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光をつかんだ不屈の精神 西尾憲人|El PROTAGONISTA

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「自分の力を証明したい」というその一心が、彼を突き動かしていた

プロの洗礼から始まり、葛藤にあえいだ2年半

ロードレーサーとしての一歩目を踏み出した西尾だったが、Jプロツアー開幕戦の修善寺大会でプロレースの厳しさに出鼻をくじかれた。「自分は目一杯なのに、まるでペースが落ちない登坂のスピード。何もできずドロップしました……」。

続くツール・ド・栃木の最終ステージでは中間スプリント賞のスピードアップを機にアタック、山本元喜(キナン、)木村圭吾(シマノ)ら6名で逃げた。70㎞近く逃げ続けたものの、プロトンに飲まれると力を失いリタイア。それでもチームからの評価を得た。しかし……。

「この逃げのスタイルをプロとして確立しようと躍起になってしまい、その後の自分を苦しめました。5月の宇都宮クリテではコーナーで抜かれた選手に前輪をとられ落車し骨折。復帰後、焦って何度もアタックに乗ろうと動いては、そのまま力尽きる展開が続きました」

そんななかプロ2年目となる2020年、明星大学の後輩である佐藤兄弟がトレーニー(研修選手)としてチームに合流。初戦の群馬大会で連日兄弟で9位に入る、いきなりの大健闘を見せる。「プロデビュー後すぐに上位でゴールしている彼ら。このままでは自分の居場所はなくなる……。レースに対応できる強度が足りていないと感じ、高強度のインターバル練習に重点を置きました」

8月、元プロ選手の鈴木真理がコーチとしてチームに合流。トレーニングチェックを受けると衝撃的な言葉を受ける。「君には特徴がない。何をしていいかわからないから、とにかくベース(基礎練習)を続けてみて」。ある程度の評価を期待していただけにショックは大きかった。

しかしその言葉の真意を自分なりに考え、悔しい感情はすべてペダリングにぶつけた。10月Jプロツアー最終戦となる経済大臣旗杯ロードレースでは、スタート直後からアタック。6人で150㎞逃げる走りを魅せる。「自分の力を証明したい」というその一心が、彼を突き動かした。

2021年、西尾はコーチの指示どおりベースに重点を置いたトレーニングを冬場に積み上げ、気持ちを新たに開幕戦に備えていた。ところが新リーグJCLへの参画により、1チーム6人の出走というレギュレーションが下され、西尾はスタメンに選ばれずに半シーズンを過ごすことになる。

「一向にレースを走れず、シーズン前に思い描いていた計画も破棄。不安や焦りから、自分の心もふさぎ込みがちになりましたが、それでも『見返してやろう』とベース走に打ち込む日々を過ごしました」

兄・勇人と4シーズン目を迎えた那須ブラーゼン。兄弟で逃げに乗る姿も珍しくはなくなってきた

7月にようやく出場した広島大会では、勝ち逃げに乗るもパンク。翌月の大分大会では直前に体調を崩しメンバーから外れ、山口大会では新型コロナ検査の偽陽性で再び表に出られず。「自分は運からも見放された。誰かこの思いを聞いてほしい……」と絶望に嘆いた。

レースに戻れたのはシーズン終盤、10月の塩谷クリテリウム。JCLリーグ内で初優勝を飾った、同チームの金子大介のアシストを務めつつ自らも13位に。そんな西尾にようやくチャンスが訪れる。翌週に行われるJCL大田原ロードレースにおいて、エース渡邉翔太郎に次ぐサブエースに抜擢されたのだ。

当日レース中盤、6人のエスケープグループが先行。チームが追手になる場面ではアシストである柴田らが牽引に入り抑えに。メンバーが絞られた終盤では、やはりアシストの谷が西尾を先行グループへジャンプさせる動きをしてくれた。「エース視点でチームメイトの動きを見たのは初めてでした。こんなに自分のために頑張ってくれるのなら、絶対にゴールを獲らなければ!」。

最終局面、先行する阿曽圭佑(ヴィクトワール広島)を捲るかという僅差で敗北……。勝てなかった悔しさに天を仰ぐも、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)や山本元喜(キナンレーシング)を抑えての準優勝は非常に大きな功績となった。「これまで自分の勝手な捉え方でフラストレーションを抱き、孤独になっていました。この一試合を境に全てがひっくり返りました。仲間への感謝、そして鈴木コーチの言っていたベースを積み上げろという意味も」。

そして2022年、冒頭のJCL大分大会でレースのクライマックスシーンを飾った西尾。一筋縄にはいかなかった競技人生を乗り越え、トップ戦線に躍り出た彼の活躍を応援したい!

ライダープロフィール

那須ブラーゼン 西尾憲人

PERSONAL DATA

生年月日:1995年7月6日生まれ 北海道出身
身長・体重:174cm・63kg (A型)

HISTORY

2011-2013/札幌拓北高校
2015-2018/明星大学自転車競技部
2019-現在/那須ブラーゼン

RESULT

2015年/RCS 第6 戦 白馬ラウンド C3 優勝
2017年/ツールド北海道 第2ステージ 16位
2017年/愛媛国体スクラッチ競技 9位
2018年/世界大学選手権 30 位
2021年/JCL 大田原ロードレース 準優勝

 

REPORTER/管 洋介
海外レースで戦績を積み、現在はJエリートツアーチーム、アヴェントゥーラサイクリングを主宰する、プロライダー&フォトグラファー。本誌インプレライダーとしても活躍。

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管洋介

Bicycle Club / 輪界屈指のナイスガイ

管洋介

アジア、アフリカ、スペインなど多くのレースを走ってきたベテランレーサー。アヴェントゥーラサイクリングの選手兼監督を務める傍ら、インプレやカメラマン、スクールコーチなどもこなす。

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