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3Dプリンターで自転車パーツを作る【革命を起こしたいと君は言う……】

スチールバイクの限界に挑む今野製作所「CHERUBIM(ケルビム)」のマスタービルダー、今野真一の手稿。今回は自転車の設計に関するお話。

急がばまわれ

輪界は空前の材料不足に悩まされている。ケルビムでもコンポーネント入荷などがやはり遅れているが、フレーム材料に関していえば、いまのところほとんどが予定どおり入荷している。以前から国内生産での物作りを進めてきた結果とも思われる。

ラグをひとつ製作依頼する場合、昨今ロストワックス製品はコスト的にもアジア諸国など海外に依頼するのが常だ。

物作りの共通言語「図面」を電子メールで送り、見積り納期を確認して発注をかける。

打ち合わせはメールを多用する。必要な場合は出向くこともあるが、ごく稀だ。台湾、中国は日本で生産するよりも値段も納期も早く、このような海外生産が一般的になっている。

しかし、いい物作りには生のコミュニケーションが不可欠と考えている。

コミュニケーションは、品質、デザイン、納期、トラブルが起きたときなど、すべてにおいて必須といえる。

何度も生産国へ足を運べるなら可能だが結果、時間もお金もロスが増える。なのでコストのために、この部分を切り取ってしまう傾向となる。

国内で生産するのであれば、多少高くても、このもっとも大事な部分に時間をかけられる。私の場合、ただそれだけの理由から国内で製作しているにすぎない。

もっと簡単に言えば、「近いから」だ。それが、今回の材料不足時にも功を奏し、納期も品質も守られる結果になるとは考えてはいなかったが。また、顔を見て付き合っている業者からは、ほとんど不良品は入ってこない、ということも付け加えたい。

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効率化で失った曲線

昨今のITの躍進はご周知のとおりで、コミュニケーションの意義も変わろうとしている。

自転車作りの世界も例外ではない。図面はCADソフトの進歩で、半日レクチャーを受ければ簡単な3D図面が書けてしまう。

効率という意味では格段に上がったように見える。しかし昨今の造形物を見ていると、迫力に欠けたものが多いのに気づく。結論から言えば、コンピューターで設計しているからにほかならない。

パイプとパイプをつなぐ面は、無数の曲線から成り立っている。コンピューターの場合、好みのアールをていねいに指定して面と面をつないでいく。とうてい手書きでは書けないような統制のとれた面ができあがる。

さらには、その図面を切削マシンが読み込み、人間技では不可能な美しい曲面を作り出していく。

しかしこれは理論上の話だ。実際にできた物たちは、なんとも無機質な造形になってしまう。

なぜかといえば、人間の目は眼球のみで見ているのではなく、頭で認識しているからという話になる。みなさんも古いディレイラーと最新のデザインを見くらべればわかるはず。難しいデザイン論の話ではない(そこは、また別の機会に触れるとしよう)。

私の造形スキルは実際に物を「触って」「削って」「光を見て」培ってきた。今も変わらない。

理論的に説明しようのない無限の曲線たちがつながり、プロポーションを作り上げていく。人が手作業で作った造形は人に訴えかけるものをもっている。

そしてこの作業はコンピューターが介入していなかった時代ではあたりまえだった。もっとも大事だと思うこの作業が現代ではみごとにぽっかりと空洞化している。

もっとも大事な部分を切り取り、作業の効率化を実現したと勘違いしてしまっているようにも思われる。過ぎたるはなお及ばざるが如し。果たして失われた曲線は取り戻せるだろうか。

CADとの付き合い方

私もCADを駆使している。今はコンピューターなしでは、いい自転車は作れないと思うし、利便性も十分に理解しているつもりだ。しかし、以前のやり方に戻そうにも、手作業での金型製作は業者が首を縦にふるわけはないので、しかたがない。

でもあきらめない。現在、若手スタッフと新しい製品を開発中だ。新しい試みとしてCADで作ったものを3Dプリンターで出力し、手作業で造形の直しをする。このプロセスを何度も繰り返し、最終的に非接触センサーでスキャンしデータ化して行く。あまりの作業の多さに、われわれは何をやっているのか?という気分になる。

コンピューター、電子メール、スマホ、流通。世のなかはどんどん進化し効率化が進んでいるようにも見えるが、ラグひとつとってみても、私の仕事は逆に格段に増え、やり難くなった。

隣町工場のオッサンと絵を描きながら説明して作っていた時代がいちばん効率がよかったんだが。

3Dプリンターで出力し、修正したい部分を手作業で削り、直す。この繰り返し

 

Cherubim Master Builder
今野真一

東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)

 

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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