明治大学の渡部春雅が悔しさをバネに掴んだシクロクロス女王、3つ目の全日本タイトル
Bicycle Club編集部
- 2021年12月17日
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12月11日から12日の2日間にかけて、茨城県土浦市で第27回全日本自転車競技選手権大会シクロクロスが開催。大会2日目となる12日は、年代別およびエリートカテゴリーのレースが展開された。
女子エリートでは渡部春雅(明治大学)と福田咲絵(AX cyclocross team)が最終周回までマッチレースを展開するなか、コース後半にある泥セクションでの福田のミスを見逃さなかった渡部が福田を振り切り、全日本シクロクロスにおけるエリートカテゴリー初優勝、そして今年3つ目の全日本タイトルを獲得した。
10月に行われた全日本選手権ロードではジュニアカテゴリの開催が見送られたため、早生まれの渡部は全日本選手権ロードに参加することができなかったが、それ以外で出場した3つの全日本選手権(MTB-XCO ジュニア、トラック-チームパシュート、シクロクロス)すべてで優勝と、渡部にとってこれまで以上にマルチな活躍を見せたシーズンとなった。
ここではレースを振り返ると同時にトップ3選手のコメントを紹介。現在のインカレナンバー1の実力をもつ渡部春雅、いっぽう慶應大学出身で就職を経てレースへ復帰した元インカレ女王の福田咲絵、さらに日本体育大学で学びながらMTB XCO選手としても活動する矢吹優夏(B.B.Q)3名に話を聞いた。
スタートから3名の選手が抜け出す
プレビューで注目選手として挙げた赤松 綾(AYA BIKES)が前日の試走で落車してしまい、欠場となるなど、エントリーから2名少ない28名の選手がスタートラインにつく。
スタートライン1列目には福田咲絵(AX cyclocross team)や渡部春雅(明治大学)、松本璃奈(RIDE MASHUN SPECIALIZED)ら、今シーズンのJCXシリーズで活躍する選手たちが並ぶ。
13時00分にレースがスタートすると、川崎路子(PAXPROJECT)がイン側から鋭く伸びてホールショットを獲得。しかし、舗装路に出てフィニッシュ地点を通過する時点では渡部が先頭に立ち、すぐにレースをリードしていく。
芝生エリアを抜けて陸上競技場に先頭が姿を見せると、この時点で先頭パックは渡部、福田、矢吹優夏(B.B.Q)の3人に。
松本や後方スタートだった小林あか里(信州大学)はこの時点で優勝争いから脱落してしまう。
福田がコース奥のセクションで転倒し、渡部が先行
2周目には矢吹も渡部、福田から遅れてしまい、レースは渡部、福田のマッチレースに。
能登シクロクロスでもそうだったように、後半までは2人のパックでレースが進むかと思われた3周目、福田が表彰式エリアの芝生区間で転倒し、渡部が単独先頭に。福田は矢吹にも抜かれ、3位まで転落。
渡部と福田は実力が拮抗しているだけに、一度遅れると追い付くのは難しいか、レースは決まってしまったかと思われた。
福田が我慢の走りで渡部に追い付き、レースは振り出しに
渡部が単独でレースをリードするなか、福田もあきらめずに前を追う。
福田のプレッシャーもあってか渡部も小さなミスが出ると、福田が徐々に差をつめていく。
そして4周目に福田が渡部に追い付き、レースは振り出しに戻る。
最終周回の泥セクションで勝負が決する
渡部と福田の2名のパックのまま周回数が徐々に減っていき、最終周回を知らせる鐘が鳴っても状況は変わらず。
2人ともロードレースを得意としていただけに脚質は似ており、テクニックにもそこまで大きな差はないと思われていたため、このままフィニッシュ前の舗装路でスプリントかと思われた矢先、コース奥の泥セクションで福田が遅れ、渡部との差が広がっていく。
渡部が今シーズン3つ目の全日本タイトルを獲得
渡部は陸上競技場にあるキャンバーセクションもミスなくこなし、陸上競技場脇の芝生エリアを通過していく。
