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ワウト会心の個人TT ヴィンゲゴーも好走で初の大会制覇を手中に|ツール・ド・フランス

ツール・ド・フランス2022は現地723日、第20ステージを実施。40.7kmの個人タイムトライアルで争われ、今大会大活躍のワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)が3勝目となるステージ優勝を挙げた。マイヨジョーヌ争いもこのステージで事実上決着となり、個人総合首位のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)がステージ2位の好走。追っていたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)とのタイム差を広げると同時に、自身初めてとなるツール制覇をほぼ手中に収めた。

ヴィンゲゴーを出迎えたワウトが涙

このツールも、ここ数年と同様にパリ到着前日に個人タイムトライアルが組み込まれた。一昨年はポガチャルによる世紀の大逆転が生まれ、昨年はこれまたポガチャルがウイニングライド。そして今年は40.7kmと、グランツールのタイムトライアルステージとしては長距離に設定された。

スタート地ラカペル=マリヴァル、フィニッシュ地ロカマドールともにツール初登場。2つの街を結ぶルートはおおむね平坦ながら、終盤に2つの登坂区間が控える。1つ目は登坂距離1.6kmで平均勾配4.7%、残り2km切ってからやってくる2つ目の上りは1.5kmで平均勾配7.8%。要塞へと上がっていく道は細く、暗い岩壁のトンネルも待ち受ける。これらを上り切れば、フィニッシュまで500m3週間を走り切ろうとする勇者たちが次々とフィニッシュに到着する。

この日はネイサン・ファンホーイドンク(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)が家族の都合により未出走。ヴィンゲゴーやファンアールトのアシストとして力を注いできたが、ここで大会を去ることになった。

©A.S.O. / Pauline Ballet

個人総合の下位の選手から順にコースへ。11番スタートのミッケル・ビョーグ(UAEチームエミレーツ、デンマーク)が5022秒で走って、当面の基準タイムとなる。

41番目にコースへと飛び出した、この種目の世界王者フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)が序盤からビョーグのタイムを上回る勢いで進む。10.4km地点に置かれた第1計測からトップに立ち、22.1km地点の第2計測、32.6km地点の第3計測と一番時計を計測。終盤の登坂区間もしっかりこなして、フィニッシュタイムは4841秒。平均時速50kmを超えるスピードで走破し、主催者予想のトップタイム49分も突破した。

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

ここからしばらくは大きな変動がなく、第1計測ではガンナより速かったフレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス、イギリス)はフィニッシュで50秒遅れ。同じく第1計測でトップタイムを更新したバウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)も徐々にガンナのタイムからは遅れて、フィニッシュは40秒遅れ。

この流れを変えたのは、ファンアールトだった。第1計測からトップタイムを大きく更新すると、その後の計測ポイントもガンナから20秒ほど速く進む。終盤の登坂区間で再び踏み込むと、ガンナを42秒上回る圧巻の一番時計。それからは、個人総合上位の選手たちが続々とスタートを切ったが、ファンアールトに迫る記録は出てこない。

©A.S.O. / Charly Lopez

いよいよやってきた個人総合トップ3の出走。まずは同3位のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)。この種目を得意としているだけあって、序盤からファンアールトと遜色ないタイムで進行。3回の中間計測はいずれも5秒差前後として、最終局面へ。ここで少しペースが落ちて、最終的には32秒遅れ。それでも、ここまで出走した上位選手よりは速く、総合表彰台は決定的に。

最後から2人目は、このステージに逆転をかけたポガチャル。第1計測こそトップタイムを更新したものの、その後少しずつペースを落としてファンアールトとの差は開いていく。大きな遅れこそ免れたものの、フィニッシュタイムは27秒遅れ。トーマスは上回って、この段階で個人総合2位以上は確定的とした。

©A.S.O. / Pauline Ballet

そして最終走者ヴィンゲゴー。イエローに身を包んでスタートを切ると、個人総合トップを守るどころかステージ優勝にも届きそうな勢いで序盤から全開。第1計測からトップに立つと、第2計測、第3計測ともチームメートのファンアールトの記録を更新する。迎えた終盤、下り区間でコーナーをオーバーランしかけてあわやコースアウトのピンチこそあったものの、うまく体勢を立て直して最終局面へ。ステージ優勝の可能性もあったが、残り500mでマイヨジョーヌのキープを確信してスピードダウン。最後は勝利の喜びをかみしめるようにしてフィニッシュラインへと到達した。

©A.S.O. / Pauline Ballet

これにより、ステージ優勝はファンアールトに。急坂も含んだ長距離個人TTを平均スピード50.893kmで走破した。これで今大会3勝目。1勝目(第4ステージ)は逃げ切り、2勝目(第8ステージ)はスプリント、そして今回はタイムトライアルと、昨年と同様に、まったく異なるパターンでの複数勝利に。フィニッシュラインでヴィンゲゴーを出迎えると、人目をはばかることなく涙。自身の勝利以上に、ヴィンゲゴーのツール制覇に感激した様子だった。

©A.S.O. / Charly Lopez

そのヴィンゲゴーも、ステージ2位となって文句なしのマイヨジョーヌ堅守。あと1ステージ残しているが、大会最終日の個人総合争いは行われないことが基本であることから、これでツール2022年大会の個人総合優勝が濃厚となった。走り終わった直後は家族やチームメートと喜びを分かち合い、ポディウムでは改めてマイヨジョーヌを受け取り。翌日は、このジャージをパリへと運ぶのが最大の使命となる。

