BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

地中海の楽園、マヨルカ島へ! コンタドールも参加したグランフォンドをレポート

アメリカで活動するグラベル界の第一人者、竹下佳映さんが地中海西部のバレアレス海に浮かぶ自転車パラダイス、スペインのマヨルカ島へ! グラベルバイクとともに観光を楽しんだり、約8000人が参加する大規模なグランフォンド「Mallorca 312(マヨルカ312)」にも参戦した。

いざ、マヨルカ島へ!
ロードとグラベル、どちらのバイクで行こうか?

マヨルカ島といえばヨーロッパのサイクリング観光スポットとしては常に上位に挙がり、レースシーズン前には世界のトップチームの多くがトレーニングキャンプを行う場所でもあります。

ロードサイクリングの楽園だから持っていくのももちろんロードバイクで、と初めは思っていたのですが、よくよく考えてみると、最後に私がロードバイクに乗ったのが2021年春で、その年はその1度きり。2019、2020年も、それぞれの年に5回ずつ乗ったかしら? と言うほどロードバイクが自宅地下室で埃をかぶっている状況なのです。

グラベルバイクでどこでも走っているのだから、今回だってグラベルバイクでいいじゃないか。一番乗り慣れているし、ロードタイヤを履かせればいいだけのこと、ということに落ち着き、今季から乗っているLaufのグラベルレースバイクと共にスペインへ!

青丸は自宅のある米国シカゴ。目的地は、スペイン・マヨルカ! Photo:Kae

寒春のシカゴから暖かいスペインへ!

自宅のすぐ近くにあるシカゴ・オヘア空港はアメリカの主要空港なので、ヨーロッパまでは直行です。マヨルカは島なので、ロンドン・ヒースロー空港で乗り換えしました。満席とは程遠く、エコノミー席だったのですが両脇に誰も座っていないため、3席独占で180度横になって寝ながら長い飛行時間を過ごしました。冷たい雨続きのシカゴの4月と違って(特に今年は春が寒いこと!)、地中海気候の春はとっても過ごしやすそうです。

ロンドン・ヒースロー空港空港内で見かけた、怪しげな内装のレストラン。Photo:Kae

ロードタイヤってこんなに細かったっけ?

普段はリーフサスペンションフォークの付いたLauf True Gritでグラベルを走っていますが、今回ロードなのでサスなしフォークのグラベルモデル、Lauf Anywhereにロード・チューブレスタイヤを装備。いつもは、舗装走行でもパナレーサー・グラベルキングかグラベルキングSSの32cや35cで走っているので、ロードタイヤがとても細く見えて正直なところ若干心もとなさを覚えました。「えっ、これ大丈夫?(笑)」まぁ、すぐに慣れるでしょう。

私のグラベルセットアップはフロントシングル。栓抜き完備、笑 Photo:Kae

非日常を味わえる、静かな市街地のライドを楽しむ

滞在中の初めに宿泊したアルクディアの旧市街地は監視塔がいくつもある城壁に囲まれていました。道も細くて車は進入禁止です。荷解きしてちょっと落ち着いてから、友人と3人で2時間ほどのライドへ。

翌朝は、早めにスペイン入りしていた友人と違って、時差ボケでかなり早起きしてしまったので、一人で徒歩散策に出かけました。日の出る前はあまりに静かでびっくり。日が昇ってからでもまだまだ静か。ちょうど旅行ピークシーズンの間なので、観光客が少ないのかな?と思いましたが、日中になればサイクリストで溢れていました。

アメリカではまず見ることのない雰囲気を醸し出す、スペインの町。Photo:Kae
14世紀に造られた市壁。この中の旧市街地で数日宿泊。Photo:Kae
のんびりな気分になる田舎風景が広がる。年中穏やかな気候は農産物を育てるのにも適している。Photo:Kae
この写真のような黄色の花畑のほか、さまざまな色で彩られた花畑があったし、オレンジの木もたくさん生えていた。Photo:Kae
ロードライドをしていたのに、なぜか結局たどり着いてしまうグラベルロード。切っても切れない仲なのか。Photo:Kae
昼寝するブタ家族。子ブタがかわいすぎる……。Photo:Kae
スペインではカトリック教が圧倒的に多い。カトリック礼拝堂をのぞいてみたら、その大きさと素晴らしさにビックリ。Photo:Kae
後日週末にもう一度来たら、サイクリストでびっしりだった。Photo:Kae

