BMC・TEAMMACHINE SLR 01【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年09月16日
サイクルジャーナリスト・ハシケンによる100kmインプレッション連載。
今回は、ピュアレーシングブランドBMCを長年にわたり牽引してきた「チームマシーンSLR01」の
最新モデルをインプレッション。そのテクノロジーからライドフィールまでを徹底的に明らかにする。
栄光に彩られたSLRが、節目の年に次なるステージへ進化
スイスに本拠地を置くBMCは、サイクルロードレース界で数々のビッグタイトルを獲得してきた。なかでも2011年のツール・ド・フランスでのカデル・エヴァンスによるマイヨ・ジョーヌ獲得は、当時BMCレーシングチームの悲願であり、名実ともに世界屈指のブランドへと上り詰めた。
翌年には、フィリップ・ジルベールによるアルカンシェル獲得。さらに、グレッグ・ファンアーフェルマートによるリオ五輪(2016年)の金メダル、パリ〜ルーベ(2017年)の勝利。そのすべての功績がチームマシーンSLRによって成し遂げられてきた。
この名機が誕生から10年の節目を迎える今夏、第4世代へとフルモデルチェンジ。先代のDNAを継承しつつ、最新のエアロダイナミクス性能を融合した新たなテクノロジー「ACE+(エースプラス)」による、前作から3年ぶりの刷新になる。
今シーズン、現全日本ロードチャンピオンの入部正太朗選手が所属するワールドツアーチーム「NTTプロ・サイクリング」の主戦機として注目される旗艦モデル「チームマシーンSLR01」。2021モデル注目の万能型モデルをテクノロジーからライドフィールまで徹底的に紹介していく。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
第4世代のチームマシーンSLR01はどのような進化を遂げているのか。
コアテクノロジーとなる「TCCレース」や「エースプラス」テクノロジー、
さらには進化した2タイプの専用コクピット「ICS」の全貌を明かにする
エースプラステクノロジーにより磨かれた4つの要
独自の高度なコンピューターシミュレーションによりフレームの理想数値を導くBMCのエーステクノロジー。剛性、重量、快適性の3要素に加え、第4世代では空力性能を加えた「エースプラス」テクノロジーにてリファインされた。フレーム重量820g、フォーク重量345gに仕上がっている。
そして、BMCのロードモデルに採用されるTCC(チューンドコンプライアンスコンセプト)と呼ばれるコアテクノロジーを搭載し、剛性や軽さという要素だけではない垂直方向の快適性(コンプライアンス)を強く意識したフレームを実現。チームマシーンSLRには、過酷な環境下でもレーサーがパフォーマンスを最大限発揮できる「TCCレース」テクノロジーが採用される。
新型チームマシーンSLR01では空力性能を追求するため、各チューブ形状を細部まで再設計し、D字型断面を多く採用。さらに、コクピットのインテグレーションを実現するICS(インテグレーテッドコクピットシステム)をアップデート。新たに、ステム一体型「ICSカーボンコクピット」と汎用性にすぐれる「ICS2」の2タイプを開発した。
エアロダイナミクス性能を融合するACE+テクノロジー
カムテールチューブ採用で空力を高めたフロントセクション
新型コクピットへアップデート ICS & ICS2スタイルが誕生
ステム一体型のICSカーボンコクピット
高い整流効果を実現するエアロコアボトルケージシステム
快適性を向上させるドロップドシートステー
D字型断面エアロシートポストと内蔵シートクランプ
プレスフィットタイプのPF86規格BB採用
ハンガーの再強化とステルスドロップアウトエンドの採用
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
3年ぶりのフルモデルチェンジを果たした第4世代のチームマシーンSLR01。
数値だけで判断できないリアルなライドパフォーマンスを、
100kmインプレッションによって引き出していく
節目のフルモデルチェンジは地味なのか……実走して明確になった熟成された反応性
春先から各メーカーの2021モデルが発表されているが、今年はブランドのなかの主力モデルが続々とフルモデルチェンジを果たしている。チームマシーンも登場から10年めの節目を迎え、待望のフルモデルチェンジだ。
メーカーからのホワイトペーパーには、平坦路で前作より3%の出力削減、フレームセット重量はマイナス160gと記されている。しかし、メモリアルイヤーのフルモデルチェンジにしては、やや地味ではなかろうか……。
ところが、そんな思いは焼けるような真夏のアスファルトへと走り出した瞬間に消え失せていった。ペダルにパワーをかけていくとトラクションのかかりが鋭く、リアのドロップドシートステーが小気味よく働き出す。近年、空力性能の優位性からもドロップド・シートステーは各社のトレンドであるが、BMCは10年前の初代S L R01からこの形状を特徴としてきた。
一日の長というべきか、熟成された反応性は粗削り感がなくペダリングを加速させていきたくなる気持ちよさだ。一回転ごとパワーが途切れずシームレスにトルクがかかり続けるイメージだ。
そのままスピード域を高めながらダンシングへ移行すると、左右へのテンポのいいバイクの振りを引き出してくれる。さらに、スプリントなどアグレッシブにバイクを走らせるほど、路面追従性が高まりバイクとの一体感を得やすくなる。SLR01のコアテクノロジーである垂直方向の柔軟性(バーティカルコンプライアンス)は、各シチュエーションでフレームにかかる応力の最適化に寄与する。それが距離100km、時間にして4時間走り続けても序盤と同じフィーリングでいられる恩恵なのだろう。じつは、この翌日も前日の疲れを知らず、快調にロングライドへと出かけたのだった。
さて、実力派メーカーの2021モデルは、ディスクブレーキモデルへ移行してから3〜4年周期の開発タームを終えて大きく進化したモデルが多い。チームマシーンも間違いなくそのひとつで、改めて性能をリファインしたことで、ピュアレーサーに欠かすことのできないリニアなレスポンスを手に入れていることを実感。
どのメーカーとは言わないが、従来の万能型モデルにディスクブレーキと空力性能を融合したことで本来もっていた鋭い反応性に陰りが出てしまったモデルもあるが、SLR01は今回のフルモデルチェンジで数値には表れない走行フィーリングに磨きをかけてきたと言える。ほかのメーカーよりも一歩先をゆく万能型ディスクロードの熟成を感じることができた。
最後に、トップグレードのSLR01には、完成車で4モデルがラインナップされるが、ステム一体型ハンドル「ICSカーボンコクピット」は完成車で140万円(税抜)のSLR01ワンモデルとフレームセットで58万円(税抜)のSLR01モッドのみに付属する。のみに付属する。
ほかのモデルはハンドルの選択肢が広がる「ICS2」ステム仕様だ。個人的には85万円(税抜)でパッケージされた今回のテストモデルの仕様が、性能に妥協せずにコストを考慮したベストバイモデルと考える。
INFO
ビーエムシー/チームマシーンSLR 01
価格:86万円(シマノ・アルテグラDI2、ICS2完成車/税抜)
■フレーム:チームマシーンSLR01プレミアムカーボン
■フォーク:チームマシーンSLR01プレミアムカーボン
■シートポスト:チームマシーンSLR01プレミアムカーボン
■ハンドル:BMC・RAB02
■ステム:BMC・ICS2
■コンポーネント:シマノ・アルテグラDI2
■サドル:フィジーク・アンタレス ヴェロス エボR5
■ホイール:CRD-351 SL
■タイヤ:ヴィットリア・コルサ(25mm)
■カラー:パールブルー&カーボン
■試乗車実測重量:7.5kg(サイズ51・ペダルなし)
問:フタバ商店 http://e-ftb.co.jp/
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