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ポートが大会初制覇、ステージは驚異的クライミングのパデュンが制す|クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ

フランス南東部を舞台に8日間の会期で開催されてきたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネが、現地66日に閉幕。最終・第8ステージを終えて、リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)が前日からの個人総合首位を守り、この大会初制覇を果たした。ステージは前日も勝ったマーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス、ウクライナ)が連日の快走。2日連続で勝利するとともに、山岳賞を獲得した。

単騎のピンチを乗り切りマイヨジョーヌ守ったポート

ツール・ド・フランス前哨戦として連日好勝負が展開されてきた大会は、この日で締めくくり。147kmに設定された大会最終日も、6つのカテゴリー山岳を上る難コースが設定された。特に中盤に通過する1級山岳コロンビエール峠(11.7km5.8%)、終盤に上る超級山岳コル・ド・ジュ・プラーヌ(11.6km8.5%)が重要なポイント。ただ、例年の傾向としてドーフィネ最終日は慌ただしいレースになっており、どこで勝負が動いても不思議ではない。ステージ優勝争いとともに、マイヨジョーヌの行方も最後まで分からない。

そんな緊張の1日は、大人数の逃げで幕を開けた。しばらくは大きなリードが得られず、逃げメンバーも入れ替わったが、やがて18人で落ち着く。この間、カテゴリー山岳の頂上をパデュンがたびたびトップ通過を果たして、山岳賞争いでトップに立つ。これで、フィニッシュまで到達すれば賞争いでの逆転が確定する状況を整えた。

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

この逃げに総合タイム差251秒で20位につけるパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)が入ったことで、メイン集団も大きなリードは許さず、広がっても3分程度でその差を推移。この流れのままレースはコル・ド・ジュ・プラーヌの上りへ。いよいよ大きな局面を迎えることとなった。

逃げでは、この上りの入口でパデュンがアタック。すかさず数人がチェックに動いたが、あまりのペースの速さに誰もついていけない。独走態勢に持ち込むと、230秒だったメイン集団とのタイム差を徐々に広げていく。メイン集団ではリーダーチームのイネオス・グレナディアーズのコントロールのもと、総合成績を重視した展開に。ベン・ヘルマンス(イスラエル・スタートアップネイション、ベルギー)やナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック、コロンビア)、さらにはステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィスマ、オランダ)がアタックするが、どれも流れを変化させるまでには至らず集団へと引き戻されている。

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

残り18kmでは個人総合6位につけるミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)がアタック。これが失敗に終わると代わってジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)がカウンターで攻撃。逃げから脱落した選手たちを巻き込んで集団からのリードを企てるが、頂上通過直後に集団が合流。イネオス・グレナディアーズはテイオ・ゲイガンハート(イギリス)が上りを長く引っ張り、頂上手前でゲラント・トーマス(イギリス)にバトンタッチ。再三のライバルのアタックにも冷静に対処した。

続く約9kmのダウンヒルでは、総合タイム差17秒で2位につけるアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)がチームメートのヨン・イサギレ(スペイン)とともに攻めの走り。これをトーマスがチェックするが、セーフティーを選択するポートとの差がわずかに開く。これを見たルツェンコらはスピードアップを図るが、直後にトーマスがコーナーで落車。ポート自ら対処が必要な状況が生まれ、急いでルツェンコらのポジションへと合流する。

下り終えると、単騎になっているポートに対して個人総合上位陣が次々とアタック。残り5kmを切ったタイミングでのイサギレのアタックをきっかけに、ヘイグやベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)などが動くが、すべてポート自ら対処。やがて牽制状態になり、この間にトーマスが集団復帰。すぐにコントロールに回って、集団内の駆け引きを完全にまとめる方向へと持ち込んだ。

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

マイヨジョーヌをかけた争いが激化する一方で、先頭を駆けたパデュンは快調そのもの。後ろとの差を十分なものとして、コル・ド・ジュ・プラーヌからの下りやその後の上り基調も問題なくクリア。残り1kmを切って勝利を確信すると、何度もガッツポーズ。最後の数百メートルはウイニングライドとばかりに、大きく手を振りながらフィニッシュへ。大会終盤の2ステージを連続で制する離れ業を演じてみせた。これで、ステージ2連勝と合わせて山岳賞を確定。一躍今大会のヒーローにのし上がった。

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

パデュンから136秒後に、追走を続けていたヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)とコンラッドがフィニッシュ。最終局面を前にメイン集団から抜け出したオコーナーがその21秒後に続き、少し置いて集団が到達。個人総合上位陣はすべてこの中に含まれており、ポートの大会制覇が確定した。

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

ポートは過去に2度、この大会の個人総合2位を経験しているが、優勝は初めて。出場を予定しているツールに向けて最高の仕上げとなった。2位にはルツェンコ、3位にはトーマスと続いて総合表彰台に上がっている。

このほか各賞では、ポイント賞がソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)、山岳賞がパデュン、ヤングライダー賞には個人総合で9位に入ったダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)が獲得。チーム総合ではイネオス・グレナディアーズが1位になった。

日本勢でただひとり参戦していた中根英登(EFエデュケーション・NIPPO)は、リアルスタート直後の逃げに加わり、チームメートをフォロー。それからは後方へと下がってレースから離脱。8日間の戦いを終えている。

ステージ優勝、山岳賞 マーク・パデュン コメント

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

「まるで夢のよう。本当に信じられない。昨日の勝利ですら信じられないのに…。

昨日のレース後はストレスとアドレナリンとが入り混じった状態だった。それでも、昨日のことは忘れて今日のレースに集中しようと心掛けた。プランは逃げに入ることで、最後の上りではジャック(ヘイグ)を助けようと思っていた。ただ、チームカーから山岳賞を狙えると言われたので、トライすることにした。最後の上りで後ろとは2分の差があると知った時には、すべてが楽になった。

高地トレーニングでの失敗があり体重を落としきれなかったりと苦労はあったが、今大会で脚の良さを実感できた」

個人総合優勝 リッチー・ポート コメント

©︎ A.S.O./ Fabien Boukla

「過去に2度個人総合2位を経験していて、最後の1km2位の座を奪われてしまった年もあった。ついにこの大会を制することができ本当にうれしい。妻や2人の子供と離れて犠牲を払った日々が報われた。

コル・ド・ジュ・プラーヌからの下りはよく知っていた。何度も経験しているので、下り方は理解していた。G(トーマス)がクラッシュして、最後の6kmは理想的ではなかったが、彼が集団復帰したことで助けられた。擦過傷がひどいようだが、彼はツール本番ではトップに立てるはずだ。

ツールについては幻想を抱くつもりはない。とにかくこのレースで勝つことは大きな意味があり、大好きな大会を36歳で優勝できたことが何よりうれしい」

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2021 第8ステージ 結果

ステージ結果

1 マーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス、ウクライナ)4:06’49”
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+1’36”
3 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)ST
4 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+1’57”
5 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+2’10”
6 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)ST
7 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)ST
8 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)ST
9 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)ST
10 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)ST
DNF 中根英登(EFエデュケーション・NIPPO、日本)

個人総合成績

1 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ、オーストラリア)29:37’05”
2 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+0’17”
3 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+0’29”
4 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+0’33”
5 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+0’34”
6 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、スペイン)+0’38”
7 ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック、スペイン)ST
8 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+0’47”
9 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+1’12”
10 テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+1’57”

ポイント賞

ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)

山岳賞

マーク・パデュン(バーレーン・ヴィクトリアス、ウクライナ)

ヤングライダー賞

ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)

チーム総合成績

イネオス・グレナディアーズ

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