Save the rim brake【革命を起こしたいと君は言う……】
Bicycle Club編集部
- 2020年07月25日
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リムブレーキを守れ
昨今のユーザーはデイスクブレーキかリムブレーキか?でお悩みの方が多い。大手のフラッグシップモデルは、ディスクブレーキ押しの一択だが、実情は異なる。私はどちらも製作しておりライダーに合わせて決定する。
傾向は、レース派はリムブレーキ、ファンライド派がディスクという結果だ。意外と思うかもしれないがレースとファンライドどちらも得意とするわれわれの工房のひとつの真実でもある。
それぞれの利点は?
ディスクブレーキ……
利点:天候に左右されない・長い下り坂はストレスが少ない。
欠点:輪行などに不向き、メンテナンスが容易ではない、セッティング出しに時間がかかる、機材を一新しなければならない、ハイコスト。
リムブレーキ……
利点:自身でのメンテナンスが容易、今までの機材が使える、ローコスト。
欠点:今後の供給が心配。
ここではあえて制動性能の比較はしていない。なぜならレースを楽しんでいる強者はディスクブレーキのアドバンテージにそれほど注目していない。
これは国内外プロロードでディスクブレーキ普及に時間がかかっている事実からも見えてくる。プロ現場で使うにはメカニック的な問題などリスクが多すぎる。
大手が一般ユーザーに売るためにプロに使わせる。今回はこれがあまりうまくいかなかったと言わざるを得ない。
そもそもリムブレーキは700Cと同じ外径のディスクブレーキだ。力学的に考えてみればどれだけ効率がいいかが明らかだ。
しかし、プロではイマイチなディスクブレーキの事情もホビーライダーにとってはたくさんのメリットがある。天候に左右されず長い下り坂でもラクだ。女性や非力なライダーにぜひ体験してほしい性能だ。メンテはショップに任せてライドを楽しめばいい。
リムの消耗もなく機材も長持ち。唯一の欠点はやはり、輪行などのトラブルだろうか。割り切ってファンライドはディスク、レーサーはリムというアナウンスもありかもと思ってしまう。
本気のリムブレーキ
われわれもディスクブレーキ車の開発に力を注いで来たが、ユーザーの悩みを聞くうちにリムブレーキの追求も怠ってはいけないと気づかされた。
そう「答え」はいつもライダーの言葉にある。しかし、見渡してみれば、本気のリムブレーキが少なくなって来た。そこで、今回発表するニュースティッキーのスペックは下記のようになった。
「1インチインテグラルヘッド&スチールフォーク」。意外かもしれないが世界初かもしれない。Dシェイプ型のチューブを採用し路面追従性は抜群だ。剛性、デザインともに、すばらしい仕事をするフォークだ。
「ダイレクトマウントブレーキ」。サイドプルブレーキの性能の追求すると、ダイレクトマウントにたどり着く。ブレーキングはむろん手で操作する。人間の手はわずかなタッチを感知する。職人の手はコンマの世界を触覚で分別し、研究結果によると1ナノメートルを感じられるそうだ。
パーツ点数の少なさはブレーキの剛性感にたどり着く非常に重要な性能だ。リアは強いチェーンステー部に付け剛性感と低重心を実現している。
「ワイヤーフル内装」。こちらもクロモリでは意外に少ない工作だ。理由は内装工作によるデメリットもあるからだ。肉厚0.5mm前後のチューブに安易に穴を開け溶接することは、われわれとしてはほんとうは避けたい工作だ。しかし、今回はチューブに3mm程度の穴を開けそこに超低温ロウ付けで補強を付けることに成功した。地味な部分だが一生懸命考えた。
十人十色のために
ディスクもリムも用途を見極めれば最高の自転車となる。スタイルを一台にしぼって追求したい気持ちは心のどこかにある。
しかし、ユーザーの悩みは十人十色。それぞれのユーザーに向けたフレームを追求するために、われわれはディスクブレーキもリムブレーキもどちらも追わなければならない。人間とともにある機材なのだから、メーカーのフラッグシップがいちばんいいなんてことはありえない。どんな自転車も追求するためにリムブレーキも守っていきたい。
Cherubim Master Builder
今野真一
東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)
革命を起こしたいと君は言う……の記事はコチラから。
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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