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東京五輪女子ロードは数学研究者のキーセンフォーファーが大番狂わせ!オランダに勝利

大激戦の男子に続き、女子では世紀の番狂わせが起きた。30歳のアンナ・キーセンフォーファー(オーストリア)は、スタートアタックからレースをリードすると、そのまま最後まで逃げ続けた。充実の戦力で本命視されていたオランダ勢が逃げの情報を得られず戦術通り走れずにいる間に、「少ない人数の中で走った方が楽だから」と飛び出していた無名のライダーがトップで137kmの全行程をトップで駆け抜けてみせた。普段は数学研究者として数々の論文を発表しているアマチュアライダーが、最高の舞台で「ジャイアントキリング」を成し遂げてみせた。

長い下りを前にアタックすると決めていたキーセンフォーファー

前日724日から始まった自転車競技は、同日の男子ロードレースに続き、女子ロードレースが25日に行われた。男子と同様に東京都府中市・武蔵の森公園をスタートし、静岡県小山町・富士スピードウェイを目指す。女子は137kmで争われ、道志みちの長い上り基調や籠坂峠がポイントの区間に。その後、富士スピードウェイを基点とする周回コースを2周。ここも細かなアップダウンとあり、レース展開に左右することが想定された。獲得標高は2692mと発表される。

午後1時にスタートしたレースは、10.1kmのパレード走行の後にリアルスタート。結果的に、これが選手たちの運命を分けることとなる。

リアルスタートと同時に飛び出したのは、アンナ・プリフタ(ポーランド)、カーラ・オーバーホルツァー(南アフリカ)、ヴェラ・ルーサー(ナミビア)、オメール・シャピラ(イスラエル)、そしてキーセンフォーファーが乗り込んだ。この後に追走を試みる選手が数人現れ、メンバーが入れ替わりながら先頭5人を追ったが、合流はならなかった。

メイン集団が追う意思を見せなかったこともあり、逃げの5人はあっという間にタイム差を確保。50kmを過ぎた頃には、その差は1030秒まで広がった。この間、メイン集団はドイツやオランダの選手が集団前方をうかがう場面が見られるが、本格的に追うムードにはならない。

徐々に上り基調になるにつれて、ルーサー、オーバーホルツァーと脱落。人数が減った逃げグループだったが、快調に飛ばし続ける。道志みちの上り基調を行く間も、メイン集団とは10分近い差を保ち続けた。かたや、メイン集団では、アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ)が、エマセシル・ノールゴー(デンマーク)の落車に巻き込まれるアクシデント。両者ともすぐにバイクにまたがって再出発したが、なかなか集団の状況が整わない。

こうした状況を嫌ってか、有力視されていたオランダ勢からデミ・フォレリングがアタック。これをきっかけに集団は活性化。直後のカウンターアタックも含めて決定的な動きは生まれずも、ようやく前を行く選手たちを追うムードが高まってくる。さらに、道志みちを終えようかというタイミングで、集団に戻っていたファンフルーテンがアタック。これには誰もついていけず、メイン集団とは1分ほどのタイム差がつく。

タイミングを同じくして、逃げグループでも変化が起きる。籠坂峠を前に、短い上りでキーセンフォーファーがアタック。プリフタとシャビラを引き離すと、ここから40km以上に及ぶ独走劇が始まる。

先を行くアンナ・プリフタ(ポーランド)と後ろに続くオメール・シャピラ(イスラエル)

下りに入ってさらに勢いを増したキーセンフォーファーは、プリフタとシャビラとの差を広げるだけでなく、単独で追っているファンフルーテンに対しても貯金を取り崩さない好ペースを維持。下りを終える頃にファンフルーテンは集団へと戻ったが、この段階でキーセンフォーファーとの差は約5分。徐々に逃げ優位の状況が形作られていった。

単独で富士スピードウェイへとやってきたキーセンフォーファーは、十分なリードを保ったまま最終の周回コースへ。プリフタとシャビラのパックとは2分ほどの差とし、さらに約3分差でメイン集団。與那嶺恵理も集団に残って、レース終盤を迎えた。

