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JCF理事に聞く、パリオリンピックへ向けた選手強化。MTB世界選にエリート選手を派遣しなかった理由

8月25日から29日までイタリア北部イタリア・バルディソーレで開催のMTB世界選手権。今回、日本自転車競技連盟(JCF)は世界選手権へエリート派遣を見送った。

世界選手権でエリート選手を派遣せずU23の選手だけを派遣した意図、さらに2024年に開催されるパリオリンピックへの出場枠獲得に向け、今何をJCFは考えているのか? 世界選手権の現地で日本ナショナルチームのスタッフとして活動したJCF黒江祐平理事(MTB委員会・委員長)に話を伺った。

黒江理事はJCFとしての公式なものではなく一個人としての見解としながらも、忌憚のない意見を述べた。元MTBクロスカントリー日本チャンピオンで、現在はオランダを拠点に與那嶺恵理選手のコーチのかたわら、ジャーナリストとして活動する武井きょうすけさんが黒江理事に質問する形でレポートをする。

北京五輪以降、世界選手権に選手を十分に派遣できていない現実

2019年の山本幸平が47位を獲得したのを最後に、エリートカテゴリーへは選手派遣を行っていない。

まずは下の表をしっかり見てほしい。2012年北京オリンピックからのエリートカテゴリー のナショナルチームの結果である。JCFも十分な人数の選手を派遣できているわけではなく、山本幸平選手個人の力で世界で戦っていたというのが現実だ。その山本幸平選手も今回の東京オリンピックで引退した。

さらに次の投稿を見てほしい。ナショナルチームの現実を世界チャンピオンがはっきりと書い ている。フランス代表として世界選手権を走ったフランス代表のポーリーヌ・フェラン=プレヴ ォ選手が自分のフランス代表ジャージが届かないために公式練習に世界チャンピオンジャージで走らないといけなかったことを嘆いている。じつは世界トップ選手でも決して恵まれているわけではないという現状があるのだ。

上記2点の現状と現実を読んで頂いた後に、以下の質問をJCF黒江祐平理事(MTB委員会・委員長)に伺った内容を紹介する。

武井きょうすけ(以下略、武井)
ずばり伺います。パリオリンピック出場枠は取れますか?

黒江祐平(以下略、黒江)
国別ランキング枠では難しい認識を持っています

個人的見解ですが、国別ランキング枠では厳しい認識です。今回の世界選手権はエリートカテゴリーは、同一周回での完走が見込めないため派遣ができませんでした。

そして、日本代表として出場したU23の選手たちの結果を見る限り、日本選手全体でワールドカップ、海外のUCIレースでUCIポイントを積み重ねてオリンピックの国別枠を獲得する。これは現実的ではないのかなという認識です。

そのため、来年のアジア大会、アジア選手権でしっかりと上位を獲得し、UCIポイントを積み重ね、翌年、2023年、2024年のアジア選手権で優勝し、国別大陸枠を確保する。

それができるチームをナショナルチームとして組み立てる。これが現在考えられる現実的なプランではないかと考えています。

TK
世界と戦い、世界選手権に派遣される選手とは?

黒江
世界選手権は「国のプライドを掛けて結果を勝ち取る」場所です

今まであやふやなところがありましたが、私個人の考えとしては日本代表として選手を世界選手権に派遣するためには下記の条件が適切だと考えています。

  1. XCOなら前年の世界選手権から該当の世界選手権までの間、ワールドカップ同一周回完走。
  2. DHなら前年の世界選手権から該当の世界選手権までの間、ワールドカップ予選通過。

なぜなら、今回の世界選手権の現場で戦い、私が感じたことは、ここは「国際経験を積む」場所ではなく「国のプライドを掛けて結果を勝ち取る」場所であると痛感したからです。

当然、連盟の体制としてナショナルチームで長期遠征を行い、海外活動をしながら選手を育てる。その重要さは理解しています。しかし現状のMTB事業に振り分けられるJCF予算と、選手層の薄さを考えると、選手個々人の自助努力で、ワールドカップ完走、予選通過レベルまで競技力を高めて頂き、あとは連盟が選手それぞれの希望するサポートを、もちろん日本チーム内でのルールや協力体制は守りつつ許容すること。(プライベートコーチの帯同など)

そのルールの明確化を行い、出場を狙う選手たちが安心できる環境を低予算で整えること。この方向でしか選手の(少なくともパリまでは)強化育成ができないのでは? と考えています。

TK
ナショナルチームには現在、監督が不在ですね、監督は必要ですか?