ドライバーの紳士な対応に感動

毎日見たことのないような素晴らしい風景や街並みに圧倒されたのはもちろんです。同じくらい印象的だったのが、モータリスト(=車を運転する人)のサイクリストへの接し方・対応がアメリカとは雲泥の差だったことです。

残念なことに、アメリカでの公道を走る自転車乗りの安全性は低く、交通事故のニュースは絶えません。私自身も2017年春、トレーニング中にピックアップトラックに衝突されケガをしました。モータリストから暴言を吐かれたり、車体に触れるのではないかと思うほど故意に寄せられたり、アクセルを吹かして排気ガスを掛けられたり……。無意味に心臓が飛び出るような勢いでクラクションを鳴らされたりといったハラスメントも、アメリカ国内ではどこに行っても耳にします。
もちろんすべての人がそうだというわけではありませんが、自転車乗りが同じ「人間」ではなく、邪魔な「モノ」として扱われたりと、命が軽視されているように感じることも多くあります。または故意でなくとも、モータリストへの十分な教育がないので、自転車を追い越す際のスピードや自転車との距離が安全圏外だったり、注意不足が原因の事故もあります。だから私たちにとってはグラベルロードを走るほうが安全だし楽しいのです。

自転車観光が売りのマヨルカでは、公式サイクリングルートがいくつもあり、自転車の標識もあちこちに見かける。Photo:Kae

それが打って変わって、ここマヨルカでのロードライドは1日目からポジティブな経験でした。あんなにライダーがいて、観光地エリアはクルマも多いのに、みんなスイスイ走るし、身の危険を感じなかったのに驚きました。交通量が多く混雑した場所では、乗りながら写真を撮る余裕がなかったため、私の写真を見る限りではサイクリストが他にいないように見えますが、こんなに自転車乗りがいるのかと思うほどライダーで溢れていました。特に週末の街中のカフェではスパンデックスの装いの人が半数。こんなにロードが楽しいと思ったのは久々です。

人気のベスト・クライムスポット、サ・カロブラへ

マヨルカでは最も、そして世界的にも有名な、Sa Calobra(サ・カロブラ)。Photo:Kae

マヨルカでの有名サイクリングスポットの大半を走った中で一番のお気に入りは、サ・カロブラと呼ばれる上り。マヨルカで最高のクライムというだけでなく、世界中のベスト・クライムの一つ、と見聞きすることも珍しくないほど有名で、26つものヘアピンコーナー、270度のカーブもある、カテゴリー1クライムです。このクライムに挑戦するには、まず一番下まで下らないといけません。下りが始まる地点に行くには、メジャーなクライムを経ていかなければならないのですが(選択肢は、始める場所によりいくつかある)、私はコル・デ・フェメニアのカテゴリー2クライム、そしてマヨルカ島最高峰プイグ・マジョール山を上って行きました。

蛇のようにクネクネとした道が眼下にずっと続くのを見て、私の友人がサ・カロブラを「コブラ」と呼んでいる理由がよく分かりました。

26ものヘアピンターンがある、サ・カロブラ。Photo:Kae
マヨルカの山は石灰岩でできている。断崖の迫力がすごい。Photo:Kae

途中、スキンスーツに身を包んだすらっとした若いライダーがさっそうと走り抜けていくのを見かけました。何と彼、パニアバッグ2つと、数リットルはあるだろう水の入った容器を自転車後部にくくりつけて走っています。

後ろから追いついてきたスクーターに乗った女性が、横並びになったと思ったら、私と同じ走行スピードで走り続けました。満面の笑みを浮かべながら、ずっとスペイン語で話しかけてきます。時折足を回してペダルをこぐ仕草をして、私の顔を見ては、何やらとても楽しそうでした。なんて言ってたんだろう。次に来るときには、会話くらいできるようになっていたいな、と強く思いました。

別の日に、フォルメントール岬に向かうのにカテゴリー4クライムを走っている最中に小型飛行機を見かけました。すぐに思い浮かんだのは映画「紅の豚」。確かお話の舞台がイタリアの向こう側のイベリア海で、ここバレアレス海も地中海だから、きっと似たような雰囲気なのかな、と。

