可哀そうなコペンハーゲン!? 2021年のツール・ド・フランスの日程変更で思わぬ余波
山崎健一
- 2020年07月30日
INDEX
UCIが2021年のプロロードレースカレンダーを7月28日に正式発表し、ツール・ド・フランスは当初の予定よりも1週間前倒しが決定。これにより当初懸念されていたツール・ド・フランス&東京五輪とのバッティングが回避されました。ところがその余波で思わぬ事態が起こるかもしれません。どんなことが起きるのか? UCI(国際自転車連合)公認代理人の山崎健一さんが解説する。
「2020東京五輪(2021年開催)」ロードレース:
7月24日(土)男子ロードレース
7月25日(日)女子ロードレース
ツール・ド・フランス2021
当初予定:
7月2日~25日(グランデパール=デンマーク・コペンハーゲン)
新予定:
6月26日~7月19日(グランデパール=フランス・ブルターニュ地方?)
これで世界最高峰のロードレース選手達はツールか五輪か?の“究極の選択“に迫られることなく、思う存分実力を発揮できることとなりました。めでたし、めでたし!
可哀そうなコペンハーゲン!?
棚ぼたブルターニュ地方
2019年2月に開催したデンマークでのグランデパールについての記者会見の様子 PHOTO:ASO/G.Demouveaux
さて、少々気になるのは・・2021年のツール・ド・フランスのスタート地点、グランデパールが無くなったコペンハーゲンはどうなっちゃうのか⁉
そしてフランス・ブルターニュ地方が2021年新グランデパールになる事による自転車界への影響でしょうか。
まずデンマーク・コペンハーゲンのフランク・イェンセン市長は「(2021年は仕方がないとしても)ツール・ド・フランスがコペンハーゲン、またはデンマークに来なくなると云う事はあり得ない。」と、翌年以降のグランデパールになり得る事を示唆。既にツール主催者のASOとは具体的な交渉を始めている様です。
そして、新グランデパールになる事が濃厚なフランス・ブルターニュ地方ですが、じつは「ツール&五輪バッティング騒動」が持ち上がった段階で、既に2024年または2025年(それぞれツール5勝のベルナール・イノー氏70歳誕生日年&5勝目から40周年)のグランデパールに向けてツール主催者ASOと交渉中でした。そんな関係であれよあれよという間に2021年のグランデパールの座獲得に向けて大きく前進した形です。フランス政府やツール主催者のASOにとっても、まだコロナ禍の影響が残るであろう2021年に於いては、様々なコントロールが効きやすい国内での開催のほうが都合がいいのかも知れません。
意外にもチーム情勢への影響も大
NTTプロサイクリングにも波及
PHOTO:NTT Pro Cycling
何気に、このグランデパール2021の変更は、チームや選手にも大きな影響を与えそうです。まず、1996年ツール・ド・フランス優勝者で、これまで数々の名チームを率いてきたデンマーク人ビャルヌ・リース氏が動いていると報道されている「NTTプロサイクリングチーム」の、南アフリカからデンマークへの本拠地移動計画。この計画の命運はデンマーク資本がチームにどの程度入るのか?が肝となっているようですが、コペンハーゲンのグランデパールがひとまずは無くなった事がそのスポンサー交渉に影響を与え、一気に計画の風向きが変わる可能性があります。ヤコブ・フルサンの合流もうわさされる「デンマーク・ドリームチーム」の命運や如何に!?
おいしいのはフランス・ブルターニュ地方
2018年ブルターニュ地方を走るツール・ド・フランスのペロトン PHOTO:ASO/Pauline BALLET
この地方にはツール・ド・フランス主催者ASOからの招待(2枠)を受けないとツールに出場が出来ないUCIプロチーム(旧UCIプロコン)の「アルケア・サムシック」&「B&B ホテルズ–ヴィタル・コンセプトp/b KTM」があります。ASOも招待チーム選抜時には、急遽ツールを受け入れてくれる事になるブルターニュ地方への顔色も窺わざるを得ないのかも知れません!?・・・
ツール以外の新レーススケジュールにも注目
このほかブエルタ・ア・エスパーニャが例年よりも1週間早い8月14日~9月5日の開催になり9月のスケジュールに余裕が生まれる事に。
結果、ヨーロッパ選手権(9月11日~12日)や、ベルギーのフランドル地方で開催される世界選手権(9月18~26日)に選手はより集中しやすくなりました。
ひとまず例年よりも1ヵ月遅れて発表されたUCIレースカレンダーにより、ようやく未来への展望が描きやすくなった世界自転車競技界。
今後のコロナ禍状況がまだ不透明なため、まだまだ予断が許されない状況ですが、一時も早く世界が元に近い姿を取り戻す日を楽しみにしています。
SHARE