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勝負勘冴えわたったカラパスのアタック、ツール大活躍組がメダル占める|東京五輪男子ロードレース

ここぞという局面での嗅覚が冴えわたった。724日に行われた東京五輪自転車競技・男子ロードレース。一発勝負で決まる大一番で実力と勝負勘を最も発揮できたのがリチャル・カラパス(エクアドル)だった。出場枠が2つと、他の有力国と比べると数的不利にもかかわらず、それをものともしない走りでライバルたちを破ってみせた。そして、先のツール・ド・フランスでの総合表彰台獲得が伊達ではないことを示したレースだった。

残り25kmでライバルから先行し優位な展開に持ち込む

前日23日に正式に開幕した東京2020五輪。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、1年遅れの開催となったスポーツ最大のイベントは、早速24日から競技が開始に。その皮切りとなる男子ロードレースは、大会全体でも最初の決勝種目として行われた(競技時間の関係上、メダリスト決定は他競技が先となる)。

コースは、東京都府中市・武蔵の森公園をスタートとして、神奈川県、山梨県、静岡県にまたがる1315市町村を走る約244km。うち、10.1kmがパレード走行となるため、レース距離としては234kmで争われることになる。レース前半から上りが始まり、リアルスタートから80kmを迎えようかというタイミングで標高は1000mに到達。1回目の籠坂峠通過後にいったん下って、富士スカイラインの上りへ。頂上がこのレースの最高標高地点(1451m)になる。再び下って、フィニッシュラインが敷かれる富士スピードウェイを基点とする周回を2回めぐって、勝負どころと目される三国峠、直後に2回目の籠坂峠を越えて、あとは富士スピードウェイのフィニッシュラインを目指して下っていく。

コース全体の獲得標高は4865m。さながらアルデンヌクラシックやグランツールの山岳ステージ並みの数字とあって、戦前からクライマーやグランツールレーサーに有利と見られてきた。実際に、18日に閉幕したツールから約50人が、パリ・シャンゼリゼに到達した脚のまま東京へと乗り込んできた。

レースは午後11時にスタート。パレード走行を経て是政橋でリアルスタートが切られると、直後のアタックから8人の逃げが決まった。メンバーは、ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)、ミハエル・クークレ(チェコ)、ユライ・サガン(スロバキア)、エドゥアルド・グロス(ルーマニア)、ポリフロニス・ゾルザキス(ギリシャ)、オールイス・アウラール(ベネズエラ)、ポール・デュモン(ブルキナファソ)、エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン)。

メイン集団は逃げをすぐに容認してペースを落としたことで、タイム差は急激に拡大。15分ほどの差になったところで、一度グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)が集団のペースを上げて、約10分差に戻したところでいったん収束。多くの国・選手がチームカーへと下がってボトル受け取りや戦術確認を行ったりしたことで、再び逃げメンバーのリードは広がることに。その差は最大で20分まで広がった。この間、日本代表の新城幸也と増田成幸もチームカーへと下がったり、流れの中から集団前方へと顔を見せたりと元気な様子を見せていた。

逃げ続ける8人に対して、メイン集団は70km地点を過ぎてからスロベニアが前線へ。ヤン・トラトニクが牽引を担う。続いてベルギーもファンアーヴェルマートを前に送り込んでペーシング。これによって、少しずつながら逃げグループとのタイム差が縮まっていく。その前にはトリスタン・デ・ランゲ(ナミビア)が集団から抜け出す場面があったものの、レース展開には大きな影響を与えることはなかった。

徐々にペースが上がる集団では、ゲラント・トーマスとテイオ・ゲイガンハートのイギリス勢が巻き込まれる落車が発生。特にトーマスのダメージは大きく、右肩と肘から流血。一度は集団に戻ったものの、結果的にリタイアすることとなる。

距離を追うごとに上りが厳しくなってきたこともあり、逃げメンバーも自然に人数が減っていく状態に。スタートから100kmを目前に、先頭に残ったのは5人。かたや、メイン集団はファンアーヴェルマートの牽引を中心に進行し、前との差を減らしていった。

中盤の重要区間である南富士エバーラインの上りで、ベルギーはファンアーヴェルマートに代わってティシュ・ベノートを牽引役に。スロベニアはトラトニクが引き続き最前線に立つ。さらに頂上が近づくとジュリオ・チッコーネ(イタリア)も上がってスピードアップ。人数が絞られていき、増田と新城も後方へと下がっていく。上りの途中で先頭とのタイム差が10分を切ると、頂上では6分ほどの差に。

一度下って、今度は富士スピードウェイを基点とする周回路へ。この間もメイン集団はペースを緩めることなく進行。逃げる選手たちとのタイムギャップを順調に減らしていく。集団から後ろを走っていた新城と増田らも、この区間で再合流。2周目に入ると、長く逃げ続けていた選手たちの消耗度が限界にきたか、グループが崩壊。逆に、メイン集団は活性化。ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)のアタックをきっかけに勢いが増すと、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)らの仕掛けは成功とはならずも、前とのタイム差を減らしていくには十分なものに。富士スピードウェイに入ったところで逃げていた選手たちを全員キャッチし、レースはふりだしへと戻った。

向かうは勝負どころの三国峠。イタリアが人数をかけて主導権争いに加わると、スロベニア、ベルギーとともに前方を固め始める。特にベルギーは、ベノートが引き終わるとマウリ・ファンセヴェナントがその役を受け継いでワウト・ファンアールトでメダルを狙う状況を整えていく。だが、その矢先にレースが大きく動いた。

