ブエルタ第2ステージでフィリプセンがスプリント勝利、アルペシンは今季全グランツールで勝ち星
福光俊介
- 2021年08月16日
スペインで開催のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージが現地8月15日に行われた。ステージ優勝はスプリントで決し、ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)が勝利。ブエルタ通算2勝目を挙げるとともに、アルペシン・フェニックスにとっても今季すべてのグランツールで勝ち星を挙げる価値あるステージ優勝となった。個人総合ではプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)が首位をキープ。新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)もチームに貢献してステージを終えている。
終盤クラッシュ発生も大勢に影響せず、ログリッチはマイヨロホを守る
前日に7.1kmの個人タイムトライアルで幕を開けた今大会。五輪で金メダルを獲得したログリッチが先勝して、長い戦いへの一歩をしるした。
ロードレースステージとしては最初になる第2ステージは、カレルエガのサント・ドミンゴ・デ・グスマン修道院からブルゴス郊外のガモナルまでの166.7km。全体を通してカテゴリー山岳がなく、平坦路を進んでいくコース。風が強い地域とあって、進行方向によっては強い風を利用したアクションが起こることも想定しておく必要性がある。とはいえ、セオリー的にはスプリント。ハイスピードの戦いが繰り広げられることが予想された。
レースは早々にディエゴ・ルビオ(ブルゴスBH、スペイン)、セルヒオ・マルティン(カハルラル・セグロスRGA、スペイン)、シャビエル・アスパレン(エウスカルテル・エウスカディ、スペイン)の3人が逃げて、そのまま推移していく。逃げメンバーがいずれもUCIプロチームのスペイン勢となり、この動きを容認したメイン集団は最大でもタイム差を約3分30秒にとどめて、残り距離を減らしていく。残り100kmを切った時点での差は1分45秒。それからは1分前後の差を保って、いつでも3人をキャッチできる態勢を整えた。
残り40kmを切ってからは、風を利用した攻撃にあらかじめ対処するべく、多くのチームが前線で隊列を編成してのポジショニング。バーレーン・ヴィクトリアスは新城を牽引役に、好位置をキープ。おのずと全体のスピードが挙がって、前の3人との差は一気に縮まっていく。
追われる3人だが、残り31kmでルビオがアタック。地元ブルゴスでのステージであることも関係してか、先頭で粘り続ける。結果的に残り20kmで集団に捕まったが、この日の敢闘賞を受賞する走りとなった。
逃げを捕まえると同時に、メイン集団では約3km先にある中間スプリントポイントに向けて猛然とスピードアップ。個人総合2位のアレクサンデル・アランブル(スペイン)でのボーナスタイム獲得を狙うアスタナ・プレミアテックが先頭に立つが、ここでのスプリントはファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ、オランダ)が先着。アランブルは2位通過で、ログリッチとの総合タイム差を暫定で4秒とする。
それからはスプリントを狙うチームと、危険回避を優先するチームとが集団前方を固めながらフィニッシュを目指していく。残り10kmを切ってからは、イネオス・グレナディアーズやトレック・セガフレード、バーレーン・ヴィクトリアスの存在感が高まる。
そうして距離を減らしていく中、残り4.2kmで集団の中ほどでクラッシュが発生。ボーラ・ハンスグローエの選手たちが複数人巻き込まれたほか、一部の選手たちが足止めを食う格好に。それでも前線はスピードを緩めることなく、最終盤へと飛び込んでいった。
スプリントに向けては、アルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップ、さらにはグルパマ・エフデジ、UAEチームエミレーツも上がってくる。これらのチームが最前線に位置しながら残り1kmのフラムルージュを通過。そして、UAEチームエミレーツが先頭からのスプリントに持ち込んで、最終局面を迎えた。
フアン・モラノ(UAEチームエミレーツ、コロンビア)がベストポジションからスプリントを開始したが、その番手をとっていたマイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ、オーストラリア)やフィリプセン、ヤコブセンもタイミングを合わせる。ここで一番の加速を見せたのがフィリプセン。反対サイドからはヤコブセンも伸びたが、フィリプセンがわずかに先着。今季4勝目、ブエルタでは昨年の第15ステージに続く勝利。また、スプリンターが強力なアルペシン・フェニックスとしても、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスに続いて今年のグランツールすべてで勝利を挙げた。
ステージ73位までがフィリプセンと同タイムフィニッシュとなり、マイヨロホのログリッチもきっちり走り終えた。追うアランブルがフィニッシュでのボーナスタイムとはならなかったため、引き続きログリッチがリーダーの座に就く。
総合系ライダーでは、アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)が31秒、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)と前回の個人総合3位ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO、イギリス)がそれぞれ38秒遅れてフィニッシュ。総合上位進出のためにタイムを取り戻すことが求められる。
