BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

グラベルにも世界選手権、そのルール「海賊の掟」を解説|竹下佳映のグラベルの世界

ロードの世界選手権が注目されているが、じつはアメリカにはグラベルレースにも世界選手権がある。非公式ながら毎年グラベルの世界選手権にあたる「グラベルワールド」がアメリカで開催されてきた。さらにホットな話題としてUCIが2022年に国際自転車連合(UCI)公認グラベルレースシリーズとUCI公認グラベル世界選手権を開催するというニュースもあり、まさに今後のグラベルがどういう展開になるのか気になるところ。
この元祖世界選手権ともいえる「グラベルワールド」について、2016年に世界チャンピオンに輝いた竹下佳映さんがレポート。ちょっと変わったグラベルのレギュレーション、「海賊の掟(つまりルール)」についてお伝えする。

グラベルワールド=グラベル世界選手権

150マイル総合優勝の表彰台に上がるジョン・ボーステルマンとローレン・デクレシェンゾ。ジャージと剣に注目。(PHOTO:Kae)

先日の投稿でお話しした、コロラド州での「SBT GRVL (エス・ビー・ティー・グラベル)」というグラベル大会の翌週末に、ネブラスカ州の州都リンカーンで行われたグラベルワールドのレポートです。

前回の記事はこちら

北米・コロラドで注目のグラベルイベント「SBT GRVL」を竹下佳映がレポート

北米・コロラドで注目のグラベルイベント「SBT GRVL」を竹下佳映がレポート

2021年09月11日

直訳すると、グラベル世界選手権になります。グラベルには競技連盟のような統括組織が絡んでいないので、ロード、トラック、MTBのような、公式の世界選手権ではありません。大会の名前は冗談で始まったのであろう、非公式のグラベル世界選手権です。

主催者が海賊自転車協会、だから海賊の掟?

2016年のコース地図(PHOTO:Gravel Worlds)

主催者はパイレーツ・サイクリング・リーグ(海賊自転車協会)という地元の自転車グループです。元々、自転車競技連盟のルールばかりでがんじがらめになりたくない、コースマーシャルも賞金もなしで、自由にレースをして自転車を楽しみたい。そして思う存分走り終わったら皆でビールで乾杯しよう!と言う仲間たちが集まってできたグループで、2010年に一回目のグラベルワールドの開催となりました。

ナビゲーションはキューシートのみ、サポート皆無で、チェックポイント設置もされないので、全行程走破した証明として使われたのは、途中で立ち寄る小さな町の古びた商店で購入する宝くじだったりと、手作り感と創作性にあふれるグラスルーツ(草の根)な大会です。

以前宝くじを買った店。今でもオアシスとしてコース上にある。(PHOTO:Kae)

私が初めて参加したのは2015年でした。その年は宝くじチケットがまだチェックポイント代わりに使われていて、私も最初「えっ?」と驚いたのを覚えています。

私は2016年に女子総合優勝し、グラベルワールドのチャンピオンジャージを獲得しました。非公式とは言え世界選手権なので(笑)、アルカンシエルに似せた5色のストライプが入ったジャージが授与されます。

ストライプの色の順番は違いますし、パイレーツ・サイクリング・リーグのロゴも入っているオリジナルデザインで、ユーモアに溢れています。

2016のチャンピオンジャージとトロフィー。グラベルでは創作性に溢れるモノをよく見る。(PHOTO:Kae)

余談ですが、2017年になんとUCI本部がパイレーツ・サイクリング・リーグに連絡を入れ、ストライプ使用を止めさせるというハプニングがありました。その頃はまさか誰も予期していなかった出来事です。チャンピオンジャージは今も続いているのですが、写真にもある私が獲得した2016年ジャージが、ストライプの入った最後のジャージデザインとなりました。貴重なコレクションです。

前日のグループライド中、ビンテージカテゴリーに出場する友人スティーブ(アイオワ・ウィンド&ロックの主催者)を発見。”Hi, Steve!” (PHOTO:Kae)

海賊の掟

2021年は、300マイルの優勝者には海賊船の舵が、150マイルの総合優勝者には海賊船の船長の剣が、トロフィーとして男女それぞれに贈られる。(PHOTO:JLS Photo LLC www.jls-photo.com)

