CERVELO・R5 DISC【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2021年12月14日
INDEX
サイクルジャーナリスト・ハシケンによる100kmインプレッション連載。今月は、カナディアンブランドのサーヴェロから誕生した新型R5ディスクをインプレッション。東京2020やブエルタでも活躍した大注目モデルを細部にいたるまで紹介する。
再び軽さに磨きをかけたRシリーズ最高傑作
栄枯盛衰の激しいグランツールレースにおいて、いつの時代もインパクトのある勝利とともにサーヴェロは第一線で輝きを放ってきた。カルロス・サストレによるツール制覇、サーヴェロ・テストチーム時代にはアルカンシェルを獲得。1995年に創業した新興ブランドにもかかわらず、2000年代初頭にはすでに世界トップブランドへと駆け上がった。そして、近年はブエルタ3連覇を果たしたプリモシュ・ログリッチの活躍など、高性能カナディアンブランドの存在感は健在だ。
空力研究をはじめとする高い開発力を生かし、ライディングの目的やスタイル別に6つのランナップを明確にしたバイクを作り出す。そのなかにあって、クラシックロードと呼ばれ山岳向きの軽量モデルをコンセプトにするRシリーズは、これまでも数々の名車を送り出してきた。その最新モデルが今回のR5ディスクだ。
前作から4年を経て発表された第4世代は、近年のエアロスタイルを取り入れながらリムブレーキ時代に究極の軽さを形にしたRシリーズへ回帰するかのように、フレームの方向性を再定義した。王道クラシックロードからピュアクライミングバイクへの進化だ。
今月は、サーヴェロファン待望の軽量クライミングマシンの実力を、詳細なテクノロジー解説とインプレッションでお届けする。
TECHNOLOGY
時代時代で先進的なテクノローを駆使し、歴史に残る名車を生み出してきたサーヴェロ。
オールラウンダーからピュアクライマーへの再定義が図られた新生R5ディスクのテクノロジーを明らかにする
ピュアクライマーへと軽さ&剛性の最適化を果たす
新型R5ディスクは、前作の第三世代をベースに2019年から開発が始まった。軽量山岳モデルのR5ではあるが、前作では軽量化は実施されず、空力性能と剛性の向上を主眼に置いた開発だった。ところが、その後プロチームからは、より軽量化の声があがり、さらに数週間にわたるグランツールを戦うレーサーからはフォークエンドの剛性過多も指摘された。それらのフィードバックをエンジニアたちは受け取り、今回の新型はピュアクライミングバイクへと生まれ変わった。
フレーム重量は51サイズで前作の800gから695gへ。56サイズでは130gもの軽量化(前作比16%削減)を達成。また、ヘッドチューブ剛性を最適化し、快適性も向上させている。
今回スタックとリーチのジオメトリーは変更せず、従来のR5としての特性は継承しピュアクライマーとしてのポジションを突き詰めた。
いっぽう、エアロケーブルマネージメントを採用しケーブルの空気抵抗を減らした結果、空力性能も25gの抵抗値を削減。さらに独自のスクオーバルマックス形状のダウンチューブの位置を下げてフロントタイヤとの距離を縮め、かつタイヤクリアランスを拡張エアロフローを改善。ピュアクライマーとして進化しつつ、結果的に空力性能も前作から向上させることに成功し、総合力で大きな進化をとげている。
01 Rシリーズの命題を推進。フレーム単体130gの軽量化
02 フレーム剛性を再設計しコントロール性能を追求
03 完全内装を果たしたエアロコクピット
04 ハンドルの高さ調整幅を確保。セッティングの自由度が向上
05 代名詞の極細シートステー。シートチューブ集合部も改良
06 ハンガー幅79mmの左右非対称BBライトを継承
100km IMPRESSION
ユンボ・ヴィスマのメインバイクとして、すでにブエルタの頂点を極めた新生R5。
ピュアクライミングモデルとして開発されたというその実力を、
山岳を含めた多様なシチュエーションで乗り込みながらインプレッションしてみた。
高い推進力を生む剛性バランスはピュアクライマー復権の証
マスプロメーカーが市場を独占するなかで、昔と変わらず至高のカナディアンレーサーをひいきしたい気持ちは強い。各社エアロロード全盛の時代においても、サーヴェロのSシリーズは、やはり圧倒的な個性とともに存在している。
軽量モデルのRシリーズはどうか。今から10数年前は、どこも軽量化こそ正義の時代があった。その当時、675gというクライマー垂涎の超軽量モデルを生み出し、軽量化開発競争をリードしたモデルこそR5caだった。しかし、近年のR5の開発には手詰まり感が否めなかった。もともと軽量モデルとして刷り込まれたRシリーズに空力や剛性向上を目指されても個人的に食指は動かなかった。だからこそ、今回の新型R5のピュアクライマーへの進化は興奮を覚えた。やはりRシリーズはこうでなくては!
