BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

【宮城・荒雄川水系】春のイワナを求めて、東北の渓流グラベルへ|RIDE & FISH

「自転車で釣りに行く」楽しみを日本各地で探るRIDE & FISH 。世界がうらやむ素晴らしいライドルートと、海川湖に恵まれた釣り環境。自転車と釣り竿があれば、日本はこんなにも楽しめるのです! グラベルと渓流魚を求め、この春は東北を訪れました。狙うは、源流のイワナ!

グラベル天国、そして渓流天国の東北・宮城へ

春は、釣り人が落ち着かなくなる季節だ。とりわけ渓流釣り師は、3月の解禁日を迎えるといてもたってもいられなくなる。今号よりリニューアルを果たした本連載「RIDE & FISH JAPAN」でも昨年の第1回は早春の渓流にヤマメを狙いに行ったのだった。渓流釣りとグラベルロードの相性の良さはそのときにもたくさん書いたけれど、やはり春は自転車で渓流に行くべきなのだ。今回は渓流のもう一人の主役、イワナを狙いに東北は宮城県を訪れた。

カルデラ地形の荒雄川一帯は、山と低地の落差がダイナミックで、ヨーロッパのようなライドロケーションを走ることができる。この険しい地形にイワナがすむ

自転車好きなら春先はクラシックレースのシーズンでもある。クラシックの女王はパリ~ルーベ、王様はロンド・ファンフラーンデレンと称されて久しいが、これを釣りに置き換えると、渓流の女王はヤマメ、王様はイワナだといわれる。清流の繊細可憐な銀鱗ヤマメを気まぐれな女王になぞらえ、源流の奥深くに蛇のごとく潜む貪欲なイワナを傲慢な王様としたことは優れた言語感覚だと言わざるを得ない。

と同時に、イワナという魚はその体色や模様に個体差が激しいことで知られている。全身に星を散りばめたようなまばゆい個体もいれば、だいだい色の差し色を持つもの、かと思えばほとんど無斑のものまで、その変化の幅は長らく魚類学者の議論の的になっているという。王は他者に迎合することなく、ただ孤高に君臨しているかのようだ。

やっぱり自転車と釣りは似ているところがある

自転車と釣りの共通点とは何であろうか? さまざまな回答があるだろうが、僕の考えはこうだ。「一人でも楽しいが、誰かと行くとより楽しいもの」。そして「人と人とをつないでくれるもの」。今回の旅をガイドしてくれる小野寺 航さんは宮城在住のライダー&アングラー。かねてからその豊かな環境を訪ねてきてくださいと言ってくれていた。東北地方は北海道と並んで渓流釣り師の憧れの地である。さらにこの地でサイクリングクラブを主宰する小野寺さんはライドルートにも精通している。

宮城はこれまでに3Tの〈J EROBOAM〉やラファの〈エクスプロア・プレステージ〉といったグラベルイベントの開催地となってきた、いわばグラベル天国。ライドも釣りも楽しめるという小野寺さんのお誘いに乗らないテはない。

グラベルの先にいる渓流の王様を求めて、宮城県は大崎市へと向かった。

ただ楽しい沢筋の砂利道、グラベルロードで源流域へ

今回の舞台となるのは、荒雄川水系。東北最大の北上川の支流である江合川。その上流部を、源流が発する荒雄岳にちなんでこの名前で呼ぶ。宮城県を内陸に北に向かい、山形・秋田・岩手との県境もすぐ近くという立地。それだけで山の深さを想像いただけるかもしれない。

渓流では沢筋に砂利道が伸びていることが多い。通常の釣り人ならば歩いて登るところだが、グラベルロードならむしろ楽しみながらポイントへたどり着ける。どんな魚が待つのか、ワクワクしてペースが上がる

しかし実際に訪れてみると、周囲を山に囲まれつつも、空が広大に開けていて驚く。それもそのはずで、荒雄岳を含む周囲はカルデラとなっていて、荒雄川はそのぽっかりと低くなった外輪を沿うように流れている。荒雄川本流の明るい渓相はイワナというよりも、ヤマメの川という印象を抱いたが、やはりイワナはさらにその支流、というよりも沢に入って釣るのだという。

