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女子版ツール・ド・フランスのコースを若手選手が走るElla arriventプロジェクト

7月23日から30日の間に開催された、女子版ツール・ド・フランス「ツール・ド・フランス ファム アヴェク ズイフト(以下略、TDFF)」。この開催期間中、ブルーのジャージを身に着けた、若い女性サイクリストたちを毎日スタートとゴール、そしてコース上で見かけることになった。彼女たちは、フランス自転車連盟が募集した「Ella arrivent(エリャ・アリヴェント、日本語訳:彼女たちがやってきた)」プロジェクトの参加者である。なぜこうした若いサイクリストが、TDFFのコースを毎日走ることになったのだろうか。このプロジェクトの現場責任者であるフランス自転車連盟のモーリス・ローベルト氏にElla arriventプロジェクトの目的などについて話を聞いた。

次世代の選手を育てるElla arriventプロジェクト

今回のプロジェクトには何人の女子選手が参加しているのですか?

「全部で48人の選手が参加しています。このプロジェクトのために、フランスの各地方の自転車協会から推薦者を出してもらい、私たちフランス自転車連盟の方で48人の参加者を選抜しました。最初に各地方の自転車協会から推薦があった時点で、約200人がこのイベントに参加したいと希望していました」

このイベントの参加者のプロフィールについて、教えていただけますか?

「年齢は13歳から17歳までの選手です。基本的にみんなロードレースの選手ですが、同時にトラックやMTB等の競技をしている選手もいます。ロードレースの競技歴はさまざまで、1年くらいの選手もいれば、すでに5年くらいロードレースをしている選手もいます」

毎日プロのコースを走る際のオペレーションはどうしていますか?

「24人ずつ2組に分けて、毎日コースを走っています。といっても、参加者みんながその日のコース全部を走るわけではなく、13歳から15歳までのグループと16歳から17歳のグループの2つに分けています。13歳から15歳までのグループは、ロードレースを本格的に始めて間もない選手が多いので、コースの中でも比較的簡単な部分を走ります。一方、競技経験のある16歳から17歳のグループはちょっと上りの厳しい区間を走ることが多いです。でも第7ステージでは、参加者全員でツールマレーの頂上ゴールに行くことになっています」

このイベントに参加している女子選手たちは、どんな感想を持っていますか? また、彼女たちの感想を聞いて、ご自身はどのようなことを感じていますか?

「みんな毎日とても感動しています。この8日間、彼女たちは今までずっと持ち続けていた夢が、やっとかなった世界で暮らしているようなものです。特に第1ステージでは、自分たちが、プロと同じようにたくさんの観客の前からスタートしていることが信じられないようでした。また、毎日プロがレースをするコースを自分たちも走っていることが本当にうれしいようです。そのような彼女たちの様子を見ていると、スタッフとして支える私たちも本当に幸せな気持ちになります。そして私たちが、彼女たちにプロの自転車選手の世界を直接見せてあげられる機会が持てたことを、本当にうれしく思っています。未来の世代の自転車選手を育てることは、私のようなフランス自転車連盟の一員が果たすべき役割の一つです。今回のようにプロの世界や生活の一部を体験する機会を通して、『プロの自転車選手になるのは簡単ではないけれど、決して不可能ではないんだ』ということを、最も直接的な形で彼女たちに伝えられるのは、選手の育成という点でも効果的な方法だと思います」

じつは日本では女子選手の数が非常に少なくて、女子のレースを開催するのも難しい状況にあります。フランスは、おそらく日本よりも多くの女子選手がレースに参加していると思います。それでもやはり男子選手と比べると、女子選手の数は少ないのでしょうか?

