優秀なアスリートが積極的に自転車競技を選ぶことも多々あります。つまり、日本の現状をみて「ロードはニッチなスポーツ=プロ切符獲得競争率が比較的低いのでは?」と誤解すると痛い目に遭いますので、注意が必要です。

U23(23歳未満)時代が最も大事

レース前の駐車場で地味にウォーミングアップを行う20歳時のエガン・ベルナル。PHOTO:Kenichi YAMAZAKI

世界プロロード界には「U23の壁」と云うものが存在します。
世界のプロチームは同じ実力の選手ならば、若くて給料が安い上、キャリアの先も長く、素直に“チームの言う事を聞く”扱いやすい選手を獲得したがる傾向が非常に強く、具体的には優秀なU23(22歳未満)の選手を積極的に求めています。
既に10年ほど前からこの傾向は顕著でしたが、2019年にツールや世界選手権ロードエリートで、それぞれ22歳のエガン・ベルナル(コロンビア)や23歳のマッツ・ペデルセン(デンマーク)が優勝をしたことからも、この傾向は更に強まっていくでしょう。
さらにUCI&チーム業界は、若い選手を獲得して育成をするUCIワールドチームに対しての金銭的優遇措置を取り入れ始めているため、早い場合は18&19歳から有望な選手を囲ってしまいます。よって今後は23歳以降に初めてプロになるケースがさらに稀になるはずです。
プロ契約を取れなかった選手は当然UCIレースで走れず、UCIポイントを挙げられなくなり、加速度的にプロへの道が狭まるばかりです。この業界傾向から、全世界的に各国ナショナルチームはU23を最重要強化カテゴリーとして集中的に強化を図っています。

なぜ欧州に行かないと始まらないのか?

ロード界では上を目指すならば猫も杓子も「欧州に行かなきゃだめだ!」という声ばかり。うるせーっ!!!って思う気持ちもわからくもないですが……その理由は単純明快。欧州はレースの数が圧倒的に多く、自ずと競技レベルが高いのがその理由です。

各大陸でのUCIレース数(2019年例)

欧州:約280
アジア+オセアニア:約30
アメリカ:約25

さらにとどめの事実となりますが、フランスに於ける年間アマチュアレースの開催数は年間4000以上。ピラミッドの頂点が広いため、その裾野も当然広くなります。
普段のトレーニングよりもむしろ実戦レースで実力をつけていく傾向が強いロードレースの競技性において、このレース数の差は非常に大きな意味を持ちます。
つまり、日本やアジアだけで戦い世界のプロチーム契約を勝ち取ると云うのは、欧州で野球をやっている選手が日本のプロ野球NPBの契約を勝ち取るぐらい難しい事かも知れません。よって、日本人のみならず、アメリカ、南米、アジア全ての地域の選手は、何が何でも欧州で選手生活を送るためにあらゆる手を尽くすのです。

残念ながらプロロード選手は儲かりません

A.S.O./Pauline BALLET
2020年現在、世界で最も稼いでいるプロロード選手はペテル・サガン(スロベニア/ボーラ・ハンスグローエ)で、年収は約6億円。それに続くのは年収約5.5億円のツール・ド・フランス4勝クリス・フルーム(イギリス/チームイネオス)。
しかしこれらは例外中の例外。
正確なデータは存在しませんが、「UCIワールドチーム」選手543人中(2020年度)、年俸が1億円を超えている選手は恐らくトップの25名~35名程度で、少なく見積もって70%以上の「UCIワールドチーム」選手の給与は700~4,000万円のレンジに収まっているかと思います。
つまりU23からエリート世代になり、それなりに軌道に乗った中堅UCIワールド&プロチーム選手の平均年俸としては…贔屓目に見積もって1,500~2,000万円辺りが相場かとおもいます。

他スポーツと比較すると、これがどれだけ低いのかがわかります。

世界で最も稼いでいるスポーツ選手はテニスのロジャー・フェデラー(スイス)で、年収は1億630万ドル=約114億円(CM収入+賞金)。
サッカー最高峰クラス選手であるリオネル・メッシ&クリスティアーノ・ロナウドの年収はそれぞれ約1億500万ドル&約1億400万ドル(約111&112億円)。
さらにさらに……
日本のサッカーJ1リーグ全566人の平均年俸は3,446万円。
日本プロ野球全727選手(支配下登録選手=1&2軍)の平均年俸は4,189万円。
日本の男子競輪選手の場合、正確なデータはないものの、口コミ情報によると、男子選手約2,200人の平均年収は700~900万円程度。べらぼうに高くはないかもですが、選手寿命が非常に長いのが競輪選手という職業の素晴らしい所。
(※すべて2020年データ)

UCIワールドチームプロ選手の推定平均年俸である約1,500~2,000万円は、若者から見ると高い!と思うかもしれません。しかしロード選手の選手寿命は大体30歳前半までで、年金制度の脆弱さ、怪我のリスク、日本におけるロード選手の社会的地位の低さ(知られていない)、引退後の進路が豊富ではない等を考えると、おいしい職業とは言えません。

この状況改善には、世界の業界全体が本気で取り掛かったとしても最低10年以上はかかる大仕事なので、現在10代の選手+現役選手の立場で見た場合、自分が現役で走っている間に状況が変わるとは思わないほうが現実的です。

つまり大前提として世界のプロロード選手を目指すアスリートに何が言いたいかと云いますと……
優秀なアスリートが「お金と名誉」を求める場合、自転車ロード競技よりも遥かにおいしい競技が日本にも世界にも沢山あります。
よって、日本から世界のプロロード選手を目指すにあたっては、自転車ロードに対して「アナタじゃなきゃダメ!」、「もうどうなってもいいのっ!」と思えるぐらいの狂おしいまでの愛と情熱が必要かと思います。

世界のプロになるための具体的に必要な成績とは?

