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今野義「三連勝」の真実、フレーム製作秘話をケルビム今野真一が語る

工房に残された貴重なオリジナルフレーム部材を使って、ついに限定再生産される三連勝ロードフレーム。三連勝を生んだ今野義が目指したレーサーとはなんだったのか? 日本のスポーツ車の礎を築いた今野家のブランドを継承する今野真一が三連勝フレームの秘密を語る。そして三連勝を託す、義の思いとは?

三連勝らしさを体現するこだわりのパーツ

3ポイントのラグ

完成した3ポイントラグを使用した三連勝ロードフレーム。カラーは有名な滝澤ブルーだ。このくらいの角度、もしくは真横から見ると、ふつうのイタリアンカットに見える

今回限定フレームとして再生産される三連勝。ある意味もっとも三連勝らしさを体現したこのロードフレーム、その最大のポイントとなるのが、工房に10セット残っていたオリジナルのラグだ。
今野義の好みは、パリッとした乗り心地と見ためで、それを実現するのが日工産業のプレスラグだ。ラグとしては、もっとも肉薄なタイプといえる。

このラグは、NSL3ポイントラグと呼ばれるもので、ヒゲと呼ばれる頂点が3つあり、ラグの下部は開く形状になる。フレームにしたときに、ラグの下部分は応力がかかり、ヒビなどが入りやすい場所だ。イタリアンカットのヒゲが下に延びるように作ると、ここが壊れやすく、ケルビムでは下は丸く加工して補強している。

3ポイントラグは、応力がかかるところにラグがないという逆転のデザインで、特徴的なフォルムなだけでなく、理にかなっている。かつフレームにすると横から見るかぎりふつうのイタリアンカットに見える。この優れたラグデザインは、ケルビムでもまねしようと考えている。

義の提案により日工産業はレーザーカッターを導入、3ポイントに加工された。ラグをレーザーカットするのは、世界最初の試みだったという。ただしこのラグは、フレームとしての生産性はあまりよくない。センターを出し直したり、削り断面を整えたりと手直しが大変だ。手間をかければ、フレームとしては理想だが、やがてラグが、より製作に便利なロストワックス化していくなかで、使われなくなった経緯がある。

義は高価なレーザーカッターを導入させてしまった日工産業に対してちょっと負い目を感じているらしい。日工産業の名前が出てくることがあったら、謝っておいてくれとのことなので、この場を借りておわびしたい。ただし、肉薄なふくらみのラグのフォルムはとても美しいと思う。

日工産業製の3ポイントラグ。レーザーカットされ、下部が開く構造になっている。油圧バルジ成型されたラグは極限まで薄い。ロストワックス製法のラグだと、ここまでシャープなフォルムは再現できない

後の定番となったクラウン

フォークのクラウンは、三連勝タイプと呼ばれるものだ。義が台湾のラグメーカー、ロンシェンに作らせたもののひとつ。今でもスタンダードなクラウンとして使われている。当時の金型が今でも生きているということだ。というのも義は、メーカーに対して、後はメーカーでも自由に使っていいから金型代はタダにしてくれという契約をしていたからだ。このクラウンは、エアロなフォルムも美しい。それだけでなく、火のまわりが弱くなりがちなところは、薄くしてあったり、またロウがまわりにくいところには、窓が開けてあるなど、製作面でも非常に優れている。
今回のフレームでは、これにカイセイのエアロブレードを使った仕様のフォークとしている。三連勝定番のスタイルといえる。

こちらも三連勝タイプとして今も残るエアロタイプのクラウン。エアロなフォルムと製作のしやすさを両立したデザインだ
完成したフォーク。刀のようなフォルムに3RENSHOの文字が力強い
カイセイのエアロブレードとこのクラウンは、今でもエアロフォークならコレという定番の組み合わせ。今も生きる三連勝の遺産だ

 

三連勝の傑作最強を誇ったロードエンド

傑作ロードエンド

完成した三連勝フレームに付くオリジナルのロードエンド。クロモリ時代における、国産ロードエンドのひとつの完成形といえる

今回のフレームのもうひとつの目玉が三連勝のロードエンドだ。「CYCデザイン」として、フレーム材をビルダーに売る商売の先駆者でもあった義。このロードエンドもビルダーたちに売る気満々で作った自信作で、けっこう売れたのでエンドの形で残っている現存数は少ない。
駆動の伝達、変速のサポート、体重とホイールを支えるエンドは、フレームの要だ。NSEスーパーエンドは、落車などトラブルに見舞われてもレースを継続できる「壊れないエンド」として開発された。
チェーンステーが、35mmも押し込まれる強靭なエンドだ。ただし上部はスリット式になっており、フレームサイズに合わせて自由に製作できる。ハブのあたり面は7mm、調整ネジのスペースは10mあり、またディレイラーのブラケットは15mmもある。ここからの破損はまず考えられない。
またホイールが入りやすいホイールガイドシステムを備えている。レーサーだった義らしいアイデアといえる。

3RENSHOのロゴは右エンドのみにある。楕円形に盛り上がった中に刻印されており、その部分を削ってしまえば、ほかのメーカーでも気兼ねなく使えるという気の利いた配慮までなされている。

反対側から見たエンド部。ホイールがスムーズに入るガイドがあるのがわかる
当時のカタログにある、ホイールガイドシステムの説明。①シャフトをガイドに ②そのままスライド ③エンドにポン と解説してある
工房に残された最後のロードエンド。不良品などを除くと本当にあと10セットしかない
この楕円部分を削れば三連勝以外のブランドでも使える

