見えないものを見えるように【革命を起こしたいと君は言う……】
Bicycle Club編集部
- 2021年05月01日
日本人の弱点
物事には必ず違う側面が隠れている。「ズイフトで日本人が強い」ということは、同時に日本人が世界のロードレースで戦えない理由を表しているように感じる。それは欧米選手との圧倒的なテクニックの差だ。
マラソンや陸上にスケート、自転車でもトラック競技などでは、日本人は世界と対等に戦っている。しかし「ロードレース」ではなかなか苦戦を強いられている。
もちろん肺活量や体力の差もまだまだあるかもしれないが、テクニックの差があることは否めない。今中大介がいち早く世界で戦えたのは、当時の彼の日本人離れした圧倒的なテクニックだと私は思っている。
総じて日本人は乗り物を扱う競技が苦手だと感じる。カーレースやオートバイレースでもごくたまにしかトップに手が届かない。
記憶にあるのは、佐藤琢磨だ。インディー500で快挙を成し遂げた佐藤琢磨だが、自転車競技でも高校総体で優勝している。類まれな乗り物を扱うセンス、それが宿っているからだろう。
見えないものを見える化
人の情報の9割は視覚情報だと言われている。残りが聴く、臭ぐ、触れる、味わう、などを合わせて1割程度だという。
人にとって「見えないもの」というのは非常に扱いにくい。しかし人類はなんらかの方法で「見えないもの」つまり電気や電波、空力や力などを見えるようにする努力をして文明を築き上げてきた。実際には見えないので、比較したりメーターや時計などを使い、見える化している。
自転車乗りの「スピード感」や「勝つ能力」もそれに当たるだろう。ペダルをこぐ人間のポテンシャルも、数値化がとりわけやっかいな部類といえる。
学力でいう偏差値などは、人それぞれの力量や頭脳を見えるように数字に変換しているものだ。しかし、実際の社会に出てみれば偏差値と幸福度や収入などが、けっして比例しないのは、よく見る光景だ。
同じくFTPがいちばんになっても競争で勝てるわけではない。人生も自転車競技もそれこそがおもしろいところだといえるだろう。
勘違いしないでほしいのは、スマートトレーナーやバーチャルレースが悪いと言っているのではない。ユーザーやスタッフたちのトレーニングやポジション出しなどにとても有効で、これから使用頻度も高まるだろう。
また今までのポジション出しは勾配が反映されていなかった。ワフーの上位モデルは、勾配が反映されるので、今後のオーダーの精度も上がるはずだ。このように今後の充実した自転車ライフには欠かせない道具となるだろう。
今回は「ズイフトでは負けたけど、街道を走ったら絶対負けないぞ!」という、私の自転車乗りとしてのくやしい気持ちを整理してみた話。聞き流していただければ幸いだ。
Cherubim Master Builder
今野真一
東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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