チームに貢献した新城は残り2kmで機材トラブルにより後方へと下がったが、救済措置により38秒差のグループと同タイム扱いでステージを完了している。
16日に行われる第3ステージで、早くも本格山岳へと向かう。サント・ドミンゴ・デ・シロスからエスピノサ・デ・ロス・モンテロス.ピコン・ブランコまでの202.8kmに設定されるレースは、最後に上る1級山岳ピコン・ブランコで総合系ライダーの状態がある程度見極められそうだ。登坂距離7.6km、平均勾配9.3%の上りは、中腹で最大18%に達する。さらにフィニッシュ前1kmでも再び18%区間が待ち受ける。このブエルタ初登場の山岳頂上にフィニッシュラインが設けられる。
ステージ優勝 ヤスパー・フィリプセン コメント
「素晴らしい結果だ。チーム全体の努力あってのもので、グランツール最初のスプリントステージに勝つことは最高の気分。チームメート全員が役目を果たし、常に最前線に位置していたことが勝利につながった。私自身もチームメートを信頼していたし、その通りの仕事ぶりだった。今夜はとても幸せな気分で過ごせそうだ。最初のスプリントでうまくいったので、その先も継続して挑戦していくことができるだろう」
マイヨロホ プリモシュ・ログリッチ コメント
「サバイバルなレースになるとクラッシュのリスクも出てくる。今日は幸運にもクラッシュを避けられた。グリーンジャージ(プントス)を手放したことや、総合上位の選手がボーナスタイムを獲得に動くことは特に気にしていない。現状でマイヨロホを譲ることになっても、戦術的には特に変わらないと思う。明日の上りについてはどうなるか分からない。できるだけのことをやってみて、そこで自分の状態が見えてくるのではないか」
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第2ステージ 結果
ステージ結果
1 ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)3:58’57”
2 ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ、オランダ)ST
3 マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ、オーストラリア)ST
4 フアン・モラノ(UAEチームエミレーツ、コロンビア)ST
5 アレクサンデル・アランブル(アスタナ・プレミアテック、スペイン)ST
6 ジョン・アベラストゥリ(カハルラル・セグロスRGA、スペイン)ST
7 マーティン・ラース(ボーラ・ハンスグローエ、エストニア)ST
8 リカルド・ミナーリ(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、イタリア)ST
9 フロリアン・フェルメールス(ロット・スーダル、ベルギー)ST
10 ピート・アレハールト(コフィディス、ベルギー)ST
144 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+0’38”
個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)4:07’29”
2 アレクサンデル・アランブル(アスタナ・プレミアテック、スペイン)+0’04”
3 マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ、オーストラリア)+0’10”
4 ヨセフ・チェルニー(ドゥクーニンク・クイックステップ、チェコ)ST
5 ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ、オランダ)+0’11”
6 アンドレア・バジオーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)+0’12”
7 アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック、ロシア)+0’14”
8 ヤン・ポランツ(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+0’15”
9 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)ST
10 チャド・ヘイガ(チームDSM、アメリカ)+0’17”
116 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+1’38”
ポイント賞(プントス)
ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)
山岳賞(モンターニャ)
セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)
新人賞(マイヨブランコ)
アンドレア・バジオーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)
チーム総合成績
チーム ユンボ・ヴィスマ
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021スタートリスト&コースプレビューはこちら↓
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- Bicycle Club
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- TEXT:福光俊介 Photo:Luis Angel Gomez / Photogomezsport Charly López
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。