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モホリッチが2度目の逃げ切り、メイン集団は翌日のTTに備えて温存|ツール・ド・フランス

大会終盤に入っているツール・ド・フランス。現地716日は第19ステージを行い、序盤と中盤に集団から飛び出した選手たちがそのままステージ優勝争いへ。このうち、序盤から逃げていたマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)が残り25kmで独走に持ち込み、そのままトップでフィニッシュ。第7ステージに続く、今大会2度目の逃げ切り勝利を挙げた。メイン集団は、逃げた選手たちの動きを容認。総合に関係しないとあり、レース後半は安全策。モホリッチから2050秒後にレースを完了し、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)はマイヨジョーヌで翌日の個人タイムトライアルに挑むこととなった。

自らの勝利でもって実力を示したモホリッチ

前々日の第17ステージ、前日の第18ステージとピレネーの山々を駆けたプロトン。ポガチャルの強さが際立ち、個人総合2連覇に向けてこれまで以上に視界がクリアになった。また、個人総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)、同3位のリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)を含めた今大会の3強の存在感がくっきり。残るステージで、この3人の形勢が確定する。

18ステージで本格山岳が終わり、この日行われるステージは、久々の平坦路。ムランウーからリブルヌまで、207kmとレース距離こそ長いが、上下の変化はさほどない。ここ数日は雨もあって涼しい日が続いていたが、一転して暑い中でのレースに。

ちなみにスタート地ムランウーは、1969年大会でエディ・メルクスがステージを圧勝し初の個人総合優勝を決定づけた街。それにちなんで名付けられた「エディ・メルクス・ヴェロドローム」前をスタート。レース前にはメルクス氏も駆けつけた。

セオリー的にスプリント勝負とあり、ステージ最多勝タイとしているマーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)の記録達成なるかが焦点だったが、結果的にまったく異なるレース内容となる。

スタート前に、マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネイション、カナダ)とミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)が出走しないことを発表。両者とも東京五輪ロードの代表に選ばれており、準備に専念するものとみられる。

迎えたレースはリアルスタートして早々に落車が発生し、個人総合5位につけるウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)らが巻き込まれるなど慌ただしい状況となるが、やがて6人が先行したことでプロトンはいったん落ち着きを見せる。

ただ、クラッシュは38km地点でも発生。今度は規模の大きなものとなり、個人総合6位のエンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)や同8位のギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)、さらにカヴェンディッシュも足止めを食うが、その後のレースの流れにはさほど影響せず。レースリーダーのポガチャルが集団前方へ出て他チームに減速を促すなどして、後続選手たちの集団復帰を優先した。

54km地点に設定された中間スプリントポイントは、先頭6選手がそのまま先に通過したのち、345秒差でメイン集団が到達。チーム バイクエクスチェンジが主導権を執り、そのままマイケル・マシューズ(オーストラリア)を集団先頭で通過させる。これが全体の7位通過で、カヴェンディッシュは無理に競わず10番手での通過とする。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

状況が一変したのは、この直後。メイン集団が突如活性化し、アタックする選手が続出。前に出た選手に次々と同調が生まれ、20人の第2グループが形成される。メイン集団は、この日が39歳の誕生日であるアンドレ・グライペル(ドイツ)を勝利に導きたいイスラエル・スタートアップネイションがペースアップ。クリストファー・フルーム(イギリス)も加わり、スプリント勝負にこだわって前を行く選手たちを捕まえようと試みるが、大多数のチームが前に選手を送り込んだこともあり、イスラエルだけが追う姿勢を見せる状態。20kmほど追い続けたが、ついに諦めて逃げを容認した。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

追走メンバーは逃げグループを追う間に人数を減らして14人に。フィニッシュまで残り100kmとなったところで先頭の6人に合流し、20人のグループに膨らむ。ペースを緩めたメイン集団との差はあっという間に広がっていき、そのままステージ優勝を争うこととなる。

しばらく20人のまま進んだ先頭グループだが、残り36kmでのフランク・ボナムール(B&Bホテルズ KTM、フランス)とヨナス・ルッチ(EFエデュケーション・NIPPO、ドイツ)のアタックで、ステージ優勝を賭けた争いが幕開け。アタックとキャッチの繰り返しが長く続いたが、残り25kmで決定打が生まれる。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

駆け引きの間隙を縫って、モホリッチがスルスルと抜け出すと、一緒に逃げてきた選手たちを振り切ることに成功。すぐに独走態勢を築いたモホリッチに対し、後ろではアタックが散発しては吸収されるばかりに。一定ペースで走り続けるモホリッチは、45秒ほどのリードを保ったまま進行。残り10kmを切ると、追走メンバーの牽制ムードが高まったことも関係し、その差はさらに広がった。

