PINARELLO・DOGMA F【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2021年09月13日
歴代ドグマ史上最高レベルの軽快さ!
切れ味を増したスプリント力と登坂力
ドグマFでしか体験できない究極のバランス
F8、F10、F12とモデルナンバーを重ねてきた近年のドグマ。ニューモデルはF14が必然と思いきや、意表を突くようにシンプルにドグマF。まるで歴代のドグマの集大成とも受け取れる新型は、どのようなライドフィーリングに仕上がり、われわれアマチュアレーサーにどのような世界観を見せてくれるのだろうか。
ドグマFはわずか2年という短い期間で各セクションがアップデートされた。全体的にシャープな設計に生まれ変わり、チタン素材を3Dプリンターで製造して軽量化するなど独自の手法で究極のバランスを突き詰めている。ディスクブレーキモデルで6.9kgと、フラッグシップモデルをテストするには申し分のない軽さだ。
まずはケイデンスを90回転程度にキープしつつ加速していくと、すべてのパワーを受け止めるかのような力強さと重厚感、そしてフォークをはじめとするフロント剛性に支えられた安心のステアリング性能を感じ取れた。たびたび各メディア等でドグマらしさと言われるゆえんだろう。
このドグマらしさは、正直ドグマF12からきちんと継承されている印象であり、大きな違いを感じられるわけではない。ところが、サドルから腰を上げてダンシングで加速した瞬間に決定的な違いが出てきた。とにかくバイクの振りが軽く、踏み込んだあとの加速性能の鋭さは、歴代ドグマのひとつ上のレベルに達している。振りの軽いバイクは細身で軽量なクライミングバイクにありがちな特性だが、ドグマFの軽さは重量面だけでないオールラウンダーとしての性能の上に成立している。開発にあたり、究極のバランスを掲げた新型は、歴代モデルと変わらずオールラウンダーである軸をぶらすことなく、フレームセットのトータル重量で265gもの軽量化をフレーム以外の部分で実現してみせた。それは歴代ドグマの持つ優れた運動特性をスポイルしないため、そして安全性を重視するためでもある。
これまで高速ダウンヒル、タイトなコーナリング、時速40kmを超える高速巡航といった歴代ドグマが得意としてきたシーンに、ドグマFは軽快な運動性能によって、バイクの左右の動きが求められるスプリントやダンシングといったシーンもプラスにしてきた印象だ。
まるで日本刀のようにシャープな運動性能を手に入れたことで、ペダルの入力からリアホイールが路面を捉えるトラクションまでのパワー伝達性能もよりクリアになり、加速が鋭くなり素直に気持ちがいい。われわれよりも出力が200〜300Wも高いトッププロ以上に、アマチュアサイクリストには新型ドグマFが手にしたシャープな軽快な運動性能の恩恵は大きいはずだ。決して、ヒルクライムシーンに限った話ではない。むしろ、高速域でのスプリントやアタックといったシーンこそ、オールラウンダーとしての高い安定性の上に成り立つドグマFの性能が生かされるはずだ。そのひとつの答えは、過去最高レベルに過酷と評された先の東京2020五輪ロードレースで出された。新型ドグマFに乗ったリチャル・カラパスが証明してくれた。
フレームセットで93万5000円は、高価ではあるが、ドグマF12Xライトモデルより価格は抑えている。なお、ドグマFにはXライトモデルの展開はない。誰もが憧れを抱くドグマはこの「F」に集約された。そして、歴代ドグマの上をいく切れ味の鋭い痛快な運動性能を実現する究極のバランスは、新型ドグマFでのみ感じられる世界観だ。その究極の世界を手にするためなら、清水の舞台から飛び降りても後悔はしないだけの価値はあるだろう。そう感じた今回の新型ドグマFのテストライドだった。
SPECIFICATION
PINARELLO/DOGMA F DISK
価格:93万5000円(フレームセット)
■フレーム素材:トレカ T1100G 1Kドリームカーボン withナノテクノロジー
■フォーク:オンダフォーク ドグマF withフォークフラップ
■ボトムブラケット:イタリアン
■最大タイヤ幅:28Cサイズ
■カラー:プルトニウムフラッシュ、イルプションレッド、ブラックオンブラック
■ディスクフレーム重量:868g(サイズ530 塗装前)
■専用オプション:モスト・タロンウルトラファスト インテグレーテッドハンドル
■試乗車重量:6.9kg(サイズ500・ペダルレス)
GEOMETRY
問:ピナレロジャパン www.pinarello.jp
ハシケンのロードバイクエクスプローラーの記事はコチラから。
SHARE