前置きが少々長くなったが、新型R5ディスクは実測重量も軽く、その走りも生粋のクライマーらしい世界観がしっかりと表現されていた。ペダルレスで6.79kgに収まる。ディスクブレーキ時代において、フレームセットで1kgを目指しただけあり、クライミングモデルにふさわしい実測重量だ。
前作比で200g程度の軽量化ではあるが、その走りはクライマー好みに仕上がっている印象だ。
ペダリングは、クランクの比較的高い位置から加重していくと、下死点へと抜け切る前に、大きく推進力へと変換されて前方へ押し出される。ひと踏みごとに加速感を得られるため、脚の調子がよく感じるほどポジティブにパワーをかけ続けやすい。
サドルから軽く腰を浮かして、バイクの挙動を確認してみる。ある程度の重量があるエアロロード系モデルはいい意味で落ち着きがあり、ダンシングでバイクを振っても安定性が失われることなく扱いやすい傾向にある。いっぽう、超軽量モデルはヘッド剛性が高すぎたり、逆にBB剛性が高すぎたりすると、バイクの挙動がぎこちなくなってしまう。その点、新型R5の挙動は無理にバランスを取ろうとせずともしっかりと軸を感じながらダンシングを楽しめた。しかもシャキシャキしており軽快性が高い。
1時間ほどしてバイクと身体がなじんだところで、7〜8%勾配の登坂区間を使ってクライミングへと向かった。そして、上り出してすぐにリズミカルなダンシングが全身に伝わってくるのだった。0時から最大トルクまでの入力がスムーズで、踏み込みと連動させてハンドルの押し引きでリズムをとれば、推進力が増幅される。
これはBB剛性がマイルドに調整されて踏みやすくなったからではない。実際、BB剛性は前作から変化はないとの情報がある。BB自体の剛性フィールは、芯が通ったカッチリとした印象があり、しなやかなどという表現は最適ではない。あくまで重量剛性比の高いスパルタンな味付けのピュアクライマースタイルだ。
ではどこからこの登坂時の気持ちいい推進力は生み出されるのか。それはサーヴェロ開発陣が語っているヘッドチューブ剛性とBB剛性のバランスのベストな比率に理由があると推測できる。R5はヘッド剛性をややマイルド傾向にコントロールしたことで、バランスのとれたフレーム剛性を実現できていると言える。高速での下り区間も、軽さを感じさせないビシッとラインをトレースできる高いコントロール性を確認できた。
今回、さすがはRシリーズ、とうなずきたくなるピュアクライマーとしての進化を感じることができた。現在いくつか存在する超軽量ディスクブレーキモデルのなかに割って入ってくるモデルだ。
ケーブルがフル内装化され、スクオーバルマックス形状のエアロチューブを採用したたたずまいは、エレガントであり、軽さだけを優先した超軽量モデルとは一線を画す存在感も魅力だ。プライスはやや高値ではあるが、それだけの価値を感じる2021年の締めにふさわしい晩秋ライドだった。
SPECIFICATION
CERVELO・R5 DISC
価格:シマノ・デュラエースDi2 R9270 完成車 159万5000円
スラム・レッドEタップAXS 完成車 165万円
シマノ・アルテグラ Di2 R8170 完成車 118万8000円
スラム・フォースEタップ AXS 完成車 115万5000円
フレームセット 69万3000円(ハンドル、ステム、シートポスト付属)
■フレーム:カーボン(電動変速/無線変速専用)
■フォーク:サーヴェーロ オールカーボン R5フォーク
■サイズ:48、51、54、56
■フレーム重量:695g(51サイズ)、フォーク重量:325g(51サイズ)
■試乗車重量:6.79kg(サイズ54)ペダルレス本誌実測
■カラー:ファイブブラック、ライムブラック(ライムブラックは、フォース完成車とアルテグラ完成車のみ)
※写真の完成車コンポーネントは、R9170搭載モデルであり、完成車販売仕様最新型 R9270とは異なります
GEOMETRY
問:東商会 www.eastwood.co.jp
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