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ツール・ド・フランス|落車の原因はニースの潮でのスリップ⁉ プロトンで起きたこと

8月29日に開幕した2020年のツール・ド・フランス。風光明媚なコート・ダジュールに面する同国南部のニースからスタートが切られたが、そんな美しい景観とは裏腹に、大会初日から大荒れとなった。第1ステージではレース前半からメイン集団内ではクラッシュが相次ぎ、有力選手が地面に叩きつけられる場面も数多く見られた。また、第2ステージにも緊張感が漂う局面が潜んでいた。開幕から2ステージを終え、改めて大波乱の理由と実際にプロトン内で起きていたことについて、サイクルジャーナリスト福光俊介さんが選手たちのコメントや私見も交えてお届けする。

頻発したクラッシュ 3選手が大会を離脱

PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)が勝利した第1ステージ。マイヨジョーヌに袖を通し「夢がかなった」と感激する北欧の雄の姿とは対照的に、この日のプロトンには不運が付きまとった。

波乱の始まりは、スタートから38km地点。この日の優勝候補と目されていたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、マイヨジョーヌ候補の1人と推す声も高いミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)らが巻き込まれる落車が発生する。

Le Tour 公式Twitterより

さらに、レースの進行に合わせるようにしてニース周辺は雨が強まっていく。これがプロトンの流れを狂わせ、50km地点ではパヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)やピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が、その先の下りでは今大会の活躍も期待されるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)も落車。スプリンターのカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)に至っては、クラッシュ後のレース復帰に手間取り、一時6分以上遅れる事態となっていた。

そして、衝撃的なシーンはレース後半に訪れた。集団をコントロールしていたアスタナ プロチームだったが、下りでロペスがスリッピーな路面にタイヤをとられ、コース脇の案内看板に突っ込むアクシデント。結局、このトラブルをきっかけに集団は1つのままフィニッシュを目指すムードに。

PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

それでも、スプリントフィニッシュが控えた残り3km地点で集団前方から後ろへと大規模なクラッシュが発生。大多数の選手が救済措置によりトップと同タイムフィニッシュ扱いになったが、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)はタイムアウト、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)は膝蓋骨骨折、ラファエル・バルス(スペイン、バーレーン・マクラーレン)は大腿骨の骨折で、早々と大会を去ることが決まったのだった。

落車によりタイムアウトとなったデゲンコルブ。ロットスーダルは不運にもジルベールもリアイヤとなった。 PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

“犯人”は道路に付着した潮!?

地中海に面したニース。その潮がコースをアイスリンクにしたのでは? PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)にして、「落車したかどうかにかかわらず、クラッシュに関与していた選手は8割以上いたのではないか」というトラブルまみれの1日。

これだけのクラッシュが多発した要因として、大多数の共通認識として挙げられるのは「ニースの雨」である。

雨によってウェットな路面でタイヤを滑らせるケースは多々あるが、今回は特殊な事情が最大の理由になっているようだ。ニースは1年を通して気候が安定しており、雨が降ることは1カ月に1日あるかどうか。特にこの時期はよく晴れ、乾燥した日が多い。この街にとって珍しい雨が、ツール開幕日にやってきてしてしまった。

街の人によれば、おおよそ2カ月ぶりの降雨だったという。この間、海に面した街の道路には潮が飛び、アスファルトに付着。そして、久々の雨によってその潮が浮いたことで、路面が滑りやすくなっていた、という見方が強い。

写真はキャラバン隊のクルマの隊列 PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

これについては筆者も実際に感じることがあり、取材中に何度か足を滑らせ、危うく転んでしまう場面もあった。さすがに転倒は免れたが、ほんの少しの傾斜でもずるずると滑る路面は、レースを走った選手たちが「スケートリンク」と呼ぶのも無理はない。

PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

また、ハードにクラッシュしたロペスは、「下りで油が浮いている場所があった」とレース後にコメント。潮と同様に、長い晴れの間に道路上に付着した車両のオイルが雨によって浮いてきてしまったのだろう。

プロトン内では何が

 PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

第1ステージではスタートアタックを決めた3人がしばし逃げ続けたが、100km地点を前に吸収。その後は決定的なアタックがないまま、集団でのフィニッシュを迎えることになった。

ただ、このあたりもさまざまな駆け引きがあったようだ。下りでのロペスのクラッシュ後、今大会のマイヨジョーヌ後方の1人であるプリモシュ・ログリッチ(スロバキア、ユンボ・ヴィスマ)がアスタナ プロチームの選手たちにペースを緩めるよう繰り返し伝えている場面が中継でも映し出されていたが、これに関連してアスタナの姿勢を非難する声がいくつか挙がっている。