「フランスでも、女子選手の数は非常に少ないと言ってもよいと思います。というより、世界的に見ても女子選手の数は極端に少ないと考えた方が良いかもしれませんね。例えば、今回のTDFFにはプロの女子ロード選手の大部分が出走していいます。でも、男子のツールに出走している選手は、UCIにプロ登録している選手の数のなかの本当にごく一部の『少数派』ですよね。現在、女子のプロロードレースでは、強いチームとそうではないチームの実力差がとても大きく開いている状態です。その原因の一つは、女子のロード選手の数自体が少ないことにあると私は考えています。フランス人はもちろんですが、女子選手全体の数を多くすることが、いま必要とされているのかな、と思います」

来年のTDFFでも、こちらのプロジェクトは継続される予定でしょうか?

「はい、来年もほぼ同じような感じで開催する予定で計画が進んでいます。TDFFの開催自体が今年で2回目だったこともあり、じつは今年のこのプロジェクトは短期間で計画・実行されたものになってしまったんです。でも今の時点で2024年のTDFFの日程も発表されましたし、来年のこのプロジェクトの開催に向けて、もう少し長いスパンで計画を立てることもできると思います。今回のプロジェクトでツール・ド・フランスから約160000ユーロのバックアップを受けることができました。来年は大体同じくらいの予算で、今年と同じくらいの規模のプロジェクトを実行することになるかと思います」

「将来はTDFFに出るんだ」と考える女子ロード選手は、フランス国内はもちろんですが、きっと世界中にいると思います。そんな世界中の若いロード選手のために、近い将来このプロジェクトがもっと多国籍なものになる可能性はありますか?

「なにぶん今回が初めてのオペレーションなので、今は近い将来のことを考える余裕もないのが正直な状況ではあります(笑)。でも、フランス以外の国からも参加者を集めるのは、良いアイデアですよね。例えば、近い将来には参加者50人のうち、10人くらいは外国人という構成でこのプロジェクトを実施することも可能かもしれません」

「毎日プロ選手と会える」参加した2人のジュニア選手に話を聞いてみた

さて、このElla arriventのプロジェクトの主役は、参加している48人の女子選手たちである。その中の2人、ラウラとローアンヌの2人に、このプロジェクトに参加した感想などをインタビューしてみた。

年齢と、自転車をいつから始めたのかを聞かせていただけますか? また、最初からお2人はロードレースの選手だったのでしょうか?

ラウラ

「私は15歳で、6歳でマウンテンバイクを始めて、レースに出場し始めました。今はロードレース選手に転向して1年くらいです」

ローアンヌ

「私は17歳で、やはりマウンテンバイクのレースを6歳から始めました。今はロードレースがメインですが、時々トラックのレースを走ったりします」

今回の Ella arriventプロジェクトに参加して、どのような感想を持っていますか?

ラウラ

「すごく楽しいです。毎日プロの選手と直接会うことができるし、プロの選手がどんなコースでレースをしているのか、直接経験することができるので、毎日いろいろな発見があります」

ローアンヌ

「毎日信じられない経験をしています。たくさんの人の前でレースを走ることができて、そのコースもプロのレースで使われているコースなので、プロ選手の生活を感じることができるのが、とてもうれしいです」

明日は、ツールマレーに上りますね。ワクワクしてますか? それとも緊張していますか?

ラウラ

「ワクワクしてて、すごく楽しみです。ツールマレーはテレビで見たことはあるけど、実際に上るのは明日が初めてなので。たくさんの観客の前で自分がツールマレーに上ることができるなんて、いままで想像もしたこともなかったので」

ローアンヌ

「私もすごく楽しみなのですが、同時にちょっと緊張しています。テレビで見たら、男子選手が本当に苦しそうに上っていたので、自分は上れるのかな……と心配しています」

不安な様子のローアンヌに「大丈夫だよ、みんなでゆっくり上るから、きっと頂上までたどり着けるよ」と励ましていたローベルト氏。今回で2回目の開催となったTDFFをフルに活用し、次の世代の女子選手を育成しようとしている、フランス自転車界の意識の高さを目の当たりにしたインタビューとなった。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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