規制無しで自由を求めて……から始まった大会も、毎年参加人数が激増するにつれ管理しないといけない部分も出てきました。それでも基本的な決めごとは変わりません。海賊の掟(つまりルール)を紹介します。

掟その1

クールじゃない言動をしない。

(例)ボランティアに声を上げたり、関係者や他の競技者に汚い言葉を吐いたり、セルフサポートのモットーに反しコース上に水や補給食を隠したり、他。完走結果や表彰も取り消される。

掟その2

上記の掟その1を破ると、翌年の「出航許可」は下りない。(参加登録を拒否される)

掟その3

ヘルメットを着用する。

掟その4

ゴミのポイ捨てをしない。

掟その5

自己責任で航海の計画を立てる。どの距離のコースであれ、無事に航海を行う準備をして、万一船を放棄する(未完走で途中棄権)必要がある場合に備えて計画を立てるのは、各々の参加者の責任である。(←誰も助けに来ないので)

掟その6

各チェックポイントで、参加者の番号がボランティアによって確認・記録されていることを確かめること。

(※2021年からは圧倒的に増えた参加者数のため、人による番号確認はせず、タイミングマット使用となりました)

掟その7

自転車には常に前方の白ライトと、後方の赤ライトを付けていること。開始時にはまだ真っ暗で、完走が日没後になるかもしれない。

掟その8

参加者・関係者全員が「グラベル・ファミリー」だ。他のライダーを励まし、困っている人がいたら助け、レースを楽しみ、そして創立者・主催者のシュミティさんにハグをすること。

(※ハグは、握手やお辞儀でない、抱き合うスキンシップの挨拶)

掟その9

外部からのサポートは受けられない。チェックポイントと、オアシス(あらかじめ主催者側で水を用意している場所)での補給は可能。それぞれの場所を航海地図上で確認するのは自己責任。

2021年は女性パネリストとして参加

今年から始まった女性パネル。(PHOTO:McColgan Photography www.mccolganphoto.com)

2021年は私にとって5回目の参加でした。

今年新しく導入されたのは、選手パネル。女性選手パネルには8名がパネリストとして参加し、私も招待頂きました。非常に光栄です!

グラベル・ロード・MTBで活躍する女性選手のほか、自転車専門弁護士や、ハンドメイド・カスタム・ホイール会社経営者(彼女らももちろんレースをします!)がステージに集合。司会はチャンピオンシステムUSAの女性スタッフが務めました。ちなみに日本でもオーダーウエアで人気のチャンピオンシステムの米国支社は、大会会場のあるリンカーン市にあります。

質問形式のパネルは、視聴者へ伝えることもたくさんありますが、パネリスト同士お互い学ぶことも多く、充実した時間を過ごしました。聴きに来てくれた方々からの反応も非常によかったです。

150マイルのスタートは早朝6時から

さて、レース距離は150マイル(約242km)で、カテゴリーもたくさんあります。総合優勝、年齢枠別、シングルスピード、タンデム、ビンテージ、ファットバイク。そのうち一輪車カテゴリーも出てくるかもしれません!? そして300マイル(約483km)のLong Voyage(長い航海)コースも今年から登場しました。その他、75マイル(約121km)コースや、初心者や長距離はまだちょっと……という人向けに50kmコースもあります。

アメリカチャンピオンから世界記録保持者のアシュトン・ランビーまで、豪華な顔ぶれ

75マイルのスタートは朝7時。リラックスした雰囲気で和気あいあい。(PHOTO:Matt Pearson)

私はケガからの完全回復はまだだったので、前の週に引き続き、短い75マイルコースでパーティペースで楽しむことにしました。メインコースは150マイルですが、75マイルコースもなかなか豪華な顔ぶれです。

会話の弾むリラックスペースで楽しむ。途中にあったオアシスで、クリスティーナとアシュトンと。(PHOTO:Garmin)

