プロのスタートラインに立った若き獅子 西本健三郎【El PROTAGONISTA】
管洋介
- 2021年03月24日
1年生からインターハイロードに選出された留目の活躍を横目に、西本は身体が持つ限り力を出し切る練習メニューに没頭した。
「1年生の冬の大会では最後のスプリントで留目に勝ちました。彼が僕を見る目がその日から変わりました。差を付けようとウェイトをする彼に、負けるものかという気持ちに拍車がかかって……」
同じ夢に向かう二人は部活を超えて実力を高め合うライバルとなった。高校2年の全日本選手権男子ジュニアでは留目が4位、西本は6位。両者のせめぎ合いは日本最高峰のレースまで上り詰めていた。そして舞台はヨーロッパへ。
「夏休みにIRCのヨーロッパ遠征のプログラムに応募しました。現地に向かうとそこでも彼と会うことに……(笑)」
橋川監督指導のもと挑戦したベルギーのレースでは、初戦から度肝を抜かれた。
「アタックが絶え間なくかかるプロトン。日本なら10人程度に絞られる展開でも集団の9割が残っている層の厚さに圧倒されました」
序盤の逃げになんとしてでも乗ろうと意気込んだ第3戦では、初めて8人のエスケープに乗った。そして隣を見れば留目の姿が……。
「この逃げには連勝中のベルギー人が乗っていました。このとき自分は落車をきっかけに吸収されてしまいました。でも勝負は目の前にあった。そして、目指すべき場所も……」
少年時代に憧れた本場のレース。たった2週間の遠征だったが、帰路の飛行機のなかでも、思い出すたびに脚に力が入っていた。
帰国後に参加したナショナル強化指定の合宿、力の限りアタックを繰り返す姿はエカーズの浅田顕監督の目に留まった。ヨーロッパに挑戦してみないか?
「人生で自転車ほど好きになったモノはない。これから始まるJプロツアー参戦、ヨーロッパ遠征。レースを動かす存在になりたい」
ロードレースに人生を賭ける決意をした18歳は今、プロレーサーとしてのスタートラインに立った。
REPORTER
管洋介
海外レースで戦績を積み、現在はJエリートツアーチーム、アヴェントゥーラサイクリングを主宰する、プロライダー&フォトグラファー。本誌インプレライダーとしても活躍
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