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メダル獲得のキーワードは流体力学、Kabutoのエアロヘルメット技術が勝利へ導いた

世界の一流選手が日本に集い、超一流のパフォーマンスと感動的なレースを見せてくれた2020年東京五輪。伊豆ベロドロームでは好記録が連発、好記録が連発したのは各選手のパフォーマンスに加え、各チーム・メーカーの空力研究が進んだからだ。それだけに空気抵抗との戦いが選手の勝敗を分けるキーポイントとなった。

各チーム、そしてメーカーは東京五輪に向けで空気抵抗を減らすためにどんな取り組みをしてきたのか?

じつは東京五輪では女子オムニアムで銀メダルを獲得した梶原悠未選手をはじめ、トラック、ロード、MTBなど多く日本代表選手たちが日本ブランド「Kabuto(カブト)」のヘルメットを選んだ。ほかにも男子ケイリンで銀メダルを獲得したマレーシアのアジズルハスニ・アワン選手、女子スプリントで銅メダルを獲得した香港の李慧詩(レイ・ワンシー)選手もKabutoのヘルメットを使用するなど、その技術は世界でもトップクラスだ。ここでは空気抵抗への影響が大きいヘルメットについてKabutoの開発者大田浩嗣さん、企画広報担当の阿久津丈さんに話を聞いてみた。

梶原選手の銀メダル獲得を支えた、トラックレース向けの秘密兵器

オムニアム女子で銀メダルに輝いた梶原悠未選手 PHOTO:望月秀太郎/アフロ

トラック競技の日本代表チームには、東京五輪に向けて開発されたスペシャルモデルが用意されていた。AERO-SP5とAERO-SP4だ。

この両モデルは2016年のリオ五輪終了後に開発がスタート。日本代表チームからのオーダーは、「とにかく空力性能のよいヘルメットを」というものだった――と大田さんは振り返る。

日本自転車競技連盟のハイパフォーマンスセンター サイエンスチームと共同で風洞実験、CFD解析などを行った

コンピューター上で行うCFD解析や風洞実験などを経て、ヘルメットの後端の長さや形をミリ単位で変更するなど40種類近いパターンをテスト。最終的にコンピューター上のシミュレーションでトラックレースのラストスパートを想定した時速70kmで走った場合、リオ使用モデルと今回のSP-5の比較で最も性能差が出たポジションでは約5%出力低減されていることになる。

「選手の体格や姿勢により大きく変動はしますが、ヘルメットが受ける空気抵抗は空気抵抗全体の10%程度。機材の中では空気抵抗に与える影響もかなり大きいので、ヘルメットの空力性能を高めることはエアロという観点からは非常に重要です。しかし、空力性能はヘルメットだけでなく、ライディングフォームやウエア、バイクやホイールなどトータルで決まります。弊社のCFD解析はそのあたりもふまえて行っていて、体型やライディングフォームが異なるあらゆる選手が理想の空力性能を得られるように形状を煮詰めていきました」と大田さん。

作り方も通常のロードバイク向けのヘルメットのようなアウターシェルと衝撃吸収ライナーを金型で一体成形するインモールド製法ではなく、オートバイのヘルメットのように衝撃吸収ライナーをあらかじめ作っておいてアウターシェル内に接着する製法をとった。こうすることで形の異なる複数のヘルメットをスピーディに生産し、トライアンドエラーを重ねやすい体制をとったのだ。これはオートバイのヘルメットも製造するKabutoだからできた技だ。

それでも日本代表チームからは「勝つために最も空力性能の良いヘルメットを使わせたい」と言われていたという。JISS(国立スポーツ科学センター)の風洞実験施設だけでなく、自転車専用の風洞があるイギリスで風洞実験を行って、海外製品より空力性能に優れていることを証明。競争に勝ち抜いて日本代表が使うヘルメットの座を射止めた。これがAERO-SP5だ。ヘルメットを試した選手からは「このヘルメットをかぶるとペダルが軽く感じる」「このヘルメットなら勝てる気がする」という感想が届いたという。

このAERO-SP5と同時に開発されていたのが、AERO-SP4。AERO-SP5と比べると後頭部の長さが短いなど少し形状が異なるが、大田さんによると選手の体形やポジションにより合う合わないがあるので、それに合わせて2タイプあるという。