空が青くて、バレアレス海も真っ青!Photo:Kae

あのコンタドールも参加! グランフォンド「マヨルカ312」

マヨルカを去る直前に、ヨーロッパ本場のグランフォンドに参加してきました。大会名はMallorca 312(マヨルカ312)。参加登録者数はなんと、驚きの8000人。大規模なグラベル大会で1000~3000人、世界最大と呼ばれるベリールーベで4000人強は経験しましたが、8000人とは! アルベルト・コンタドール、イヴァン・バッソ、ミゲル・インドゥラインを始めとする有名ゲストも参加します。

火と悪魔は、マヨルカの民間伝承の重要な要素だそうです。Photo:Mallorca 312

距離は3種類ありますが、私が参加したのは一番長い312kmです。前半は山岳地帯で、後半は平地といういいミックス。312kmコースの制限時間は14時間で、各チェックポイントで時間を過ぎてしまったら、短いコースに送られるようです(他に167㎞と225km)。そしてスイーパーのバスに抜かれたらそこで終了。

生粋のロードバイクに比べれば、重量や空力の面で若干不利なグラベルバイクですが、全然気にはなりませんでした。自分がロードバイクで走っていない、という事実すら忘れていました。マヨルカ312がスペイン行きの第一目的だったわけではなく、あくまでトレーニングの一部ととらえていたので、この日に向けてのテーパリングも皆無の疲労度全開、グリコーゲン貯蔵量も理想よりは低めだったかもしれませんが、最初の5~6時間はかなり調子よかったです。

スタート1時間前でこの人数!

参加者8000人のビッグレース! Photo:Mallorca 312

大会前日の登録者のパケットピックアップは至ってスムーズ。当日開始1時間前に、スタート地点に並びに行ったら、すでに1000人はそこにいたのには面喰らいました。VIP登録をした参加者が先にスタートして、短い距離の参加者がスタートして、それから私たち312kmコース参加者。先頭集団に追いつくのに、30分弱かかりました。それまでは、数えきれない数のライダーを右から左から追い越して、まるでTVゲームの画面を眺めているようでした。やっと先頭に追いつき、ひと息入れます。主要道路の端から端まで目いっぱいに広がった数百人はいるであろう巨大なプロトンの中で走る機会なんて普段はまずありえないので、その時間を大いに楽しみました。緊張感が張りつめている様子もなく、最初のクライムまでは皆リラックスしていました。

コースは完全閉鎖されていて、先頭を行くオートバイやスタンバイ救急車、後方スイープのバス以外の車両はコース上に1台もありません。スイッチバックのカーブで先が見えない下りも安心して走れるし、なんて素晴らしいんでしょう。

気温もかなり上がりましたが、おろしたてのチャンピオンシステムのサマースーツで快適。Photo:Mallorca 312

最高の景色とコース、イベントロゴ入りのしっかりした生地のミュゼットバッグ、高品質で見た目も格好いい大会ジャージ、サポート体制完璧なたくさんある補給地点、完全閉鎖されたコース、これでもかという数のボランティアがコースの至る所にいて、パスタディナー、完走者にはフィニッシャーメダル、3日間続く大規模なエキスポ。これで参加費用100ユーロはお得感満載です。また機会があったら、他のスポーティブイベントにも参加してみたいですね。

イベント中は忙しいだろうから、前後で会えたらいいなー、と思っていたアルベルト・コンタドールを見かけた(!!) 声を掛けたら、快く立ち話にしばらく付き合ってくれた彼。和歌山で走った思い出を楽しそうに話してくれました。Photo:Kae

今年の夏はグラベルざんまいです!

このあとは、カンザス州でアンバウンド・グラベル(旧ダーティ・カンザ)330km、その翌週にはサウスダコタ州でパインアイランド・グラベルオデッセイ(旧ゴールド・ラッシュ)340km、アイスランドでのアドベンチャーレースと夏の予定はグラベルざんまいです。Instagramにもちょこちょこ写真載せますので、ぜひフォロー下さい。今後の連載もお楽しみに。

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベティアとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。
SNS:InstagramFacebook

「竹下佳映のグラベルの世界」一覧<

Info

出典

SHARE

PROFILE

竹下佳映

竹下佳映

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。

竹下佳映の記事一覧

No more pages to load