ツール・ド・フランス覇者、ポガチャルが三国峠で仕掛ける

写真:ロイター/アフロ

頂上まで4kmを残したタイミングで、タデイ・ポガチャル(スロベニア)が計ったようにアタック。他選手の反応を見て行けると踏んだか、グイグイと急坂を上っていく。ここに、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)とマイケル・ウッズ(カナダ)が合流。3人のパックとなって、後ろとの差を15秒まで広げる。メイン集団は跡形もなくなり、前を行く3人を追う選手たちで構成されるグループに。これを率いるのはファンアールト。ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)の動きにカラパスとアルベルト・ベッティオル(イタリア)が合わせて、頂上を前にポガチャルらに合流。その後、下りに入ってからファンアールトらも追いつき、この峠をすべて終える頃には13人の精鋭グループとなった。

精鋭グループ13
タデイ・ポガチャル(スロベニア)
ブランドン・マクナルティ(アメリカ)
マイケル・ウッズ(カナダ)
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)
リチャル・カラパス(エクアドル)
アルベルト・ベッティオル(イタリア)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ワウト・ファンアールト(ベルギー)
ヤコブ・フルサン(デンマーク)
ダヴィド・ゴデュ(フランス)
バウケ・モレマ(オランダ)
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)
アダム・イェーツ(イギリス)

しばらくは散発的なアタックが出ては吸収される流れが繰り返されたが、残り25kmでマクナルティがカウンターアタック。これに乗じたのがカラパス1人。他はお見合い状態となり、マクナルティとカラパスの2人逃げの状況が生まれる。

すぐに協調体制が組まれた先頭の2人は、いまひとつ動ききれない後続に対してリードを少しずつ広げていく。その差が45秒となったところで、ファンアールトがしびれを切らして自ら牽引。一気にタイム差が縮まると、残り8km14秒まで迫った。

それでも、慌てず仕掛けどころを探っていたカラパスは、富士スピードウェイに戻る直前のフィニッシュ前5.8kmで渾身のアタック。マクナルティを振り切ると、再び後続との差を広げていく。追撃を試みていた選手たちは、マクナルティこそ捕まえたものの、カラパスに追いつくのはあきらめたか、2位狙いのムードへ。

巧く独走に持ち込んだカラパス。あとはトラブルなくフィニッシュへたどり着くのみ。最後の直線に入ってもしっかり踏み続けたが、残り50mでようやく笑顔に。十分なリードを保って、歓喜のフィニッシュとなった。

©︎ Getty Images

現在28歳のカラパスは、2017年にモビスター チームでプロデビュー。早くから山岳での強さを評価されると、2019年にはジロ・デ・イタリアでグランツール初制覇。以来、グランツールレーサーとしての地位を確かなものとし、イネオス入りした昨年はブエルタ・ア・エスパーニャで個人総合2位、今年はツールを総合エースの1人として走って個人総合3位。この五輪も有力選手の一角とは見られていたが、エクアドルが得ていた出場枠が2つと、最大の5つを獲得した国に対しては数的不利な条件だった。それに左右されず、最後は自らの力でもってつかんだ金メダル。同国では史上2人目となる五輪金メダリスト。自転車競技では初のメダルとなる。

銀メダル争いはカラパスから17秒差でのフィニッシュに。最後は8人のスプリントになり、ファンアール2位、ポガチャルが3位。両者は写真判定となり、その結果それぞれが銀メダルと銅メダルを手にすることになった。

いったん遅れながらも集団に戻るなど粘りを見せた新城と増田。新城はトップから1012秒差のパックで富士スピードウェイへと帰還し、35位。増田は完走扱いとなった中で最終グループで、84位でレースを完了した。

ロードレース種目は、翌25日に女子のレースが137kmで争われる。

金メダル リチャル・カラパス コメント

©︎ Getty Images

「ツール・ド・フランスの総合表彰台にはとても満足できていた。ただ、今回はそれとは違う何か特別なことができるのではないかと思っていた。金メダルを獲得し、フィニッシュ直後は実感がなかったが、少しずつ人生で最も幸せな瞬間を迎えていると感じられるようになっている。

マクナルティは素晴らしいオールラウンダーなので、一緒に逃げるには最適な相手だった。30秒ほどのリードを得たことで、レースを優位に進められたと思う。最後の最後までペースが衰えることがなかったことが勝因だ。

この時を迎えるために全力で準備をしてきた。レースを楽しむことができたことも良かった。たくさんのサポートに心から感謝している」

リザルト 東京五輪男子ロードレース(234km)

1 リチャル・カラパス(エクアドル)6:05’26”
2 ワウト・ファンアールト(ベルギー)+1’07”
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア)ST
4 バウケ・モレマ(オランダ)ST
5 マイケル・ウッズ(カナダ)ST
6 ブランドン・マクナルティ(アメリカ)ST
7 ダヴィド・ゴデュ(フランス)ST
8 リゴベルト・ウラン(コロンビア)ST
9 アダム・イェーツ(イギリス)ST
10 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)+1’21”
35 新城幸也(日本)+10’12”
84 増田成幸(日本)+19’50”

東京五輪の詳細はこちらから↓

TOKYO2020の2021年新スケジュール決定、自転車競技は7月24日のロードからスタート

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2020年07月18日

東京五輪女子ロードレース 7月25日13:00スタート予定

Twitterライブ12:30頃~を予定

 

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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