©A.S.O. / Charly Lopez

世界最大の戦いは、いよいよ最終日。パリ・シャンゼリゼでフィナーレを迎える。スタートからしばしのパレード走行ののち、最後はスプリントで勝者を決める。そして、全選手がフィニッシュラインを通過した瞬間、2022年大会の王者や各賞の受賞者が確定する。

ステージ優勝、マイヨヴェール ワウト・ファンアールト コメント

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

「感動しかない。チームとしてツール・ド・フランスを勝つことがこれほどまで特別なのかと思い知らされている。今日は夢のような1日だ。ヨナス(ヴィンゲゴー)はとても強く、それでいて人間的な魅力もある。特別な3週間を過ごすことができ、チームメートやスタッフに感謝したい。本当に信じられない。

この3週間はとても大変だった。正直疲れている。すべてを尽くしたつもりだ。個人的にも今日は勝ちたかったし、同時にヨナスのマイヨジョーヌも確定させたかった。彼はとてつもなく大きなハートを持っているのだと思う。

とてもハイスピードなタイムトライアルだった。最後2つの上りに向けて、脚を残しておく必要があった。自分のリズムを守ることができたし、技術的にも問題なかった。とてもきれいな街に到達できたし、素晴らしいレースになったよ」

マイヨジョーヌ、マイヨアポワ ヨナス・ヴィンゲゴー コメント

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

「デンマークでの3日間で受けたたくさんの応援がここまで来るモチベーションだった。最高の3日間だったし、信じられない3日間だった。母国からツールをスタートさせられたことは、生涯忘れないだろう。

ツールに勝ったこと、フィニッシュラインに到達したこと、パートナーが待ってくれていたこと、本当に感動的だった。彼女たちはいつも僕のそばに寄り添ってくれているから、この瞬間を共有したいと思っていた。

昨年のツール以降、私は勝利を目指せるレベルにあると分かっていた。ただ、それを実現することは別の話。チャンスを生かせたことは素晴らしいと感じている。自分自身を信じられたことが勝因ではないかと思っている。複雑な状況にはいら立つこともあったけど、そのたびにどうするべきか冷静になって考えていた。実際に失敗したのはパヴェステージだけだと思う。あの日は4、5回バイク交換したからね。

タデイ(ポガチャル)と私は良好な関係にある。互いをリスペクトしあっているし、世界最高のライダーだと思っている。きっと彼は来年、勝つために戻ってくると思う。もちろん私もそのつもりだ。その時はまた勝ちたい。まずはこの勝利を祝いたいね。シャンパングラスで乾杯するよ」

個人総合2位、マイヨブラン タデイ・ポガチャル コメント

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

「結果に対する不満はない。みんなも私とは違うマイヨジョーヌを見たかったのではないかと思う。それも含めて、ツール・ド・フランスは素晴らしいと思っている。全力を尽くしたし、最高のライバルにも恵まれた。来年こそは勝ちたいね。

3週間を通して、細かいミスが多かった。その理由を探っていかないといけない。それらを修正することで進歩していくことができる。一番のミスは、グラノン峠(第11ステージ)。モチベーションが高すぎて自分自身を苦しめてしまった。何より、ユンボ・ヴィスマが強かった。彼らは弱点がなかったし、数人がリタイアしたにも関わらず、それを苦にしていなかった。私たちは大会前から新型コロナウイルスで出場予定の選手を失うなど、不運が多かった。

来年こそは勝ちたい。チャレンジすることは大好きだし、今回の敗戦を力に変えて来年のツールに勝ちたい」

個人総合3位 ゲラント・トーマス コメント

Photo: Syunsuke FUKUMITSU

「このツールで結果を残したいと思っていたし、昨年の悪かった時期から状態は戻せていたから、自信をもって走るべきだと考えていた。今回は最高の戦いができたと思うし、とても楽しかった。ツール出場は12回目で、その中でも特に難しい3週間だったと思う。正直、アルプスをどう走ったかの記憶がないんだ。

何としてもプロトンにしがみつくつもりだったし、総合表彰台が見えてきてとてもうれしい。年齢のことをたびたび言われるけど、それはどう捉えるか人それぞれ。40歳になっても走り続ける選手がいるくらいだし、コミットしている限りは続けることができると思う。大会がスタートしたときと同じ気持ちだし、情熱はまだ自分の中にあるよ」

ツール・ド・フランス2022 第20ステージ結果

ステージ結果

1 ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー) 47’59”Ave. 50.893km
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+0’19”
3 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+0’27”
4 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+0’32”
5 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)+0’42”
6 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード、オランダ)+1’22”
7 マッティア・カッタネオ(クイックステップ・アルファヴィニル、イタリア)+1’25”
8 フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス、イギリス)+1’32”
9 マキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+1’37”
10 ヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)+1’48”

個人総合時間賞(マイヨジョーヌ)

1 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク) 76:33’57”
2 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)+3’34”
3 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+8’13”
4 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+13’56”
5 アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)+16’37”
6 ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック、コロンビア)+17’24”
7 ロマン・バルデ(チーム ディーエスエム、フランス)+19’02”
8 ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)+19’12”
9 アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム、カザフスタン)+23’47”
10 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+25’43”

ポイント賞(マイヨヴェール)

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)

山岳賞(マイヨアポワ)

ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)

ヤングライダー賞(マイヨブラン)

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)

チーム総合時間賞

イネオス・グレナディアーズ 230:07’04”

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ツール・ド・フランス2022の出場チーム・選手リストとコースプレビュー

ツール・ド・フランス2022の出場チーム・選手リストとコースプレビュー

2022年07月01日

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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