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パヴェ整備にヤギが一役、空気圧調整ホイールもデビューへ パリ~ルーベ展望|ロードレースジャーナル

vol.56 29セクション・総距離54.5kmのパヴェ
マチュー、ワウトの“2強”に調整十分のガンナらが迫るか!?

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。活況の春のクラシックシーズン。いよいよ「北の地獄」パリ~ルーベの到来だ。おなじみの石畳(パヴェ)が、今回は29セクション・総距離54.5kmにわたって登場。数多くの衝撃と好勝負の舞台となってきたコースで、今回はどんな戦いが見られるだろうか。コース解説、注目選手の動向と合わせて、レースを展望する。

レース当日は好天予報、プロトンの背中を押す追い風も

数あるワンデーレースの中でも、とりわけ格式が高く、伝統的なレースである「モニュメント」に位置付けられ、別名「クラシックの女王」とも言われるパリ~ルーベ。その呼び名とは裏腹に、レースは過酷を極める。

今回は257kmに設定される全行程。そのうちの54.5kmで、握りこぶし大の石が敷き詰められたパヴェを走ることになる。通常のライドでは考えられないほどの振動や全身への負荷が選手たちを苦しめる。また、開催地フランス北部は天候が変わりやすく、ときに風雨の中を泥まみれになりながら走ることも。滑りやすくなったパヴェで予期せぬクラッシュが多発することもあり、それはもはや地獄絵図そのものである。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

ただ、今年は好天予報で、風も穏やかと見られている。むしろ南からの風が想定され、プロトンにとっては追い風となる。前回大会はアベレージスピードが史上最速だったが、状況によってはそれに迫るハイスピードな展開になる可能性もある。

なお、前回はフランス大統領選挙と日程が重なったため、通例より1週間遅れの開催だったが、今回は4月第2日曜に戻って実施される。通常開催はじつに4年ぶりだ。

五つ星パヴェ3カ所、全29セクション・全長54.5kmのパヴェ

コースをチェックしていこう。パリから北に位置するコンピエーニュをスタートし、フランス北部のルーベまでの257kmに設定される。

スタートからおおよそ3分の1は平坦路を走り、96.3km地点から全29セクション・全長54.5kmのパヴェへと向かっていく。なお、セクション番号はカウントダウン形式で振られている。

パヴェ全29セクション
29 96.3km地点(残り160.7km)トロワヴィル~アンシー 2.2km ★★★
28 102.8km地点(154.2km)ヴィースリー〜キエヴィ 1.8km ★★★
27 105.4km地点(151.6km)キエヴィ~サンピトン 3.7km ★★★★
26 110.1km地点(146.9km)サンピトン 1.5km ★★
25 117.2km地点(139.8km)ヴェルテン~サン=マルタン=シュール=エカイヨン 2.3km ★★★
24 127.2km地点(129.8km)ヴェルシェン=モグレ~ケレネン 1.6km ★★★
23 129.9km地点(127.1km)ケレネン~マン 2.5km ★★★
22 133km地点(124km)マン~モンショー=シュール=エカイヨン 1.6km ★★★
21 139.6km地点(117.4km)アスプル~ティアン 1.7km ★★★
20 153.1km地点(103.9km)アブルイ~ワレー 2.5km ★★★★
19 161.3km地点(95.7km)トゥルエ・ダランベール(アランベール) 2.3km ★★★★★
18 167.4km地点(89.6km)ワレー~エレーム 1.6km ★★★
17 174.1km地点(82.9km)オルネン~ヴァンディニー 3.7km ★★★★
16 181.6km地点(75.4km)ヴァルレン~ブリヨン 2.4km ★★★
15 185.1km地点(71.9km)ティヨワ~サール=エ=ロジエール 2.4km ★★★★
14 191.4km地点(65.6km)バーヴリー=ラ=フォレ~オルシー 1.4km ★★★
13 196.5km地点(60.5km)オルシー 1.7km ★★★
12 202.6km地点(54.4km)オシー=レ=オルシ~ベルシー 2.7km ★★★★
11 208km地点(49km)モン・アン・ペヴェル 3km ★★★★★
10 214km地点(43km)メルニー~アヴラン 0.7km ★★
9 217.4km地点(39.6km)ポン・ティボー~エンヌヴラン 1.4km ★★★
8 222.8km地点(34.2km)タンプルーヴ(レピネット) 0.2km ★
8 223.3km地点(33.7km)タンプルーヴ(ムーラン=ド・ヴェルテン) 0.5km ★★
7 229.8km地点(27.2km)シソワン~ブルゲル 1.3km ★★★
6 232.3km地点(24.7km)ブルゲル~ワヌアン 1.1km ★★★
5 236.7km地点(20.3km)カンファナン=ペヴェル 1.8km ★★★★
4 239.5km地点(17.5km)カルフール・ド・ラルブル 2.1km ★★★★★
3 241.8km地点(15.2km)グルソン 1.1km ★★
2 248.4km地点(8.6km)ヴィレム~エム 1.4km ★★
1 255.2km地点(1.8km)ルーベ 0.3km ★

