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女子ロードレースの開催は強制されたもの、発言で注目された自転車界のジェンダー問題

5月13-15日にスペインのバスク地方で開催された、女子ロードレース「イツリア・ウィメン(Itzulia Women)」。與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)も出走し、総合優勝したのは、3日間全てでステージ優勝を飾ったデミ・フォレリング(Demi Vollering: チーム SDワークス )だった。

しかし皮肉にも、このレースの初日に最も注目されることになったのは、レースのオーガナイザーであるバスク自転車組織(Organizaciones Ciclistas de Euskadi、通称OCETA)トップのフリアン・エラスコ(Julian Erasco)氏のとある発言であった。

「女子レースの開催はほとんど強制されたようなもの」と
イツリア・ウィメンのオーガナイザーが発言

エラスコ氏は、イツリア・ウィメンの初日に、ラジオのインタビューに対して、「我々は、このレース(イツリア・ウィメン)は、ほとんど開催を強制されたようなものだと見ている。現在の女子のレースは流行の問題がある。みんな女子スポーツのために何かをしなくていはいけないと言っているし、それは自転車業界でも同様である」と語り、同時に、「願わくは、こうした女子レースの開催が今後強化されて、うまく運営が回るようになり、数年後にはレースをした動機について心配しなくても良いようになってほしいものだ」とも話していた。

このエラスコ氏の発言に対し、まず、バスク地方内から批判の声が上がった。

イツリア・ウィメンの第1ステージのスタート地点でレース前のテープカットを行った、ヴィットリア市長のゴルカ・ウルタラン氏は「エラスコ氏の発言は何らかの間違いであってほしいと思っている。彼の話したようなことはけして受け入れられるようなものではなく、我々が生きている現代的かつ複合的な社会で受容できるような考え方ではない」とコメントを発表した。

また、ギプスコア地方議会は「女子レースの開催は単なる流行の問題ではなく、スポーツにおける男性優位主義に打ち勝つための、フェミニズムからの約束である」と声明を発表した。

また、エラスコ氏の発言はSNSを通じてスペイン国内にとどまらず、国外にまで発信されることになった。

オーガナイザーは声明を発表、エラスコ氏も公式に謝罪

こうした内外の批判に対し、大会主催者であるOCETAはその日の夜に声明を発表。その中で「イツリア・ウィメンの目的は、バスク地方に女子の自転車レースを推進させることにある」と説明した上で、エラスコ氏の発言を公式に謝罪した。

また、エラスコ氏自身も翌日バスク公営放送のインタビューに答える形で、自身の発言に関する過ちを認め、謝罪することとなった。

エラスコ氏の発言の背景にあるものとは

3ステージ全てで優勝し、完璧な形でイツリア・ウィメンの初代総合優勝者となったデミ・フォレリング

では、今回のエラスコ氏の発言の背景にあるものとは、どのようなものであったのだろうか。

スペインの新聞El Españolはエラスコ氏の発言の真意は、「現在の女子レースの多くは、何らかの強制力があった上でオーガナイズされたものであり、スポーツとしての女子の自転車レースの関心の高まりから生まれたものではない。いわば第一に女子の自転車選手をプロとして走らせるためにレースが作られており、男子のレースと同じような重要性を持って作られたものではない」ということであると指摘している。また、同新聞は、「スポーツとしての関心だけでは、現在でもレースオーガナーザ―が女子の自転車レースを作ることはできないだろう」とも言っている。

また、同時にスペインの他紙El Españolは「イツリア・ウィメンのようなレースは女子の自転車レースを推進するのに必要なものである。しかし、自転車レースを開催することで収益を得ているレースオーガナイザーにとっては、いまでも積極的に女子レースを開催することはなかなか難しい。その一方で、社会的あるいは政治的に『女子レースをより多く開催すべし』という流れがある」と指摘している。

このように、レースオーガナイザーとしても、女子レースを積極的に開催したくても、実際には二の足を踏んでしまう理由がある。近年、女子のレースの数が増えてきたとはいえ、まだまだ男子レースに比べるとスポンサーがつきにくく、また集客も難しいため、収益に結びつきにくいという実情がある。そのことが、「スポーツとしての関心だけでは、現在でもレースオーガナーザ―が女子の自転車レースを作ることはできないだろう」というEl Españolの言葉が意味するところである。

つまり、「女子のレースを増やすことは正しいという共通認識はあるが、オーガナイザー側が女子のレースで収益を見込むことはいまだに難しい」というのが、女子レースの現状である。そしてこの現状は、オランダやフランスのような国と比較すると、スペインでは若干強く見られる傾向にある。

今回のエラスコ氏の発言の背景には、UCIが推奨している女子レースの開催について、実際にレースをオーガナイズすることで生計を立てている企業の立場もふくめ、「理想と現実」の違いが明らかになってしまったものということができるだろう。

じつは、このイツリア・ウィメンをオーガナイズしたOCETAは、毎年3月に開催される男子のイツリア・バスクカントリー(Itzulia Basque Country)と7月に開催される男女の1DAY レースであるクラシカ・サンセバスチャン(Clásica San Sebastián)のオーガナイザーでもある。特にクラシカ・サンセバスチャンでは、女子のレースが開催された2年前から男女の優勝者の獲得賞金が同額に設定されていることが1つの特徴となっている(なお、2022年はアムステル・ゴールド・レースも男女の優勝者に同額の賞金を出すことを表明している)。それだけに今回の発言の影響は大きく、注目を集める結果となった。

 

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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