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苦難の1年を越えて、5年ぶりに晴れの舞台へ!與那嶺恵理直前インタビュー

7月25日(日)に開催される自転車女子ロードレース競技。日本代表として2大会連続でオリンピックの舞台に立つ與那嶺恵理選手に、脚のしびれに苦しんだ今シーズンのことから出国直前のアクシデント、そして、本番を直前に控えた今の心境やコース試走の感想などを聞いた。

「みなさんが思っているほど重症じゃないですよ」

本番1週間前に帰国されてからの調整は順調ですか?

やっぱり蒸し暑いですけど、時差は慣れていますしコンディションは順調です。現在はコース近くの山中湖周辺を拠点に調整しています。帰国してすぐに富士スピードウェイのサーキット以外のコースをすべて試走しました。自転車トレーニング以外では外に出ないので、比較的ゆったりと過ごしています。

いよいよオリンピックが迫って心境は?

私にとって、たくさんある大事なレースのひとつで、世界選(世界選手権)と同じような気持ちです。昨年オリンピックが延期になりました。言ってしまえば1年無駄に歳をとってしまったというくらいの感じです。このような状況は私だけではなくて、選手はみんな同じなので悲観していませんし、いよいよ本番が迫ってきたという気持ちです

今シーズンは右脚の痺れもあり苦しい時期が多かったと思いますが、振り返っていかがですか?

はい、春先から悩まされていた右脚のしびれの原因が、6月頭に専門ドクターを受診できたことで、イリア・アーダリー・エンドファイブロセス(腸骨動脈内繊維症)とわかりました。今年のスプリングクラシックは調子が上がらず、まわりからは休息をとれば大丈夫だよと励まされたりしましたが、フィーリング的に私は薄々イリアじゃないかなと感じていました。診断が出た時は、「やっぱりそうだよね」という感じで、冷静に受け止める自分がいました。もちろん「オリンピック直前のこのタイミングになぜ!?」と、その時は落ち込みましたけど、怪我ではないので今は悲観もしていません。とても心配されますけど、みなさんが思っているほど走れていないわけではないので大丈夫です。

イリア・アーダリー・エンドファイブロセス(腸骨動脈内繊維症)
Iliac artery endofibrosis・・・今大会も優勝候補の一角であるマリアンヌ・フォス(オランダ)なども過去に経験したプロサイクリストに出やすい病気だ。私生活の中では症状が出ないが、長時間前傾姿勢でペダリングすることで、腸骨動脈の拗れが生じて、高い強度で踏むと、しびれが出やすい。

わずか1カ月少々で、どのように対処してきましたか

前傾姿勢が深いと圧迫されてしびれが出てしまうため、深い前傾からポジションを大きく変えました。骨盤を立ててしびれないことを優先しつつ、その中でパワーを出せるポジションへ調整しました。そして高強度のゾーン5〜6を踏むとしびれるので、ゾーン4をしっかりと鍛えてコンディションを上げてきました。

オリンピックに向けてどのようなトレーニングを重ねてきましたか

オリンピックだからといって特別なトレーニングはしていません。今シーズンは、スプリングクラシックの時の観客が少なかっただけで、コロナ前の2019シーズンとレーススケジュールは基本的に同じでした。オリンピック前、ここ1カ月少々のスケジュールが少し変わっただけです。

ライバルたちが多く参戦したジロ・ローザをスキップし合宿を実施しましたが、その目的は?

ジロは楽しみにしていたレースでしたが、イリヤの診断が出たことで、レースをスキップして、すぐに高地合宿に入りました。レースがない代わりに、ちょうど1ヶ月間しっかりトレーニングをできたと思います。宿泊拠点は標高2000mの高地で、トレーニングは標高600mくらいからはじめて登る時は標高2500mくらいまで走りました。トレーニング内容は普段と大きくは変わらず、オリンピックだからといって特別な調整はしていません。

日本への出国日、住んでいるオランダの街が大きな被害を受け大変だったと思いますが

今回の洪水でオランダはじめヨーロッパで甚大な被害が出ています。出国前夜に街が水没して、住んでいる建物の1階が冠水してしまいました。5月にようやくコロナが落ち着いて営業を再開したお店も営業ができなくなりました。私もクルマが水没してしまいましたが、なんとか日本に帰国できました。直前に色々と重なりましたけど、本番に向けて今はもうやるしかないという気持ちです。

5年ぶりのオリンピックに挑むことになりますが、いよいよという感じでしょうか?

前回のリオオリンピック(2016年)は選手村で様々な競技の選手との交流もありましたけど、今回ロードレースコースは都内がメインではないので、選手村にも行かないので、そういう意味ではオリンピックらしさは感じていません。知り合いの多い各国ナショナルチームも、それぞれの宿に止まっているので、世界選のような雰囲気です。

コースを試走して、どのような印象でしたか?