ルーク・ロウ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)は「みんなまとまって進んでいくことで意見は一致していた。アスタナ以外はね…」と振り返り、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)は盛んに集団先頭へと出てペースを落ち着かせるよう合図を繰り返した。下りに差し掛かってからのアスタナの動きは、集団内の選手たちを困惑させ、恐怖心を抱かせるものだったというのだ。

一方で、当のアスタナ陣営は意図的にスピードアップを図ったわけではないことを強調。フライレは、「(自身が先頭へ出たのは)ペースをコントロールしたかったからだ。下りが非常に危険であることはみんなと同様に感じていたし、路面に石鹸を塗られたような感覚に陥っていた」と危険を感じていたことを打ち明ける。実情として、チームリーダーであるロペスが激しいクラッシュに見舞われていることもあり、そうした動きは決してプロトンをかく乱させようとしたものではないと弁明した。

活躍を急ぐ選手たちの心理も作用か

ケガを負ったピエールラトゥール(AG2R LAモンディアール) PHOTO:A.S.O./Alex Broadway
ここからは私見になるが、トラブルが多発した背景には、選手たちによる活躍を急ぐ心理も働いているのではないかと考える。

パンデミック下で開幕した今大会。開幕地ニースは感染拡大が続き、フランス政府が設定する危険度で「レッドゾーン」に認定されている。ニースに限らず、新型コロナウイルスの恐怖と戦いながらのレースは、「果たして3週間かけてパリへ到達できるのだろうか?」という疑問や不安を抱えながら会期を過ごすことでもある。実際、「パリまでは行けないのではないか」「途中で打ち切りになるかもしれない」といった見方はわれわれ現地プレス(取材陣)の間で存在しており、きっと選手・チーム・大会関係者の間でも同様に捉えている者は少なからずいることだろう。

そうした状況下で、「数少ない(数少なくなるかもしれない)活躍の機会を何としてもつかみ取りたい」と選手たちが意気込むことは何ら不思議ではない。第1ステージから攻める、そんな姿勢でスタートを切った選手は少なくないのではないかと見ている。

この情勢で「安全に」とはさすがに口にはできないが、少しでもハプニングを避け、不要な痛みや苦しみ、辛さ、そして悲しみといった要素を省きながら、大会が進んでいくことを祈るばかりだ。

砂利懸念の第2ステージは大きなトラブルなく終了

懸念された第2ステージ PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

実は、第2ステージにも選手・チームが危険視し、主催者A.S.O.に働きかけを行っていた区間があった。

このステージで2つ目に登場した登坂区間、1級山岳コル・ド・チュリーニは、過去にパリ~ニースでもコースに採用された上りだが、問題となっていたのは頂上通過後の下り。各所に砂利が浮き、天候にかかわらず滑りやすくなっている点を出場チームが指摘していた。

これには、プロ選手たちの団体であるプロサイクリスト協会(CPA)も同調。A.S.O.に対して清掃、またはコースの変更を要求し、それが受け入れられない場合はプロトンによる抗議行動も辞さないとしていた。

下りでの危険性については、ツール・ド・ポローニュ第1ステージでのフィニッシュでの大クラッシュ(下り基調のレイアウトだった)や、ツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第4ステージで発生した有力選手の落車などが発生して以来、選手やチーム関係者から主催者に対して慎重なコースセッティングを求める声が強く挙がっている。ドーフィネ第4ステージでは、レース序盤のコル・ド・プラン・ボワ頂上通過後の下りで砂利が至るところに広がり、今大会に出場予定だったステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が落車で肩を脱臼。ツールでの活躍が期待されるエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も巻き込まれていた。

こうしたナーバスな状勢で迎えたツールの開幕。結局コル・ド・チュリーニに関しては、A.S.O.が各方面からの求めに取り合わず、そのままレースは実行。プロトンも“通常運行”で同所を進んでいった。

ふたを開けてみれば、この区間での大きなトラブル発生はゼロ。マイヨジョーヌ候補のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)がパンクでホイール交換を行ったが、すぐに集団に復帰。つづら折りのテクニカルなダウンヒルも前日の教訓からか、はたまたこのステージの勝負には関係しないポイントだったからか、極端に攻める選手は現れず、プロトンの姿はただただ慎重に下るものだった。

第2ステージを勝利し、マイヨ・ジョーヌを手にしたジュリアン・アラフィリップ PHOTO:A.S.O./Alex Broadway

荒れに荒れた第1ステージとは逆に、好天のもと進行した第2ステージ。フランスのヒーローであるアラフィリップが勝利したことも相まって、同じニースでのステージでも非常に対照的な格好になった。ちなみに、同じニースをスタートする第3ステージは現地では雨の予報。第1ステージのような悲劇だけは繰り返したくないところである。

 

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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