カルデラ地形によって荒雄川には多くの沢が流入しており、ざっとその数は15を超える。比較的狭い範囲の沢をテンポよく釣るのに、やはり自転車の機動力、特にグラベルロードの走破力が生きるというわけだ。

ポイントについて釣り支度を整える瞬間というのは、いつでも期待に胸躍る。そして一投目の緊張感たるや

走って、釣って、コーヒー。時々、イワナ

沢筋のグラベルへ分け入って自転車を停め、沢へ降りるといよいようっそうとして、イワナの生息域になる。ポイントは必然的に狭い場所になるので、テンポよくルアーを投げ込んでは上流へと釣り上がっていく。待ちの釣りではなく、常に動いているので、動きたがりの自転車乗りにも楽しい釣りであることは間違いない。

ファーストヒットは小野寺さん。足元までルアーを追いかけてきたアグレッシブなイワナに、思わず笑みが溢れる。あどけない顔立ちの中に未来のどう猛さを感じさせる美しい一匹。

小野寺さんが釣り上げたイワナ。何度も追いかけてきて、知恵比べがつい白熱して楽しい
釣果があるととたんに余裕が出てくるのが釣り人。釣った魚や自転車談義を野だてしたコーヒーで楽しむ至福のとき
ロケーションは最高だ

サカナの顔を拝めたから、気持ちにも余裕が出てきた。季節は春真っ盛りで、新緑の中で小野寺さんがコーヒーを入れてくれた。釣って、走って、一服して。一人でも楽しいけれど、やっぱり誰かと一緒だと楽しい。釣ったルアーの動かし方から自転車機材まで、話は尽きない。こんな遊び方ができるのも、コンパクトに畳める釣り竿と、バイクパッキングアイテムの進化があってこそ。

小野寺さんはライドを重視して、SPDペダルを使用。釣り用シューズはリュックで運ぶスタイル。面倒くさがりな僕は釣り用のウェーディングシューズのままペダリングできるようにフラットペダルに換装している。自分に合った自転車/釣りのセッティングを探すのも、楽しいものだ。

サイクリストなら気軽に渓流に行けるけれど、注意すべきことはある。その最たるものはクマ。小野寺さんは熊よけのベルを2つ用意していたが、それでも夕刻の源流にいると心もとなく思うのだった。

本流近くの開けたエリアから源流域まで、自転車があるとひとつの川を広く探れる。釣れなければ、隣の沢へと移動すればいいのだ。釣れそうなポイントばかりだから、集中力が途切れることもない
夕暮れ時の渓流は、羽虫が舞い渓流魚たちの活性も上がる。美しいひと時だが、冬眠から覚めたクマの活動時間でもあるから、細心の注意を払って釣りをすること
上ったら当然下る。グラベルライドのロケーションとしても最高のエリアを走りながら釣れるなんて、かなりぜいたくな遊びだと思う

よく釣れた日の帰路は、ペダリングがスムーズになる

一日を通じて釣れた源流のイワナは、やはり一匹一匹の模様や顔つきが異なっていて、どの個体との出会いも特別だ。遊んでくれた魚たちに感謝しつつ沢を出れば、アスファルトの一本道が夕焼けに染まっていた。よく釣れた一日の帰路は、ペダリングがスムーズになる。

こちらはたくましい顔つきの一尾。小型だが、どう猛さを秘めたこんな表情を見られるからたまらない
遊んでくれた魚たちはすべてリリース。またいつか、この沢で出会えることを願って

逃した大物のことや、この地の冬のライドのこと……話題は尽きない。「一人でも楽しいが、誰かと行くとより楽しいもの」。そして「人と人とをつないでくれるもの」。やっぱり自転車と釣りは、似ているところがある。

