異例の砂埃舞うコースで21歳シュミットがプロ初勝利、ベルナルが差を拡大|ジロ・デ・イタリア
Bicycle Club編集部
- 2021年05月20日
ジロ・デ・イタリアの第11ステージが現地5月19日に行われ、序盤からの逃げメンバーによるステージ優勝争いをマウロ・シュミット(チーム クベカ・アソス、スイス)が制した。シュミットにとってはこれがプロ初勝利。このステージは未舗装路も含む難コースで、個人総合争いも変動。エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)が攻撃を成功させて、総合順位でのリードを拡大している。
ベルナルが再三の攻撃でライバルとの差を広げる
大会は1回目の休息日を経て、この日から2週目に入った。第11ステージはペルージャからモンタルチーノまでの162kmで、そのうち35.2kmがグラベル(未舗装)区間。加えて、急勾配を含むアップダウンがグラベル区間では連続。最終盤にも3級山岳の上りが控えているなど、週の初日から難易度の高いステージがセッティングされた。
レースに先立ち、休息日に行われたPCR検査は選手・関係者ともすべて陰性。感染が疑われる事例はなく、問題なくスタートを迎えている。なお、第2ステージで勝っているティム・メルリール(アルペシン・フェニックス、ベルギー)が胃腸炎のため出走を取りやめ。171選手がペルージャを出発している。
リアルスタートともに飛び出した選手を1人、また1人と追っていき、11人の逃げグループが形成される。早々にメイン集団をイネオス・グレナディアーズがコントロールする格好となり、逃げる選手たちを完全に容認。フィニッシュまで70kmになろうかという時点で、その差は約14分30秒にまで広がった。
その形成のまま、注目のグラベル区間へ。9.1kmの第1セクターを前に、メイン集団は各チームが隊列をなして前方に集まってくる。イネオス・グレナディアーズ、ドゥクーニンク・クイックステップ、EFエデュケーション・NIPPOが前を固めてグラベルへと飛び込んだ。
勢いが上がる集団は、ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード、イタリア)がペースアップを図る。あちこちで中切れが発生すると、今度はフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)がベルナルを引き連れて猛然と集団を引っ張る。すると、個人総合2位でスタートしたレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)、同3位アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)、同6位ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)らが後方に取り残される。この状況を見てイネオス勢が集団牽引を続けたが、後方グループも人数を増やして追撃態勢が整ったことで、第2セクターまでの舗装路でかろうじて集団復帰を果たしている。
急坂や3級山岳の上りを含んだ13.5kmの第2セクターでは、ジョージ・ベネット(チーム ユンボ・ヴィスマ、ニュージーランド)とトビアス・フォス(チーム ユンボ・ヴィスマ、ノルウェー)が集団から飛び出す。この動きを見送ったメイン集団だったが、個人総合10位のダヴィデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ、イタリア)が遅れているのを見て、イネオス勢が再びペースを上げると、その後の舗装路の下りでベネットとフォスをキャッチ。そのまま第3セクターを迎えた。
7.6kmの第3セクターでマリアローザ争いが大きく揺らいだ。第1セクターから苦戦気味だったエヴェネプールが集団の最後尾まで下がると、イネオス勢が再度のペースアップ。アシストが周りにいないと見るやベルナル自ら集団先頭に立って、優位な状況を作り出す。完全に遅れたエヴェネプールは、アシストのジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル)の引きで集団復帰を目指すが、上りではアルメイダのペースにも合わせられず、前とはどんどん差が広がっていった。
総合上位陣が争うはるか前方では、逃げメンバーがステージ優勝をかけて争った。第2セクター以降、断続的に人数の絞り込みを狙った動きで見られ、残り10kmとなったところでシュミット、ドリース・デボント(アルペシン・フェニックス、ベルギー)、アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチームエミレーツ、イタリア)が抜け出すことに成功。ほどなくデボントが遅れ、シュミットとコーヴィによる一騎打ちの様相へ。
両者はそのまま最終局面へ。シュミットが前に出て最終コーナーへ。これを抜けるとフィニッシュまで200m。これを合図にコーヴィが後ろから加速するが、シュミットがうまく合わせて先頭を譲らない。最後まで踏み続けたシュミットがプロ初勝利となるステージ優勝を決めた。
シュミットは今シーズン現チーム入りを果たしたばかりの21歳。プロデビュー以降、ここまで上位進出の経験はなく、今大会も第10ステージまで個人総合124位。しかし、このステージで勝負強さを見せて大躍進となる金星を挙げた。
完全に別のレースを繰り広げているメイン集団は、5kmの第4セクターに入ると個人総合上位陣が先頭交代をしながら遅れたライバルとの差を広げにかかる。続く3級山岳の上りでエマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)がアタック。これは見送られるが、頂上目前でのウラソフの仕掛けに反応できたのはベルナルただ1人。他選手が対応できていないのを見て今度はベルナルがアタック。ウラソフを置き去りにし、そのままブッフマンにも追いつく。
総合リード拡大のチャンスが高まるベルナルと、個人総合15位からのジャンプアップを狙うブッフマンは利害が一致。両者はフィニッシュまでの残り距離を協調する選択。上り基調の最終ストレートでブッフマンが失速気味になったものの、ベルナルともども狙い通りの走りでフィニッシュに到達。そこから23秒差でウラソフがステージを終えている。