「アイウエアの代わりに使えて空力性能をさらに高めるシールド(風防)も共通で、どちらのモデルもマグネットで簡単に着脱できるようになっています。レンズの濃度も選手の要望に合わせて3種類ほど用意しました」

Kabutoのサポートを受ける自転車トラック種目の日本代表選手たちは両方のヘルメットを試し、女子オムニアムに出場した梶原悠未選手はAERO-SP5をかぶってレースに挑み、見事銀メダルを獲得した。東京パラリンピックでも杉浦佳子選手が女子ロードレースタイムトライアルで日本人史上最年長の50歳での金メダルを獲得したが、彼女がかぶったのもAERO-SP5だった。

パラリンピック自転車競技、女子個人ロードタイムトライアル(C1~3)で優勝した杉浦佳子選手。(楽天ソシオビジネス)女子ロードレースでも勝利し2冠を達成した PHOTO:SportsPressJP/アフロ

一方、AERO-SP4は男子ケイリンで銀メダルを獲得したマレーシアのアジズルハスニ・アワン選手、そして女子スプリントで銅メダルを獲得した香港の李慧詩選手が使用した。

男子ケイリンでは日本代表の脇本雄大選手(写真左)、新田祐大選手がAERO-SP5、そしてマレーシアのアジズルハスニ・アワン選手がAERO-SP4(写真右)を使用した

アジア人にフィットするのがKabutoのヘルメットの強み

トラックレースでKabutoのサポートを受け、メダルを獲得したのはすべてアジア人だ。これは偶然ではなく、必然だったと言える。その理由は、Kabutoが日本人をはじめとするアジア人にジャストフィットするヘルメットを作り続けてきたからだ。

アジア人は、欧米人に比べて頭の横幅が広く、頭周が真円に近い傾向にある。一方欧米人は頭の縦幅が広く、頭周が楕円形に近いという違いがある。

「Kabutoのヘルメットは頭周形状が真円に近く、日本人を含むアジア人向けのアジアンフィットを実現しています。Kabutoのヘルメットのアジア人にジャストフィットするという特徴は、日本やアジアのマーケットでの強みになっています」

と阿久津さん。

さらに大田さんは次のように補足する。

「欧米人向けに作られることの多い海外ブランドのヘルメットは、同じサイズでも横幅が狭いので、ヘルメット単体で見ると前面投影面積が少なくて空気抵抗が減らせそうに感じます。しかし、アジア人にはフィットしにくく、設計者の意図どおりのかぶり方ができないため、本来の空力性能を発揮できません。Kabutoのヘルメットはアジア人がかぶることを前提として作っているので、意図どおりの空力性能やかぶり心地を期待できるのです」

 

AERO-SP5

東京五輪に向けて開発され、日本のトラック種目の代表選手が使ったAERO-SP5。リオ五輪の時のヘルメットと比べてテール(ヘルメット後端)が短くなっているのが特徴。これはどの角度からも空気抵抗を減らし、下を向いたときにヘルメット後端が空気抵抗を生むのを防ぐための形だ。参考重量:320g(XS/S)、26g(シールド)

※現在は生産の都合で廃番扱いになっているが、次回生産に向けて準備中。

AERO-SP4

価格:4万6200円

現在市販されているもうひとつのスペシャルモデルAERO-SP4。AERO-SP5と比べて後頭部がやや短めなのが特徴だ。

SPEC

カラー:カーボン
サイズ:XS/S、S/M、L/XL
参考重量:370g(XS/S)、26g(ARS-4シールド)
日本自転車競技連盟公認

ロードレースでは増田選手がオリンピック限定モデルを使用

オリンピック男子個人ロードレースではイザナギをかぶり84位で完走を果たした増田成幸選手 代表撮影/ロイター/アフロ

2020年東京五輪では、自転車競技のロードレースやトラック競技の選手たちはKabutoのヘルメットを使用した。ロードレース男子では、増田成幸選手がフラグシップモデルのIZANAGI(イザナギ)、新城幸也選手がエアロモデルのAERO-R1CVを使っていた。

増田選手が使ったIZANAGIは、東京五輪に向け開発されたKabutoのフラグシップモデル。レーシング系のハイエンドクラス3モデルの特徴を高い次元で融合しているのが特長だ。1つめは通気性を極めたZENARD(ゼナード)の冷却性能、2つめは超軽量モデルFLAIR(フレアー)の軽さ、そしてAERO-R1の空力性能だ。