黒江
トレンドとして監督やコーチがナショナルからチームや個人へと切り替わっています

とても難しい質問ですね。現在までは鈴木雷太監督がMTBナショナルチームの形をいちから作り上げてくださいました。

今回は監督不在で遠征したわけですが、果たしてそれが悪いことなのか、とも考えております。

なぜなら、今回派遣した選手たちは諸外国で活動をしており、監督やチームスタッフ、皆が揃うのはアジア選手権、もしくは世界選手権の時だけです。 そのために常時監督を雇用し続け、リモートで強化指定選手の活動をサポートやコーチングする。これは現実的ではないと認識しています。

現在、海外のMTB強豪国の選手はトラックやBMXと異なり、世界選手権でも普段から所属しているプロチームやパーソナルコーチが帯同するのが当たり前の状況です。(費用は選手負担)

そのため、選手はナショナルチームでの活動時でも所属チームと変わらず練習ができ、本番での高いパフォーマンスを発揮できる状況だと認識しています。

予算も人材も大きく劣る日本の現状としては、監督を雇用してナショナルチームを構築する。 これが果たして(少なくとも)パリオリンピック枠獲得への最適解なのか、疑問があります。 これは今回の世界選手権で感じている事実です。

ただ、パリオリンピック以降を見据えての、ジュニア以下の層に対してフォーカスした取り組みにおいては別に考え、連盟として積極的に取り組む必要があると考えています。

TK
限られた予算。予算感、厳しいですね(苦笑)

黒江
東京オリンピックが終わり、JOC、JKAからの海外派遣助成金が減額される可能性があります

そのため、状況はとても厳しいです。MTBは他の競技と比べても(トラック、BMX、ロード)メダル獲得への期待値は低いため、連盟内での予算確保も苦労しています。(ロードの3分の1程度と推測される、トラックはJKA直轄のため別枠?)

いろいろな打開策の可能性はありますが現状の中では、正直厳しい状況です。的を絞って投資していく必要があると思います。

TK
強化指定選手とは何ですか?

黒江
連盟での海外派遣に必要な指定制度、ただし選考や定義付けをしっかり行う必要があります

これも難しい質問ですね。

連盟の派遣事業として、強化指定選手として連盟に認定されないとナショナルチームでの一切の活動ができません。

ただ、現状は世界選手権を含む国際大会に派遣するためだけに、強化指定選手として登録を行 うこともあります。

私はこの形での追認事項が正しいのかと疑問に感じることもあります。

私としては指定された選手に関して、ナショナルチームが一部の費用を負担した強化対策合宿を行ったり、その他事務的な段取りを適切に行うために、選手へ強化指定選手としての認定をする必要がある。その程度に考えています。

本来は、強化指定選手の選考や定義付けをしっかり行う必要があるとも強く認識はしています。

(現状は選考委員も不明、ほとんどが公開されていないため、強化指定に該当するであろうレ ベルの選手の不信感を生み出してしまっている。例えば今回の世界選手権ではダウンヒルのように、ワールドカップで予選通過がギリギリ達成できていないなど、微妙な選考ラインで選手派遣できなかった)

現状は選手がどういった事情で派遣してほしい。出場する意志があるのか、直接上伸し、意見を表明し、連盟の強化部とすりあわせて派遣に結びつけるような正規のルートが存在していません。

そのため今後は選手ともしっかり力を合わせて選手の結果のために改善していきたいと思いますし、連盟が行う選手選考、選手派遣をめぐっては選手から様々な意見がある事は当然理解しているので、疑問に感じたら遠慮なく連絡をしてほしいと思っています。

連盟側も世界選手権や国際大会に関しては、選手にできる限り早く(最低でも1カ月、できる なら2カ月前)に告知と選考を伝え、最高のコンディションでスタートラインに立てるよう、 選手に時間的な準備を促すべく、連盟側の環境も早急に改善していく必要があると考えています。

TK インタビュー総括

このMTB世界選手権での最大の収穫は、日本自転車競技連盟のMTB委員長とパリオリンピックに向けて意見交換ができたことではないか。私からの率直な質問に対し、ときには苦笑いをしながら誠実に自分の意見を話してくださった黒江理事に深く感謝します。

選手派遣、選考をめぐり、多くの不幸な過去の事案があったが、少しでも未来の選手たちが迷わず進むために、この場を作りました。

武井きょうすけ

世界選手権の現場で活動するJCF黒江祐平理事

大会ホームページ
https://www.valdisolebikeland.com/en/uci-mountain-bike-world-champs-2021/

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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