結果的に、逃げていた選手たちがステージ10位までを占め、個人総合上位陣はその後続々とフィニッシュラインを通過。消耗戦を制したベルナルはマリアローザを守ったばかりか、ライバルとのリードを拡大にも成功。2位に浮上したウラソフとは45秒差、同様に3位浮上のダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)とは1分12秒差。カルーゾ以下は数秒単位の差でひしめいており、上位戦線はなおも混沌としている。
そして、この日大苦戦したエヴェネプールはベルナルから2分以上遅れてフィニッシュ。個人総合では2分22秒差の7位にランクダウン。4位でスタートしたジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)も4つ順位を落としている。
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は、18分59秒差の65位でステージを完了している。
20日に行われる第12ステージは、シエナからバーニョ・ディ・ロマーニャまでの212km。レース半ばから丘陵地帯へと入っていき、2級と3級のカテゴリー山岳を4つ越える。いずれも難易度はそれほど高くはなく、逃げメンバーによるステージ優勝争いが予想される。
ステージ優勝 マウロ・シュミット コメント
「当初は予定に入っていなかったグランツール出場だけど、チームが私の力を信じてくれていた。メンバー入りが決まってからは、マウンテンバイクとシクロクロスでの経験を生かせるであろうこのステージをターゲットにしていた。個人的にはトラック競技にも注力していて、東京2020五輪チームパシュートのスイス代表入りも決まっている。
思っていた以上に逃げに入るのが簡単で、集団とのタイム差も驚くほど広がった。終盤はみんなが苦しんでいるようだった。最後のスプリントに向けては無理にペースを上げることはせず、スポーツディレクターの指示通り前で最終コーナーを抜けることだけを心掛けた。勝利を確信したのは残り50m。本当に信じられない」
個人総合首位 エガン・ベルナル コメント
「グラベルロードを楽しんだ。クラッシュを回避するため集団前方をキープしたが、それもリスクがあることを意味する。ポジションを確保するには強力なチームであることが重要だ。朝のミーティング通りレースを進めることができ、(総合争いに)重要なタイムを稼ぐことができた。ただ、残りの10ステージがどれほど難しいかはみんな理解をしている。地に足をつけて、他選手をリスペクトしなければならない。背部の問題でジロ前のトレーニングプログラムを変更しなければならなかったことを思うと、ここまでは想像以上に走ることができている」
ジロ・デ・イタリア2021 第11ステージ 結果
ステージ結果
1 マウロ・シュミット(チーム クベカ・アソス、スイス)4:01’55”
2 アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチームエミレーツ、イタリア)+0’01”
3 ハーム・ファンフック(ロット・スーダル、ベルギー)+0’26”
4 ドリース・デボント(アルペシン・フェニックス、ベルギー)+0’41”
5 シモン・グリエルミ(グルパマ・エフデジ、フランス)ST
6 エンリーコ・バッタリーン(バルディアーニCSFファイザネ、イタリア)+0’44”
7 ロジャー・クルーゲ(ロット・スーダル、ドイツ)+1’23”
8 フランチェスコ・ガヴァッツィ(エオーロ・コメタ、イタリア)+1’37”
9 タコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、オランダ)+1’43”
10 ローレンス・ナーセン(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、ベルギー)+1’59”
65 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+18’59”
マリアローザ(個人総合成績)
1 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア) 42:35’21”
2 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+0’45”
3 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+1’12”
4 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)+1’17”
5 サイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ、イギリス)+1’22”
6 エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+1’50”
7 レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)+2’22”
8 ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)+2’24”
9 トビアス・フォス(チーム ユンボ・ヴィスマ、ノルウェー)+2’49”
10 ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+3’15”
85 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+1:16’42”
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)
マリアアッズーラ(山岳賞)
ジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
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