集合ステー

強さと美しさを備えたエアロタイプの集合ステー、三連勝らしいフォルムのひとつ

三連勝のフレームに多いエアロタイプの集合ステー。その理由を先日義に聞くと「チネリに決まってるだろ」という回答だった。俺が好きとかそういうんじゃなくて、俺たち東京オリンピック世代は、自転車といえばチネリしかないんだ、ということだ。チネリを追い求めた義の好みがよく出ている部分だと思う。初期からエアロタイプのシート部材を作り、ロードモデルに多く使用している。
構造的には、集合ステーは縦に剛性が強い。一方、松葉を使いシートステーが横に張り出したフレームよりも、後ろ三角はしなやかな傾向になる。レースで滑るような感覚でコーナリングできるということだ。剛性バランスを考慮してシートステーはエアロでかつ太いパイプが多く使われた。


集合ステーを作るシート部の部材。比較的初期から作られていた
大量のパイプがストックされている工房の地下室。10台分のフレーム部材を準備する今野真一
当時の三連勝ステッカー。これにアルカンシェルを加えたものが基本セットとなる。これを忠実に復元する

 

創業者、今野義が三連勝のレガシーを残したいと伝えた

パイプミックス

三連勝は、基本的には日本製パイプでしか製作されなかった。それは義が「得体の知れない外国製パイプなんて、信用ならねえ」と思っていたからだ。
とくに、石渡製作所との関係は深く、石渡パイプを好んで使った。当時は、タイプセットが022ならそれで1本を作るというのが、ユーザーやビルダーにも常識だった。それを乗り手の体重や乗り方に応じて、セットをばらし、パイプミックスとしてフレームを作ったのも先駆的だったといえる。

オーダーに合わせて1セットずつそろえられ、製作を待つ三連勝フレームの部材

ダウンチューブは022、トップチューブは019などとパイプを個別に選んでベストの剛性を生む。これは「スーパーストロングミックス」と呼ばれ、シートチューブに貼られた赤い像のマークが証だ。
今回のフレームも、石渡製作所の後継となるカイセイのパイプをミックスさせることでスーパーストロングミックスを提供する。

スーパーストロングミックスのデカール。強さを表現したゾウのマークがどことなくキュートだ。乗る人の体重や乗り方に応じた、カイセイパイプのミックスにより製作される
彫刻機でかたどるための原板。今回新たなオーダーのために製作した。フレームには三連勝刻印のステムとシートポストが付属する
原板にある文字をなぞってパーツに刻印を施す彫刻機

滝澤ブルー

三連勝らしいフレームカラーとして、滝澤ブルーがある。鮮やかなターコイズが入ったようなメタリックのスカイブルーだ。「しみったれた色が嫌い」という義も好きなカラーだった。カタログでも多くのバイクがこのブルーをまとっている。
じつは、この色は義が大学を卒業した後勤めた丸石自転車の純正カラーのひとつだ。退社後も丸石自転車とは関係が深く、当初三連勝のカラーは、丸石自転車で塗装された。塗装代がとても安かったという背景もある。三連勝の廉価なモデルは、丸石自転車が作っていた。後には、競輪用のフレームなどは上村塗装がペイントした。滝澤ブルーと注文を出すだけで、この色が仕上がってくる。
もうひとつ有名な色にパープルがある。こちらも滝澤が乗った時期があり、滝澤パープルと呼ばれることもあったようだが、67期の荒川玄太という選手が愛用したカラーとして有名だ。

今回の限定モデルのカラーは5色展開。三連勝のカタログにあったなかから選んだ。左上/ブルー。もっとも有名な滝澤ブルー 右上/パープル。こちらもちょっと知られた荒川玄太パープル 左下/グレーメタリック。アーバンなモノトーンを求める人に 中央下/レッド。赤の依頼も多い、このメタリックの入った赤はケルビムレッドとも呼んでいる 右下/ピンク。遊び心あるオトナにぜひ乗ってもらいたい

義の個性が生きる三連勝

今野義。横で製作しているのは当時のチーフビルダー、牧野政彦。義は監督&プロデューサーであり、腕利きのビルダーたちが生産を支えた

三連勝は歴代、腕利きのビルダーたちが入れ替わり作った。それでも完成したレーシングバイクは、必ずいい意味で今野義という強烈な個性が反映された自転車となった。高い技術力の職人たちをともない自分の理想をかたち作るのに長けていた義。大げさな例えかもしれないが、ある意味スティーブ・ジョブズ的だったといえる。

「三連勝という名前を残してくれるなら残してくれ。今野がやってた自転車だなと、誰かが見てわかってくれたらそれでけっこう。それ以外はなにもいらない」と叔父は私に言った。

同じ工房から2つのブランドが生まれることに自問自答する日もある。しかし考えてみれば、ケルビム同様どちらも私の立ち上げたブランドではない。だが製作のなかでもっとも大事なことは創業者の思想や理念をどこまで継承できるかであり、その私のスタンスはこれからも決して変わらない。叔父の義はいまだに私と対話しながら生きた言葉やインスピレーションを与え続ける。残された貴重な時間と考えている。

なにより義が血のつながる職人、今野真一に三連勝のレガシーを残したいと伝えてくれたことが、最大の原動力となっている。

今野真一

ケルビムを製作する今野製作所マスタービルダー。創業者、今野仁の長男で、日本の自転車史に名を残す自転車一家、今野家のスピリットを唯一継ぐ存在。三連勝の今野義は仁の弟で真一にとって義は叔父にあたる。

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