話題の雑誌付録『サイクル&キャンプTOOLS』のアルミソロテーブル、そのデザイン秘話|BCG vol.4
木村 信一 a.k.a.キムシン
- 2022年09月07日
バイシクルクラブ&レジスタントによる開発企画、BCG(BICYCLE CAMP GEAR)。9月13日に発売される自転車雑誌バイシクルクラブ10月号増刊「サイクル&キャンプTOOLS」の付録づくりに挑戦するも、開発・デザインは一筋縄ではいかなかった。 INDEX
自転車で行くキャンプに適したテーブルとは?
私、木村信一が個人的にもっとも使用率が高いのは「Cascade Wild(カスケードワイルド)」のウルトラライトテーブルだ。
バイクパッキングに求めるテーブルは軽量コンパクトである事は当然だけど、あまりにも小さいと用を成さない。最低限のクッカーとカトラリーがテーブルに置ければ、あとは地面に直置きする物が大半なので、展開時の天板面積はA4サイズほどがベストサイズだろう。
そして、収納時はA4の縦1/2に収まる事が肝心。このサイズなら自転車の各所にくくり付けられる。板状の特性を生かして芯材的に使い、パッキングの剛性アップにもなる。
わずか63gで組み立ても簡単! しかし、手持ちのものはプラダン製のために、アルコールストーブやアツアツのスキレットなどを直に置けないのがネック。
もし熱に強いアルミ製ミニテーブルがあったなら……
Cascade Wildは耐熱性が問題なだけ。それならばアルミ製のCascade Wildみたいな物が作れれば、それが理想的だろう。
興味が湧いた物はとりあえず作ってみるという個人的な研究レベルの話として、アルミ板にスリットを入れて組み立てるテーブルを厚紙で試作してみた。
できればヒンジを使って折りたたみ式にしたかったけど加工工程が飛躍的に増えてしまう。
板材をプレスで抜くだけというシンプルな製法ならば製造コストも抑えられるだろうという考えもあった。
天板の固定方法に若干の改良が必要と感じるものの厚紙で作った物にしては耐荷重もそこそこ有り、この構造で製品化できそうな感触を得た。
試しにアルミ板で試作を作ろうかと思っていた頃に編集部ニッシーさんから次のバイシクルクラブ別冊ムックの付録でアルミソロテーブルを検討していると耳にする……。
コストやパテントなど簡単にはいかないぞー!
付録にかけられる予算は想像以上に少なく、イチから開発していたらコストが合わない。だから出来合いの物にネームを入れたノベルティーのような物になりがち。それは自分がやりたい物作りではないので、付録で作るアルミソロテーブルは別の物として考えていた。
しかし、断続的にニッシーさんから入る付録テーブルの進捗は混迷を極め期限内に形にする事が困難と思える状況だった。
迷走する理由は、世にある便利なテーブルの構造はパテントを取得してあるので模倣できない。違う物を作ろうと試みても機能的な問題が発生し、それを解消しようと手を加える程にこじれていくパターン。
メーカーがメーカーたるゆえんは製造技術もさることながら、独自性を貫ける開発力の差が大きい。これを一回コッキリの付録が覆すことなんて土台無理な話。
……なんだけど、もう進行している企画に「やっぱりできませんでした!」とは言えない。
どうする?
木村が開発中のテーブルを付録に? そのスペックやいかに?
黙って傍観しているわけにもいかず木村が開発中だったテーブルを付録に使ってはどうか?とバイシクルクラブ編集部のニッシーこと西山さんに提案した。
本当はじっくり開発したかったけど、まずは付録でデビューして、さらなるブラッシュアップをしてBCGの製品にするのもアリなんじゃないか?とか、先の事を話し合ってもみたが、今はこの困難な状況から抜け出すことが先決だ。
行けば分かるさ!
幸い単純な加工で作れる設計のため、製造コストも抑えられ、付録の予算内になんとか収まる。パテントも侵害していないので、すぐに企画を軌道修正できた。
ついに理想のアルミソロテーブルが完成!
天板が差し込み式のため、ズレたり浮き上がらないようにロックが掛かります。
このロックが掛かる仕組みを成立させるのが大変でした。
厚紙の試作ではスリットのクリアランスがギチギチでロック機構が無くても動かなかったのに、アルミ板で組み立てやすいクリアランスで作ったら天板がズレてしまうことが発覚!
すぐに対策してサンプルを作り直して、なんとか問題は解消した。
(ロックが掛かる位置に合わせるのに少しコツが要ります)
垂直方向の耐荷重は10kg程度なら問題ないレベル。お湯を沸かす程度に使う物の重さならビクともしない。多少の傾斜地でも差し込みの突起がズリ落ち防止の土俵際の踏ん張りをみせてくれる。横綱級の頼もしさ!
全てのパーツはクリアアルマイトによる酸化防止と防汚加工が施されている。
レーザーエッチングによるロゴは見る角度によってはクッキリ、普段は控えめな主張をする絶妙なあんばいを狙ったのだ。
積載例と意外なメリット
実際に積載してグラベルを走ってみたところバイクパッキングならではのメリットを発見!
もとはコスト削減のための板状の組み立て式ではあったけど、ヒンジやパイプなどを使わないので収納時に板が密着して重なり、パーツ同士の干渉音がしない。金属の折りたたみ式の物だと、走行時にずっとパーツの干渉音がしてしまう。積載トラブルを早期に発見するためにも干渉音がしない事は重要だと感じていたのでうれしい誤算だ。
しかし、金属製のラックの上に直に設置してしまうとラックとの干渉音が発生してしまうので、他の荷物を挟むようにテンションをかける方がよいでしょう。
さぁー、美味しいソトメシを食べに出かけましょう!
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- BRAND :
- Bicycle Club
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PROFILE
BCG道先案内人
木村 信一 a.k.a.キムシン
東京最速メッセンジャーカンパニーCyclexの活動休止に伴い25年間の現役生活から離れ、メッセンジャーバッグRESISTANTの製作に注力。近年はバイクパッカーとしても精力的に活動中。 フィールドに根ざした独創的なプロダクト開発には定評がある。@RESISTANT @k.i.m.t.h.i.n.g
東京最速メッセンジャーカンパニーCyclexの活動休止に伴い25年間の現役生活から離れ、メッセンジャーバッグRESISTANTの製作に注力。近年はバイクパッカーとしても精力的に活動中。 フィールドに根ざした独創的なプロダクト開発には定評がある。@RESISTANT @k.i.m.t.h.i.n.g