追撃へ急ぐ必要が出てきたメイン集団。ジュリエット・ラボー(フランス)が1人飛び出して前を追うが、数秒後に集団が続き、レースを大きく動かすほどにはならない。残り10kmを切って、複数人を残しているオランダとドイツが動き出すが、ラボーと逃げ残りの2人を捕まえるのが精いっぱい。富士スピードウェイを目前にアタックがかかり、人数が絞り込まれるが、キーセンフォーファーとの差をすべて埋めるまでには至らない。

終始ペースを落とすことなく走り続けたキーセンフォーファーは、最後の直線に入っても後続に背中を見せない圧巻の独走劇。ウイニングセレブレーションに慣れていなかったか、幾分ふらつきながらも両手を広げて優勝の瞬間を迎えた。

アマチュアがプロに勝った

30歳のキーセンフォーファーは、2017年にプロチームのロット・スーダルレディースで1年間だけ走ったが、その後はトップチームには所属せずにここまで活動してきた。自身の現状は「アマチュアである」と公言しており、本来の顔は数学研究者だ。ケンブリッジ大学で数学の修士号を取得すると、スペイン・カタロニア工科大学で応用数学の博士号を取得。現在は、スイス・ローザンヌのスイス連邦工科大学で数学のポスドク研究員として働き、数々の論文を発表している。

選手としての実績は、過去に国内選手権を制するなどオーストリアでは第一人者だが、国際大会でのビッグリザルトはなく、世界的には無名。まったくノーマークだったなかでの勝利だが、スタートアタックをしたのも「集団走行があまり得意ではないから」だったとレース後に打ち明けるなど、異色のレーサーが五輪を制した。

本命オランダ勢は情報伝達ミスで勝ったと誤解

驚きの瞬間からしばらくして、メイン集団からのアタックに成功していたファンフルーテンが2位でフィニッシュ。自身は勝ったものと思って喜んだが、フィニッシュ後にキーセンフォーファーが先着していたことを知りショックを隠せない。走っている間、戦況が思うように把握できず、チーム内で共有が難しかったことをレース後に打ち明けている。

また、3位にはエリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア)が入賞。前回のリオ五輪に続く銅メダル獲得となった。

日本代表は、與那嶺恵理が21位。一時は遅れながらも下りで集団に復帰、レース後半まで前方で走った金子広美は43位での完走となった。

東京五輪の自転車競技は翌26日以降も各競技が展開される。ロード種目は、28日に男女の個人タイムトライアルが富士スピードウェイを主会場に行われる。

金メダル アンナ・キーセンフォーファー コメント

「リアルスタートと同時にアタックすることは決めていた。前方でレースを展開できるだけでうれしい気分だった。実は集団走行が苦手で、プロトン内でレースを進めるのは望ましい状況ではなかったから。

恐怖感なく走れただけで気分的には充分だった。逃げのメンバーと協調ができたし、良い流れでレースを進められた。逃げた5人の中では私に一番脚があることを感じていたので、(籠坂峠後の)長い下りを前に仕掛けようと思っていた。下りはとても得意で、1人でのダウンヒルはまるで個人タイムトライアルのようだった。

金メダルだなんて信じられない。フィニッシュラインを越えてからも、本当にレースが終わったのか信じられなかった。もし、まだ走るように言われていたらと思うと…とにかく信じられない!」

リザルト 東京五輪女子ロードレース(137km)

1 アンナ・キーセンフォーファー(オーストリア)3:52’45”
2
 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ)+1’15”
3
 エリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア)+1’29”
4
 ロッタ・コペッキー(ベルギー)+1’39”
5
 マリアンヌ・フォス(オランダ)+1’46”
6
 リサ・ブレナウアー(ドイツ)ST
7
 コリン・リベラ(アメリカ)ST
8
 マルタ・カヴァッリ(イタリア)ST
9
 オルガ・ザベリンスカヤ(ウズベキスタン)ST
10
 セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク)ST
21
 與那嶺恵理(日本)+2’28”
43
 金子広美(日本)+8’23”

東京五輪の詳細はこちらから↓

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2020年07月18日

 

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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