やはり五つ星パヴェで何が起きるかに注目だ。161.3km地点で突入する、セクター19のトゥルエ・ダランベール(アランベール)。この直前には、集団内での各チームのポジション争いが激しくなる。なぜなら、前方でこのパヴェに入らねば、あっという間に後ろに取り残されるからだ。レイアウト的にわずかに下っており、スピードが増すことも関係する。両端にフェンスが張り巡らされ、道幅を制限されていることから、パヴェ通過中にポジションを上げようにもなかなかうまくはいかない。ここでメカトラや落車にあおうものなら、その瞬間に戦線から姿を消すことになる。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

フィニッシュまで49kmを残したところで訪れるセクター11のモン・アン・ペヴェルは、全長3kmとパヴェセクションの中では3番目の長さ。常に地面が土に覆われていて、わずかながら高低の変化もある。大小あらゆるコーナーも控えており、こちらもポジショニングやハンドルさばきが試される。

レース後半のハイライトとなるのが、セクター4のカルフール・ド・ラルブル。240km近く走り続け、なおかつ石畳の振動に耐えてきた選手たちにとっては、最後の五つ星が運命を分けるポイントに。ここで誰が仕掛けるか、そして誰が耐えられるかで、最終盤の流れが見えてくるはずだ。

©️ A.S.O./Pauline Ballet

ちなみに、レース前にパヴェ各所の整備が行われるが、今回はアランベールの雑草除去にヤギとヒツジが一役買った。これまではエンジン式のトリマーでパヴェ周りの草をカットしていたが、環境保護の一環としてヤギとヒツジを放してコース上をきれいにしたのだとか。

仕上がり順調のマチューと落車の痛み残るワウト、ガンナらが迫る

パリ~ルーベではロードレースのセオリーが一切通用しない。どんなに脚があろうと、勝負強さを持ち合わせていようと、ひとつのクラッシュやライバルの動きによってレースプランが一瞬で変化する恐ろしさが潜んでいる。

予想は簡単ではない。それでも、優勝候補最右翼として名が挙がるのはマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)と、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)。ロードでも、シクロクロスでも2強を際立たせている彼らが中心のレースになる。

マチューはミラノ~サンレモでの鮮烈な勝利以降、北のクラシックへ舞台を移してからはあと一歩優勝には届いていない。それでも、4月2日のロンド・ファン・フラーンデレンでは、流れを変えるアタックもあり、状態は良さそうだ。同5日にはシュヘルデプライスを走り、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー)の優勝をアシスト。マチュー本人は「シュヘルデプライスが良い調整になった。フランドルからルーベまでの間をいかに調整するかが課題だったが、レースを1本走ったことは間違いなくプラスに働く」と自信を見せる。

一方、ワウトはフランドルで表彰台を逃した。その一因となったレース中のクラッシュは、思いのほかダメージが大きく、ヒザと肋骨をいまだ痛めているという。ワウト自身も「痛みが残っていて、バイク上でのフィーリングは良くない」と認めている。レース当日までのどこまでコンディションを戻せるかが焦点となる。ユンボ・ヴィスマはチーム力を生かせる点で大きな強みがあり、ワウト以外にも前回覇者のディラン・ファンバーレ(オランダ)やクリストフ・ラポルト(フランス)といった、パヴェ巧者が控える。特にファンバーレはE3サクソ・クラシックでのクラッシュからフランドルを回避。ルーベ一本に照準を定めて準備を進めてきた。レース後半まで人数を残せるようだと、ユンボ勢の強さが確実に生きてくる。