イワナ/Japanese Charr

漢字では岩魚と書く。ヤマメと並ぶ、日本における渓流釣りのメインターゲット。ヤマメよりも上流域の、流れの緩やかな岩陰などに生息。最大で60cmを超え、ヘビまで食らうという貪欲さを持つ「渓流の王様」。沖縄を除く日本全国に生息するが、亜種の存在や川が違うだけで全く模様が異なったりとその多様性でも釣り人を魅了する。

宮城の渓流グラベルを走り釣るためのバイク&ギア

スタイルの数だけ、バイクのセッティングや釣具の運び方のノウハウがあるRIDE & FISH。ローカルライダーの小野寺さんのセッティングやギアに注目。

走る楽しみも忘れない渓流グラベル仕様

左は小俣の愛車doppo。シマノのロッドケースがちょうどトップチューブに収まるのでバンドで固定して運んでいる。右は小野寺さんの愛車、3Tのエクスプローロ。グラベルバイク黎明期の一台。GRXなどのグラベルコンポ登場前に組んだため、自己責任のミックスコンポ。ハンドルバーバッグと大型サドルバッグ、そしてバックパックで荷物を運ぶ。ライドクオリティーを重視してシューズはSPDタイプを使用している。

シマノの渓流用ルアーロッド〈カーディフ NX S48UL-4〉は4分割でき、コンパクトになるのでRIDE & FISHに最適。リールは〈ミラベル〉の2000番
ラファのバーバッグは、釣りの際には取り外して首元に着用。釣り道具一式をここに収納していて、出し入れもしやすい
渓流釣りで必須のネットはかさばりやすいが、小野寺さんは〈SamuraiCraft〉の折りたたみタイプを使用。これだけコンパクトになる

SamuraiCraft〉は仙台市の北、大和町にショップを構えるレザークラフトブランド。代表の立田良徳さんは釣りに深く魅せられ、今では釣具も作るようになった。釣具屋同様の品ぞろえを誇る店舗は圧巻。この地で釣りをするならまず訪れたい。

SamuraiCraft代表の立田良徳さん

小野寺 航

宮城県仙台市在住。仙台を拠点に活動するサイクリングクラブVELOCLUB ARAIを主宰。数年前に始めた渓流釣りに魅了され、宮城の豊かな自然を自転車だけでなく楽しむRCC仙台ライドリーダー。
@funmockmoderato

RIDE & FISHを動画でもチェック!

「自転車と釣り」を提案する文化・情報発信基地

〈SHIMANO SQUARE〉はグランフロント大阪(梅田)にあるシマノ直営の文化発信拠点。自転車と釣りの楽しみを各種イベントやセミナー、動画やブログでプッシュしている。最新動画では和歌山・紀の川でシーバスを狙っている。フレンドリーな店長と副店長もRIDE & FISHを楽しむ実釣・実走派だから、この遊びを始めたい人は訪ねてみよう。
あらゆる「趣味」の楽しみ方を提案する総合型メディア〈FUNQ〉はオンラインの情報発信基地。バイシクルクラブも参加しており、RIDE & FISHコンテンツが今後拡充予定だ。

SHIMANO SQUARE(シマノスクエア)

大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル4階
https://www.shimanosquare.com

FUNQ

参加メディアはBicycle Club、SALT WORLD、フィールドライフ、ランドネ、PEAKSほかさまざまなジャンルの趣味メディアをそろえる。
https://funq.jp

小俣雄風太(おまたゆふた)
アウトドアスポーツメディア編集長を経てフリーランス。土地の風土を体感できる釣りと自転車の可能性に魅せられ、バイク&フィッシュのメディアを準備中。 @yufta

※この記事はBiCYCLE CLUB[2023年7月号 No.450]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

SHARE

PROFILE

小俣 雄風太

小俣 雄風太

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

アウトドアスポーツメディアの編集長を経てフリーランスへ。その土地の風土を体感できる方法として釣りと自転車の可能性に魅せられ、現在「バイク&フィッシュ」のジャーナルメディアを製作中。@yufta

小俣 雄風太の記事一覧

No more pages to load