福田も後ろから懸命に追いかけるが、その差は埋まらない。
フィニッシュ前の舗装路に渡部が姿を現すと、渡部は後ろを振り返る。
福田がそう遠くは離れていないことを確認すると渡部はダンシングでスプリントを開始。
そのまま福田を振り切った渡部はフィニッシュライン上で会心のガッツポーズを見せ、MTB-XCO(ジュニアカテゴリ)、トラック-チームパシュートに続く、今シーズン3つ目の全日本タイトルを獲得した。
トップ3選手に聞いたコメント
優勝 渡部春雅
「最高にうれしいです!」と、筆者が取材するなかで過去一番に喜びを爆発させる渡部。
「(MTB-XCO(ジュニアカテゴリ)、トラック-チームパシュートに続く、今シーズン3つ目の全日本タイトル獲得について)今シーズンはロードがジュニアは全日本がなかったのでちょっと残念でしたが、その分他の種目でタイトルを獲得しようと思っていました。この大会に向けて練習に協力してくれた方々がたくさんいたので、皆さんに恩返しができたかなと思います」と、この大会に向けて練習に協力してくれた周囲へ感謝を示す。
「お互いに自分が得意な部分でアタックし、自分が苦手なセクションでは相手よりも前に出ることを意識していました。前戦の能登シクロクロスでは福田選手にガンガンいかれてしまったので、今日は最初からガンガンいこうと思っていて、そのとおりに走ることができて良かったです。泥セクションではお互いラインが違って、あそこで差がつくか、つかなければスプリントかなと思って走っていたところで、最終周回に泥セクションで差がついたので、そのまま先行しました」と、レース前からの狙いどおりに走ることができた渡部。
「能登では悔しい思いをしたので、その悔しさをバネに今回は優勝することができました」と、前回の悔しさをバネに渡部は見事全日本を制すこととなった。
2位 福田咲絵
涙を流しながら開口一番に「悔しいです」と答える福田。
「優勝だけを目指して走っていたので負けて悔しいですが、9月から乗り始めて、やれることはやってきたなかで今日のスタートラインに立って全力を出し切れたので、渡部選手のほうが今日は強かったです。またリベンジしたいと思います」と勝者を称える福田。
福田は「毎周回泥セクションで離され、その後追いつくという展開を繰り返していたんですが、最終周回だけは追い付くことができませんでした。最後まで前を追ったんですが、追いきれませんでした」とレースを振り返る。
「(序盤での落車からの復帰については)今シーズン徐々に走れるようになってきたという自信があったので落ち着いて走ることができましたし、レース前から多くの方に応援のメッセージをもらったり、今日も多くの観客の方々に応援してもらい、その気持ちもあったので焦らず頑張りました」と、応援の力があったから復帰できたと福田は教えてくれた。
「今シーズン復帰して、開幕戦では全然走れなかったところからここまで力をつけることができたのは、渡部選手や(今日は不在だった)石田選手といったライバルの存在があったからこそで、すごく感謝してます。来年は必ずリベンジしたいと思います」と、福田は来年へのリベンジを誓った。
3位 矢吹優夏
「スタートが決まって前の3人のパックに入ることができたのは良かったんですが、コーナーの立ち上がりなどで前の2名についていくとができなかったが反省点です」とレースを振り返る矢吹。
「今シーズンからシクロクロスを初めて、最初は自分がどのレベルにいるのかわからなかったんですが、全日本で3位に入ることができ自信がついたので、来年は優勝できればいいなと思います」と来シーズンへの抱負を語った。
第27回 シクロクロス全日本選手権大会
日時: 2021年12月11〜12日
開催地: 茨城県土浦市にあるりんりんポート土浦/川口運動公園
JCF公式WEBサイト
https://jcf.or.jp
AJOCC WEBサイト
https://www.cyclocross.jp
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