世界のプロロード選手になるには、当然ながら世界プロチームのGM(ジェネラルマネージャー)+DS(監督。各チームに複数)が求めるスペック・成績が必要です。求められるものをざっくり列挙します。

① 本場欧州のレースで戦える事を証明できる成績=「欧州での成績」

若い選手の場合、欧州各国(フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダ等)アマのトップカテゴリーでの優勝・入賞成績、そして欧州のU23やエリート混成UCIレースでの一定以上の成績(優勝、入賞、総合成績で20位以内など)が必要です。
欧州のアマチュアトップレース(仏の場合エリートナショナル)と云うのは、一般的には日本のJBCF-P1で優勝・入賞するよりも難しいレベルが多いはずです。
肝としてはチーム側に「私と契約したら即戦力で働ける」事をわからせることが必須。世界のチームもよく分からない欧州以外のレース成績履歴などは興味を示してくれませんし、そもそも買い手市場(=チーム側が圧倒的に有利)なため、選手側が買い手に合わせた履歴を揃える必要があります。

日本人選手の場合、この成績を得るためには自力で欧州に行くか(お金が掛かります)、欧州に遠征をしている日本のUCIコンチチームor日本ナショナルチームに所属して欧州遠征に連れて行ってもらう事が必要となります。

ところで少々脱線しますが……
日本のみでの選手活動で成績を挙げて欧州プロに直接辿り付く事は出来ないのでしょうか⁉
ズバリいうと現状では不可能に近いです。
まず日本を代表するロードレースシリーズ戦であり、日本のアマチュア選手がステップアップする際に必ず通るであろうJBCFの成績は、仮にJPT-P1の成績であっても世界のUCI“プロ“チームには認知されていません。

では「全日本選手権」のU23やジュニアでの優勝成績は海外プロチームからみてどうか?
全世界的にナショナルチャンピオンが評価されるのは、世界レベルの選手がゴロゴロいる国の場合のみ。よって、自転車ロード先進国ではない日本のナショナルチャンピオンジャージがそのまま”実力の証“として世界プロチームに評価される事はないと思って良いでしょう。

つまり、日本のレースは欧州に遠征する日本のUCIコンチチームorナショナルチームに選んでもらうためのきっかけにはなりますが、欧州プロチームに直結はしません。

② 成績を挙げる時期と成績の安定度も重要

世界のプロチーム関係者は、選手が成績を挙げたレースのカテゴリーをそのまま鵜呑みにせず、実際のレースクオリティをしっかりと精査します。例えば同じUCI1クラスレースであっても欧州と日本のそれとではレベルが確実に異なりますし、4月~8月ぐらいのシーズン“中”のレースのほうが、シーズンイン直後or終盤等の穴場レースの成績よりも評価されます。

そして年間を通した安定した成績も当然重要。プロチームは、チームが注文したレースに文句を言わずに多く出て成績を挙げる選手を求めます。よって上を目指す選手は一発屋ではなく、出来るだけ長く働けることをアピールすべきです。
契約したばかりの若い選手が、自分から出場するレースを選べるケースはほとんどないため、プロに拾って貰いたければまずは“走れる期間”を長くする事が重要です。

③ 言語力

最低でも英語コミュニケーション能力が必須で、具体的には最低でもTOEIC650点程度はあったほうがいいと思います(注:チームがTOEICスコア証明を求める事はありません)。英語or現地語が喋れない選手はチームにとっては扱いの面倒な人物であり、マイナス以外の何者でもありません。そして何よりも、言葉が分からないと選手自身は、現地で得られる知識・人脈の量が激減します。世界のプロになる=海外の企業で仕事をする事と同義なので、やはり言語は果てしなく磨くべきだと思います。

ここまで書いていて、大変恐縮ですが・・・まだまだ書きたいことが膨大過ぎて、あと3倍ぐらいのスペースが必要なので、この辺で強引にまとめますと・・

こんなに割の合わない競技は勧めません!だめだ、だめだ!世界のプロロードなんか目指しちゃだめだ!
儲からないし、本場欧州に行かなきゃならないのに滞在許可が取れるかどうかもわからないし、お金掛かるし、言葉を覚えなきゃいけないし・・・

それでも世界のプロロード選手になりたいという情熱が押さえられない若者は、EQADSというチームに応募してみようぜ!

EQADS2021がチームメンバーを募集中!(募集締め切り7月末)

https://www.eqads.jp/news/node/374

 

出典:フォーブス、UCI等

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PROFILE

山崎健一

BiCYCLE CLUB / UCI公認選手代理人

山崎健一

UCI公認選手代理人&エキップアサダマネージャー。日本人選手の育成に尽力し、プロ選手からの人望も厚い。バイシクルクラブ本誌では連載「フ●ッキンジャップくらいわかるよ、コノヤロウっ!」を担当。

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