意外にも、マチューもワウトも今回勝てばルーベ初優勝だ。

この2人を追う一番手としては、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)を挙げたい。ミラノ~サンレモでの2位によってワンデークラシックへの適性も証明。北のクラシックではE3サクソ・クラシックで10位とまとめてから、フランドルを回避してルーベに合わせている。前回はアランベールでペースアップを図るなど見せ場を作ったが、後半に失速。今回に向けてはスタミナを強化するとともに、ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)やルーク・ロウ(イギリス)といったベテランが両脇を固めサポートに徹する。タイムトライアルで超人的な走りを見せるガンナなら、独走に持ち込んだらそのままルーベのヴェロドロームまで突き進むはずだ。

©️ LaPresse

ガンナと同様の走りはシュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、スイス)にも期待ができる。何より、前回3位という好リザルトは彼の自信になっている。混戦をしのいで、カルフール・ド・ラルブルでのアタックから勝機を見出したい。

前回5位のマテイ・モホリッチ(スロベニア)擁するバーレーン・ヴィクトリアスも戦力は高い。モホリッチはフランドルでのクラッシュからどこまで回復できているか。明るい材料としては、フレッド・ライト(イギリス)がモホリッチと共闘できるメドが立ったこと。フランドルでは代役を務めて8位に入っており、条件問わず強さを発揮できる点は魅力。

トレック・セガフレードのダブルリーダー、マッズ・ピーダスン(デンマーク)とヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)も強さと経験ともに上位進出にはふさわしい選手。“お家芸”の石畳系レースで今季苦しんでいるスーダル・クイックステップは、カスパー・アスグリーン(デンマーク)やイヴ・ランパールト(ベルギー)あたりが意地を見せられるか。

2年前に2位に入り一躍トップライダーの仲間入りを果たしたフロリアン・フェルミールス(ベルギー)はロット・デスティニーの、前回4位と大健闘したトム・デヴリンツ(ベルギー)は新興のQ36.5プロサイクリングチームで、それぞれリーダーとして参戦。フランドル制覇のタデイ・ポガチャル(スロベニア)はルーベを回避するUAEチームエミレーツは、マッテオ・トレンティン(イタリア)やミッケル・ビョーグ(デンマーク)あたりがリーダーを担う。

2018年のこの大会を制したペテル・サガン(トタルエナジーズ、スロバキア)は、今季がロード最終年。つまりは最後のパリ~ルーベになる。

タイヤ空気圧管理システムがついに導入実現か

昨年の大会前に話題を生んだ、タイヤ空気圧の組み込み管理システムの導入がいよいよ実現しそうだ。

©︎ Scope

これは、ハンドルバーに装着されたボタンによって操作され、機械式バルブを通じてエアリザーバーとタイヤ間の空気の流れを調整するシステム。エアの出し入れが可能なので、路面状況に応じて瞬時に空気圧を変化させることができる。

チーム ディーエスエムは当初、スコープ社の同システム「Atmoz」を昨年のパリ~ルーベで導入するとしていたが、直前に撤回。その後ツール・ド・フランスでの正式導入を目指したが、それも実現しなかった。1年以上にわたってテストを続けてきたが、ついにこのルーベで使用する運びだ。

また、ユンボ・ヴィスマもGravaa社のテクノロジーを活用する構え。同社でKAPS(Kinetic Air Pressure System)と呼ばれているシステムは、ハンドルバーに装着されるボタンひとつで、ハブにつけられた小さなモーターとスポークに沿うホースを介してタイヤの空気圧を即時に調整ができるという。実際にファンバーレら数選手がテストしたことが明らかになっており、今回のレースでは全員ではないものの数人が使うと見られている。

ユンボ・ヴィスマは人の脳をモチーフにしたと見られる新デザインのヘルメットで出走することも発表。自転車走行時のヘルメット着用を啓発することが主な目的で、すでにコース試走で選手たちが着用している様子が見られている。

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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