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最大13人の逃げから抜け出しポリッツ勝利、総合上位は変わらず|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランスの第12ステージが現地78日に行われ、最大で13人で編成された先頭グループから終盤に独走へと持ち込んだニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)が初のステージ優勝。この日チームメートのペテル・サガン(スロバキア)が出走を回避したが、その穴を埋める快走を披露した。個人総合上位陣はすべてメイン集団で走り切り、順位には変動なし。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が引き続きマイヨジョーヌを着用する。

ポリッツは再三のアタックで勝利を手繰り寄せる

前日、名峰モン・ヴァントゥを2回上った選手たち。本格山岳ステージを乗り切って、ここから2日間は「恵み」の平坦ステージだ。

サン=ポール=トロワ=シャトーからニームまでの159.4kmは、上下の大きな変化こそないものの、アルデッシュ渓谷を抜けるルートとあってコーナーが多数。特に朝から強い風が吹きつけ、レースの流れに影響を与えるものと見られた。

その見立て通り、リアルスタート直後からスピードが上がって集団があっという間に分断されていく。早々に20人ほどが遅れると、8km地点では集団が4つに割れて各所でエシェロンが形成されるなど、風を利用した駆け引きが相次ぐ。

この流れから、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)を中心としたパックが形成され、そのままペースを上げていく。さらに数人が合流すると、最大で13人の先頭グループに膨らむ。これを受けて、メイン集団はイージーで進むことを選択。総合成績で上位浮上の可能性がある選手がいないこともあり、タイム差の拡大を容認する構え。タイム差はあっという間に10分を超えた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

こうなると、先頭グループの中からステージ優勝者が出るのは濃厚。タイム差を13分近くして残り50kmを切ると、ポリッツが一番にアタック。これで均衡が破られるとともにペースが上がり、やがてポリッツに同調できたのはイマノル・エルビティ(モビスター チーム、スペイン)、シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、スイス)、ハリー・スウェニー(ロット・スーダル、オーストラリア)だけに。アラフィリップらに25秒差をつけて132.7km地点の中間スプリントポイントに達すると、ポリッツが先頭で通過した。

先頭の4人は着実にリードを広げて残り距離を減らしていく。残り14kmでは、スウェニーのアタックでキュングがまず遅れると、3人となった中から残り12kmでポリッツが再びのアタック。スウェニーとエルビティのマークを巧く切ってスピードアップを図ると、そのまま独走態勢に持ち込んだ。

© BORA – hansgrohe / Bettiniphoto

後続に迫られることなく1人で突き進んだポリッツ。残り2kmで後ろを振り返って追っ手がいないことを確認すると、勝利を確信してガッツポーズ。ニームの街に入って大歓声を受けると、両手でハートを作ってのウイニングセレブレーション。ツール初勝利を決めた。

27歳のポリッツは、過去5年のプロ生活では北のクラシックを中心に活躍。2019年にはパリ~ルーベで2位に。ステージレースでは逃げやスプリントトレインの牽引役としてもチームに貢献。また、この日はチームのエースであるサガンが負傷の影響で大会を離脱。新たな目標設定が求められた中で、ポリッツが結果につなげてみせた。

© BORA – hansgrohe / Bettiniphoto

後続は、2位争いのマッチスプリントをエルビティが制し、スウェニーは3位。逃げていた選手が13位までを占めた。

リーダーチームのUAEチームエミレーツや、個人総合3位につけるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)擁するチーム ユンボ・ヴィスマが主にコントロールを担ったメイン集団。変化らしい変化はないまま走行し、ポリッツから1553秒差でフィニッシュラインを通過。最後はスプリンターが前方に上がり、マイヨヴェールのマーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)が集団先頭となるステージ14位で2ポイントを加算させた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

個人総合上位陣はすべてメイン集団で走り切ったことにより、トップ10には変動なし。ポガチャルはマイヨジョーヌを堅守している。その他各賞のトップ選手も変わっていない。

9日に行われる第13ステージは、ニームからカルカッソンヌまでの219.9km。ひたすら西に針路をとる1日は、セオリー的にはスプリントフィニッシュだが、カルカッソンヌを目指す日は不思議と逃げが決まりやすい。過去7度フィニッシュ地点となっているが、すべて逃げ切りで勝者が生まれている。今回は果たして?

ステージ優勝 ニールス・ポリッツ コメント

© BORA – hansgrohe / Bettiniphoto

「信じられない。ツール・ド・フランスのステージ優勝は夢だった。サガンが大会を去らなければならなかったのは本当に悲しかったが、それを乗り越えて勝つことができた。

スタートから横風が吹いていたが、ここ数日は調子が良かったので対応できる自信があった。ただ、スプリンターが逃げに何人か入ったので、自分からレースを活発にして攻撃的に走らないといけなかった。結果的に独走になったが、自分でも驚いている。

サイクリングは私の情熱。家族にとっては私が家を離れて過ごすことは寂しいと言っている。これは、そんな彼らにささげる勝利だ」

マイヨジョーヌ、マイヨブラン タデイ・ポガチャル コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「今日の走りには満足している。横風区間でもしっかり対応できた。序盤数キロはとてもクレイジーだったが、チーム全体で前へ出られたので、問題なく走ることができた。

昨日のモン・ヴァントゥで、強い選手が多数いることを再認識した。これからはもう少しディフェンシブに乗る必要もあると思う。暑いピレネーでは何が起こるか分からないが、2位の選手との差は十分あるので、マイヨジョーヌを失うことについては特に心配はしていない」

ツール・ド・フランス2021 第12ステージ 結果

ステージ結果

1 ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)3:22’12”
2 イマノル・エルビティ(モビスター チーム、スペイン)+0’31”
3 ハリー・スウェニー(ロット・スーダル、オーストラリア)ST
4 シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、スイス)+1’58”
5 ルカ・メズゲッツ(チーム バイクエクスチェンジ、スロベニア)+2’06”
6 アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネイション、ドイツ)ST
7 エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード、ベルギー)ST
8 ブレント・ファンムール(ロット・スーダル、ベルギー)ST
9 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)ST
10 セルヒオルイス・エナオ(チーム クベカ・ネクストハッシュ、コロンビア)ST

マイヨジョーヌ(個人総合成績)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 47:22’43”
2 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)+5’18”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+5’32”
4 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+5’33”
5 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+5’58”
6 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+6’16”
7 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+6’30”
8 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+7’11”
9 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+9’29”
10 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+10’28”

マイヨヴェール(ポイント賞)

マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)

マイヨアポワ(山岳賞)

ナイロ・キンタナ(チーム アルケア・サムシック、コロンビア)

マイヨブラン(ヤングライダー賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合成績

バーレーン・ヴィクトリアス

 

ツール・ド・フランス スタートリスト&コースプレビュー

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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