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廃線は財産!|マルコの連れてってイタリアーノ【No.2】

日本大好きなイタリア人サイクリスト、マルコさんのコラム第2弾! 今回は、イタリアの廃線跡サイクリングルートについて、多くの廃線跡を抱くイタリアの例を見て、どのようにして地方活性化につながったかを紹介いたします。廃線跡は財産ですよ!

多くの廃線跡を抱くイタリアを例に、地方活性化を考える

サイクリングルートの前新設された橋

年明けに発売されたBicycle Club 2023年3月号に興味深い特集が掲載されました。日本全国で広がりつつある自転車の旅の新しい楽しみ方「サイクルトレイン」に関するものです。ヨーロッパのように自転車を輪行袋に入れずに電車に乗せられるうれしいサービスです。
そして個人的にもう一つ気になるニュースがあります。相次ぐローカル線の廃線に関する動きです。
新型コロナ感染拡大の影響で在宅勤務が増え、全国的に電車の利用は減少しているようです。それに伴い多くの鉄道会社は慢性的な赤字路線を廃止しようとしています。
「鉄道がなくなると、地方が衰退する」「(お金を出しませんが)廃線は嫌だ!」と嘆く地方自治体。そのとおりです。公共交通手段がなくなると、地方は衰退の一方をたどります。しかし、廃線跡を財産として捉えない自治体は衰退する運命にあり、そうなってしまってもしょうがないかなと私は考えています。
今回のコラムでは、多くの廃線跡を抱くイタリアの例を見て、どのようにして地方活性化につながったかを紹介いたします。廃線跡は財産ですよ。

サイクルトレインのネットワーク充実で潤う地域経済

旧グズィニャーゴ駅舎。休憩スポットとして修復された

現在ヨーロッパでは広大なサイクルトレインネットワークが運用され、ほぼどの電車に乗っても自由に自転車を乗せられる専用スペースが設けてあります。電動アシスト付きバイクも充電できます。2010年代から本格的に始まった動きで自家用車の利用を減らし、健康づくりや住みやすい環境づくりにつながる政策の一環としてEU加盟国で進められています。地方プチ自転車の旅にもつながりました。
一方、廃線跡を巡るコースも人気を集めています。

廃線跡からサイクリングロードへ

1960年代以降、戦後の高度経済成長の波を受けヨーロッパでもモータリゼーションを中心とした経済構造が主流となりました。高速道路や幹線道路ネットワークを隅々まで伸ばし、電車を含む公共交通手段の利用が激減しました。その結果、多くの鉄道路線は廃止されました。イタリアに限っていえば1950年代から2000年代まで廃線となった区間は200以上で3500kmに及びます。移動は公共交通手段からマイカーに変わったと同時に、さまざまな歪みが生まれました。特に慢性的な交通渋滞と公害問題。そして運動不足。1990年代にこれらが問題視され、自転車は住みやすい町づくりと健康促進に役に立つ切り札として再注目されました。

自転車の利用を普及させるため必要となったのが自転車を安全に走らせる道路づくり。市内では、マイカー進入禁止区分は拡大され、郊外ではサイクリングロードの建設が進められました。ヨーロッパでも既存の道路幅は狭いため、自転車専用レーンの増設は難しい。ここで注目されたのが、ほとんど手づかずに放置されていた廃線跡です。

どのようにサイクリングロードが誕生しているのか

並木のトンネルが多く、夏でも涼しい

廃線跡は自転車専用道路に向いていると言っても過言ではありません。まっすぐで見通しがいい。自転車が対面で通行できる絶妙な幅。山間部においても無理のない緩やかな傾斜。河川の側や農地の中に設置してありので、新しいルートを引く必要もありません。
しかし、廃線跡を自転車専用道路にするプロセスは簡単ではありません。転用の壁になっているのが、自治体や県をまたぐ管理区域の違いと補助金の投入額です。自転車専用道路は各地域の住みやすさとサイクルツーリズムにどれだけ影響を与えるかが鍵となっています。

旧トレビーゾ・オスティリア線の起動

イタリア北部、70kmにわたる人気のサイクリングロード「旧トレビーゾ・オスティリア線」があります。トレビーゾ・オスティリア線はイタリア旧国鉄が運営していたローカル線の一つでイタリア北部ヴェネト州とロンバルディア州をつなぐ116kmの単線でした。現在においてイタリア国内でもっとも距離の長い廃線跡で、週末は多くのサイクリストを受け入れています。これだけ広範囲にわたるサイクリングロードは珍しく誕生のプロセスを見てみましょう。

トレビーゾ・オスティリア線の歴史

1925年 トレビーゾ・オスティリア線運用開始
1987年 赤字路線として廃止決定
1997年 レールを撤去
1998年 サイクリングモビリティ資金調達に関する基本法決定(*1)
1999年 鉄道廃線跡の取得に関する規定案決定
2004年 旧トレビーゾ・オスティリア線跡に幅10m以上の県道建設化企画開始
2004年 市民による「旧トレビーゾ・オスティリア線跡サイクリングロード実施化」実行委員会設立
2005年 旧トレビーゾ・オスティリア線跡を県道建設化準備予算提出決定
2006年 旧トレビーゾ・オスティリア線跡を県道建設化凍結のち中止決定
2007年 パドヴァ県による旧トレビーゾ・オスティリア線跡用地を購入
2008年 パドヴァ県は旧トレビーゾ・オスティリア線跡サイクリングロード工事予算決定
2011年 サイクリングロード転用工事を開始
2012年 旧トレビーゾ・オスティリア線跡サイクリングロード部分利用開始