CFD解析結果を用いた吸排気イメージ

真夏の高温・多湿という過酷な条件下で行われることが予想された五輪の自転車ロードレースを想定し、最高の空冷性能を発揮できるよう、ライナーと頭の間に空気の通り道を作るフローティング機構を搭載しているのが特徴のひとつ。※CFD 解析結果を用いた吸排気イメージ

「開発時には風洞実験で人間の体温に近い温度まで暖めた人体模型に風を流して人頭模型へ温度センサーを取り付け温度変化の可視化をし、空冷効果を高めていきました」

と開発担当の大田さん。

ちなみに増田選手が五輪当日にかぶったのは、登竜門の故事にちなんだ鯉の滝登りをモチーフにした「昇鯉(しょうり)」というスペシャルデザインが施されたモデル。数量限定で市販されるようなので、欲しい人は早めに手に入れることをオススメする。

新城選手はAERO-R1CVでエアロ効果に期待!?

オリンピック男子個人ロードレースでは特別カラーのAERO-R1CVをかぶり35位で完走を果たした新城幸也選手 PHOTO:望月秀太郎/アフロ

一方、新城選手AERO-R1CVを使用。Kabutoのロード系ヘルメットの中では最高の空力性能を備えたモデルだが、エアロヘルメットとしては通気性も高いのが特長だ。

CVとはオーバーシェルのことで、使うシーンや天候などに合わせて簡単に着脱することもできる。

「オーバーシェルを付けない状態でも、空力性能はほかのロード系ヘルメットより高いことが弊社の風洞実験で明らかになっている」

と阿久津さん。

新城選手はレース当日はオーバーシェルを付けずに走っていた。これは高温・多湿の条件下で行われるレース中も、オーバーヒートを防ぐために通気性を確保しながら、AERO-R1シリーズの持つ空力性能の高さを生かそうという意図があったと思われる。

ロードレースの代表選手2人がそれぞれ違うモデルを選んだように、KabutoのヘルメットはIZANAGIのようなオールラウンドモデルだけでなく、AERO-R1シリーズのような個性が際立つモデルもある。さらに日本人をはじめとするアジア人の頭の形に合わせた形状になっており、多くの日本人サイクリストにジャストフィットしてストレスなくかぶれるというのも日本ブランド・Kabutoの強みだ。

IZANAGI SHORI(イザナギ ショウリ)

価格:3万8500円

Kabutoのサイクル用ヘルメットのフラグシップモデル・IZANAGIにスペシャルペイントを施した限定モデルIZANAGI SHORI。登竜門の故事にちなみ、鯉が滝を登る様子が描かれている。ボトル付きの限定モデルとして数量限定で市販される。

SPEC

2021年9月中旬発売予定
※販売は一部店舗のみ、詳しくはお問合せください。
カラー:SHORI
サイズ:XS/S、S/M、L
参考重量:210g(XS/S)
特典付属品:SHORIボトル(昇鯉、非売品)
日本自転車競技連盟公認

AERO-R1CV

価格:2万5300円

写真は市販モデル。新城選手が被ったSHORIは選手限定モデル

圧倒的な空力性能だけでなく通気性も兼ね備えたAERO-R1にオーバーシェルを装着したAERO-R1CV。CVとはカバーのこと。オーバーシェルは使う用途や状況に合わせて簡単に着脱が可能、新城選手は五輪には外した状態で挑んだ。

 

SPEC

カラー:G-1 レッド、G-1マットブルー、G-1イエロー、G-1マットブラック、G-1グリーン、G-1オレンジ、パールホワイト、マットブラック
サイズ:XS/S、S/M、L/XL
参考重量:195g(XS/S)
付属品:AR-3シールド(ライトスモーク)、A.Iネット、フロントスペーサー
日本自転車競技連盟公認

話をうかがった人

オンライン取材に応じていただいた2人。株式会社オージーケーカブトの大田浩嗣さん(右)と阿久津丈さん(左)

株式会社オージーケーカブト・大田浩嗣さん
開発部技術開発課所属。東京五輪で自転車トラック競技の日本代表選手たちが使ったAERO-SP5や、アジアのメダリストが使用したAERO-SP4の開発に風洞実験・CFD解析メインで携わった。

株式会社オージーケーカブト・阿久津丈さん
企画・広報課所属。Kabutoの製品のPRを担当。

 

問:オージーケーカブト
https://www.ogkkabuto.co.jp/

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Bicycle Club編集部

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