前評判どおり、起伏の多いタフなコースだと思います。テクニックというよりは、フィジカルが厳しい印象です。普段ヨーロッパのレースでは、道幅が狭かったりとコース自体がテクニカルだったりしますが今回のコースはその心配はほとんどありません。そもそも集団も60人程度と小集団ですし、横風区間で一列棒状になるような可能性も低いと思うので、その点は安心です。

暑さは対策が必要ですね。海外選手の中にはサウナで対策しているようですけど……。ツールのように2〜3週間もレースが続けばキツいと思いますけど、1日なので、給水や氷で冷やすなどの対策をしっかり行うことが大切だと思っています。

TOKYO2020のロードレース女子選手リストはこちらへ↓
東京五輪自転車ロードレース女子選手リスト|TOKYO2020 Olympic road race women’s

東京五輪自転車ロードレース女子選手リスト|TOKYO2020 Olympic road race women’s

2021年07月19日

前回のリオオリンピックはロード17位、個人タイムトライアル15位でした。今大会の目標はどのあたりに設定していますか?

アスリートの欲求として、前回大会の成績をともに上回ることを目標してこれまで取り組んできました。直前のレースをスキップして高地で淡々とコンディションを整えてきたので、自分のコンディションは上がってますけど、ライバルも本番に向けて調子を上げてくるでしょうから、正直、やってみないとわからない状況です。外的なバッドラックがなくレースを走り終えられればいいと思います。

ロードと個人タイムトライアル、それぞれの戦略などありますか。

タイムトライアルは狙っていますけど、ポジションを大きく変えたことがどう影響するかですね。ポジション的にロードよりも脚のしびれが出やすいので、あまりきちんとトレーニングができていないという心配はあります。

ロードレースは、自分で動くレースではないので、オランダはじめとする強豪国の動きに合わせて進めることになります。展開を左右する動きなのか、そうでないのか、見極めて進めてレースをしたいですね。昨年の世界選(21位)のような展開になれば可能性はあると思っています。

バイク、機材について

機材(バイク)については武井コーチに全幅の信頼を寄せている與那嶺選手。今回のオリンピックに向けた機材について武井コーチに話を聞いた。

少しでもワットをロスしないように回転のよさを重視

特にこだわっている点は、機材抵抗をできるだけ減らしてあげることだね。チェーンやドライブトレインまわりの抵抗を減らすため、やれるだけのコーティングやグリスに加えて、洗車といった基本を大事に整備することが大前提。恵理選手は体重も軽いから、大柄の選手よりも機材によるわずかなパワーロスの影響が大きくなる。なので、1ワット、2ワットのロスがないように仕上げている。

イリヤの症状に合わせたポジションに

ポジションはシーズンインの時から大きく変わっているね。ロードポジションでステムを4cm上げて、サドルを2cm高く、前方へ1.5cm出している。深い前傾姿勢はイリアックのようなリスクがあり、プロとして競技を長く続けるためには軽視してはいけないと思う。これは経験豊富なプロチームのドクターも指摘している点だから間違いないよ。

今回、ウエアはフルオーダーで作ってくれたので、エアロ効果も暑さ対策も他国に対してアドバンテージがあると感じているよ。完成までに4回くらい作り直したかな。

最後に、応援してくれる方々にメッセージをお願いします。

コース中盤にある山伏峠を集団の前のほうで越えられれば、その後は展開に乗って進められると思います。当日のインターネットライブ配信やテレビでの観戦になると思いますけど、最後まで画面に映る位置で走れるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。

與那嶺恵理

生年月日: 1991 年 4 月 25 日
所属: OANDA JAPAN
出生地: 大阪府
出身校: 筑波大学

2021年シーズンはチーム ティブコ・シリコンバレーバンクでワールドツアーレースを走る。2011年にテニスから自転車競技に転向、その後2013年には全日本選手権、ロード・個人TT、MTB クロスカントリーの3種目で優勝している。国内チームを経て2016年にから海外チームに所属し、現在オランダを拠点に活動している。過去オリンピックにはリオデジャネイロに出場している。

主な成績

2020 年 世界選手権ロードレース 21 位
2019 年 ストラーデ・ビアンケ 13 位
全日本選手権ロードレース 優勝
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝
2018 年 アジア競技大会(ロードレース) 3 位
アジア競技大会(個人タイムトライアル) 2 位
全日本選手権ロードレース 優勝
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝
2017 年 全日本選手権ロードレース 優勝
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝
2016 年 リオデジャネイロオリンピック(ロードレース) 17 位
リオデジャネイロオリンピック(個人タイムトライアル) 15 位
アジア選手権(ロードレース) 4 位
全日本選手権ロードレース 優勝
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝
2015 年 全日本選手権ロードレース 2 位
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝
2013 年 全日本選手権ロードレース 優勝
全日本選手権個人タイムトライアル 優勝

 

TOKYO2020の詳細はこちらへ↓
TOKYO2020の2021年新スケジュール決定、自転車競技は7月24日のロードからスタート

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2020年07月18日

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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