(*1)サイクリングモビリティ資金調達に関する基本法
(Legge 19 ottobre 1998, n. 366, Norme per il finanziamento della mobilità ciclistica)
第1条 本法律は、自転車活用の価値向上と発展のための規則を定めるものである。
第2条 第1項 県は、サイクリングのための資金配分と統合サイクリングルートネットワークの実現に関する地域計画の策定を任される。本法律の発効日から6ヶ月以内に、県は、市町村道については市町村から、地方道と異なる市町村に属する中心地間の接続については地方から提出されたプロジェクトに基づいて計画を作成しなければならない。プロジェクトは、前述の当局が作成する複数年計画の枠組みの中で準備され、学校の建物、緑地、サービスエリア、社会・保健施設、公共交通網、官公庁、娯楽・観光エリアとの接続が優先される。

旧トレビーゾ・オスティリア線跡サイクリングロードがもたらした影響

カンポサンピエーロ駅。自転車を輪行せずに乗せられる

歴史をひも解くと、経済成長が著しいヴェネト州(特にパドヴァ県とトレヴィーゾ県)は使えなくなった線路を大型トラックが走行できる幅の広い県道にしようと決定していました。当時のイタリアではまだモータリゼーションを中心とした国づくりが進められていたからです。

しかし、道路建設予定地周辺に住んでいた一部の住民たちは新しい道路の建設がもたらす地域の分断と環境・騒音問題を重く見て、立ち上がりました。路線跡を自転車専用道路に転用すれば、どれだけまちづくりに影響を与えるか、その経済効果はどのようなものか。「いやよいやよ」という感情論を抜きにして問題点を洗い出すための研究グループを作り、積極的に地元の経済界と地方議員に働きかけました。その結果、パドヴァ県クルタローロ市とカンポ・サン・マルティーノ市という誰も知らないような小さな自治体から始まった運動はほかの自治体を刺激し、大きなうねりとなりました。

2006年に道路建設は中止され、パドヴァ県から自転車専用道路の転用が始まりました。

2022年現在110kmのうち70kmが使用可能で未着工区間はまだ工事中です。長閑な田園風景を安全に走れるサイクリングコースとして注目され、無視できない経済効果をもたらしています。多くのサイクリングツアーオペレーターは利用者を増やし、かつての鉄道のルートが回復したことで、かつての駅や倉庫、沿線の建築物などが修復され、その多くがインフォメーションポイント、レストラン、自転車レンタルポイントとして利用されています。

サイクリングロードのブランド化

バレー鉄橋。1930年代に建設され、そのまま現役

広範囲に広がるサイクリングロードは誕生しましたが、一つの大きな問題に差し掛かりました。管理団体は10自治体と多く、イメージもセールスポイントも情報発信元もバラバラ。情報が錯綜しサイクリストの混乱を避けるため、統一されたブランドを作る必要があると判断され、2022年にカンポサンピエーロ地方市町村連盟(Federazione dei Comuni del Camposampierese)を中心に新たな管理団体が発足されました。連盟が10の自治体や団体と合意し、観光局を通してサイクリングロードの所有権から、維持管理、観光全体のプロモーションまでの全ての業務を担っています。結果として、情報が一本化され、知名度は瞬く間にあがりました。

サイクリングロード建設における重要な教訓

この運動から学ぶ重要な教訓があります。

サイクリングロードが生まれるプロセスは簡単ではありません。特に地域住民の強い意志がない限り、行政が動きません。イタリアも例外ではありません。

日本国内で国道交通所を中心に2017年に「自転車活用推進(Good Cycle Japan)法」が決定されましたが、その運用は自治体主導になっています。この法律は自転車の活用をもっと広めようとしていますが、関心のない自治体の担当者は形だけのシンポジウムを開き、自転車に興味がない市民の顔色を伺いながら、サイクリングロードの建設になかなか進まない。

我々市民が声を上げないと、行政も動きにくい。地域づくりはまさに官民一体の大きなプロジェクトです。

コラムの頭に「廃線跡を財産として捉えない自治体は衰退する運命にあり、消滅しても構わない」という強い言葉を書きました。その考え方は変わりません。過疎化や人口減少に悩んでいる地域が生き残るために、空から降ってくる補助金をあてにせず熱意を持って地域の魅力をアピールすればいい。廃線跡の有効活用はその一つの提案で成功している例です。時間がかかる作業ですが、実は実ります。

さて、自転車に乗ろう。

 

 

ファヴァロ ・マルコ

イタリア出身。イタリア外務省認定教育機関、ダンテ・アリギエーリ協会東京支部理事。自転車競技選手通訳業務のほか、東京オリンピック開催中にイタリア自転車競技連盟広報を担う。現在、Kepelmuurアンバサダーのほか、伊豆市地域おこし協力隊として自転車普及活動中。さまざまなサイクリングイベントを主催しながら自転車が受け入れられやすい環境づくりを研究中。
http://ciclistaingiappone.jp

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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