十分なリードを得たモホリッチは、1人でフィニッシュへとやってきた。丘陵地を走った第7ステージでも独走で勝ったが、このステージでも得意のパターンに持ち込んでの勝利。バーレーン・ヴィクトリアスは、2日前の第17ステージ後に禁止物質を扱っているとの疑いでフランス当局の捜査を受けたが、モホリッチはその影響を感じさせることなく力を示してみせた。

その後、58秒差でクリストフ・ラポルト(コフィディス、フランス)が2位、カスパー・ピーダスン(チームDSM、デンマーク)が3位を押さえ、ステージ20位までを逃げていた選手たちが占めた。

かたや、メイン集団はセーフティーを選択し、「移動ステージ」として終えた。リーダーチームのUAEチームエミレーツが全体をまとめてフィニッシュラインへ。完走者全員この一団でレースを完了。モホリッチからは2050秒後のことだった。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

個人総合上位陣の変動はなし。首位ポガチャルから2位ヴィンゲゴーが545秒差、その6秒差でカラパスが続いて、次のステージへと駒を進める。

17日に行われる第20ステージで、個人総合成績が事実上決定する。最終決戦は、30.8kmの個人タイムトライアル。おおむね平坦基調で、後半に入ってわずかに上る区間があるが、それでも、タイムトライアルを得意とする選手に有利に働くとみられる。今大会1つ目の個人TTだった第5ステージではポガチャルが勝利しており、総合トップのアドバンテージも味方に大会2連覇へ突き進んでいくことだろう。また、ヴィンゲゴーも同様に第5ステージで好成績を収めており、翌日の優勝候補の1人。カラパスは個人総合4位のベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)との総合タイム差が227秒あり、総合表彰台を確実にするための最後の仕上げとなる。

最終の第21ステージがパレード走行メインとなるため、第20ステージ終了時点での個人総合順位が最後まで反映されることとなるのが慣例だ。

ステージ優勝、敢闘賞 マテイ・モホリッチ コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「勝つために全力を尽くしたが、結果が出てみると信じられない気分だ。ドゥクーニンク・クイックステップとアルペシン・フェニックスはスプリントを狙ってくるだろうと思っていたので、彼らの動きを注視していた。逃げに入ってからは、みんなで逃げ切りを目指そうと呼びかけていた。レース途中で逃げのメンバーが増えたときにチームメートがいなかったことにガッカリしたが、体力を温存できると割り切ってチャンスを探っていた。アタックがかかりはじめたときは本当に苦しかったが、(残り25kmでの)一回に賭けて勝負した。逃げている間も脚に力が入っていない感じだったが、何とか後ろとの差を広げて勝利することができた」

マイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨブラン タデイ・ポガチャル コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「エディ・メルクスと一緒にポディウムに立つことができ興奮している。彼はロードレース界のヒーローだ。私は彼に到底及ばないが、子供たちに夢を与えられるような存在になりたい。スロベニアでサイクリングブームが訪れていて、帰国時ににサイクリストを目にするとうれしくなる。

明日の個人タイムトライアルは、とてもスピーディーなコース設定で、個人的には気に入っている。正直、昨日までの疲れを感じてはいるが、今夜どこまで回復できるかで明日の走りが決まってくると思う。もちろん、ステージ優勝は目標になってくる」

ツール・ド・フランス2021 第19ステージ 結果

ステージ結果

1 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)4:19’17”
2 クリストフ・ラポルト(コフィディス、フランス)+0’58”
3 カスパー・ピーダスン(チームDSM、デンマーク)ST
4 マイク・テウニッセン(チーム ユンボ・ヴィスマ、オランダ)+1’02”
5 ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+1’08”
6 エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード、ベルギー)ST
7 ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)ST
8 ゲオルク・ツィマーマン(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ドイツ)ST
9 アントニー・テュルジス(チーム トタルエナジーズ、フランス)+1’10”
10 ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)ST

マイヨジョーヌ(個人総合成績)

1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア) 79:40’09”
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+5’45”
3 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)+5’51”
4 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+8’18”
5 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ、オランダ)+8’50”
6 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+10’11”
7 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック、カザフスタン)+11’22”
8 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+12’46”
9 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+13’48”
10 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO、コロンビア)+16’25”

マイヨヴェール(ポイント賞)

マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イギリス)

マイヨアポワ(山岳賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

マイヨブラン(ヤングライダー賞)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合成績

バーレーン・ヴィクトリアス

 

ツール・ド・フランス スタートリスト&コースプレビュー

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福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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