特記したいのは、翌週にロードのステージレースを控えた現全米ロードチャンピオンのローレン・スティーブンズ。つい数日前に、4000メートルのトラック・個人パシュートの世界新記録3分59秒930を叩き出してメキシコから帰米したばかりのアシュトン・ランビー。トラック種目で全米チャンピオン11回、世界選手権でメダリスト3回、パンアメリカンゲームで金メダル3回獲得、MITからの博士号も取得しているクリスティーナ・バーチ。特にアシュトンはグラベルサポーターと知られています。普段は一緒にスタートラインに立つことのないさまざまな背景とレベルのライダーたちが、同じコースを同時に走れる……これはグラベルならではですね。

よくあるコース風景。(PHOTO: JLS Photo LLC www.jls-photo.com)

私は最初の1時間は先頭集団にくっついて行き、その後はリラックス。途中ボーイスカウトがテーブルを広げて水やスナックを売っているのを見かけたので止まって買い物したり、オアシス休憩所で立ち止まってボランティアと世間話したり、他のライダーを励ましたり、ナビゲーションやメカトラで困っているライダーを助けたりと、楽しく過ごしました。

例年ならあまりの暑さに「蒸発散」が見られる!

グループライド中に道路整備が行われているのを目撃。これ、地面の砂利が緩むため、じつは結構迷惑、苦笑。(PHOTO:Kae)

ネブラスカ州の愛称「コーンハスカー州」(トウモロコシの皮をむく人)の通り、トウモロコシ畑が延々と広がる風景が見られます。夏の蒸し暑さは凄まじく、早朝はトウモロコシ畑からの立ち上る「蒸発散」、蒸気が目で確認できる程の湿度です。

例年レース日はひどく暑く、私も初めて経験したグラベルワールドでは、呼気の熱さに「まるで口から火を噴いているようだ」を思ったのを鮮明に覚えています。空気はねっとりと肌にまとわりつき、楽なはずの追い風区間は風が全く感じられず逆に暑過ぎて死にそうになる、というのが常です。今年は当日の低めの気温、まさかの快適な自転車日和に誰もが驚かされました。グラベルはどこの場所も非常にいい状態で、若干緩いところもありましたが、テクニカルな部分はあまりありませんでした。

チェックポイントの横に設置された、写真スポット。(PHOTO:Gravel Worlds)

主催者が「リンカーンのグラベル海の波」と例えるような、コースの多くで見られる波打つアップダウンでは多くの参加者が苦戦したのではないかと思います。今年のコースは、リンカーンの北に位置するボヘミアン・アルプスと呼ばれる特に起伏のある丘が多い地帯に敷かれました。(※元々チェコからの移民が多く、故郷を思い起こさせる丘のある風景から)

左上からホイール会社経営者のベニー、ABUSチームメイトのクリスティー、私、2021年アンバウンド・グラベルとSBT GRVLで優勝したローレン・デクレシェンゾ。(PHOTO:Matt Pearson)

私が所属するABUSチームでは、150マイルでジョン・ボーステルマンが2連覇・男子総合優勝、リンジー・スティーブンソンが女子総合3位と、いい成績が出た日となりました。今回も数多くのグラベル仲間と会うことができて、私個人としても最高の週末となりました。グラベル・ファミリーに乾杯!

毎年規模も大きくなり成長し続けているけれど、当初のグラスルーツさを失わないグラベルワールド。いつまでもアットホームなグラベル・ファミリーであってほしいです。

追記)この記事を書いている最中に、UCIが2022年にUCI公認グラベルレースシリーズとUCI公認グラベル世界選手権を行うと言うニュースが飛び込んできたので、今後のグラベルがどういう展開になるのか気になるところです。

バイクセットアップ内容

前日のエキスポ、長年愛用しているパナレーサーのテントで一枚。「明日はこれで行きます!」 (PHOTO:Panaracer)

フレーム:Kona, Sutra ULTD, steel
ホイール:Industry Nine, Trail 270, aluminum alloy(スポークとハブの色はカスタムオーダー)
タイヤ:Panracer Driver Pro 29 × 2.2 in
コンポーネント:SRAM Force 11スピード
ナビ:Garmin Edge 1030

竹下佳映

北海道出身。19歳でパイロットを目指し渡米した。現在はシカゴで仕事をしながら、2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に惹かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。アブス・プログラベルチ―ム所属 https://www.facebook.com/kae.takeshita/

インスタグラム
https://www.instagram.com/kae_tkst/

 

 

SHARE

PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

No more pages to load