何かと話題のグラインデューロに潜入! 実際はどんな感じだったの?|GRINDURO JAPAN 2023
坂本 大希
- 2023年10月29日
世界で加速するグラベル熱。このグラベルシーンで世界的に有名なイベントとして、グラインデューロが挙がる。「自転車×キャンプ×パーティ」を3本柱とし、隅から隅まで楽しめることがウリだ。世界4カ国以上の場所で開催され、グラベルの文化を楽しめるレースイベントだ。アジア圏では唯一日本のみで実施されており、その第2回目が10月7日(土)~10月9日(月)の3日間の日程で行われた。
ただ、ホームページが少し簡略化していたこともあり、情報が少なく謎多きイベントともいわれることもちらほら。今回、実際に編集部坂本が参加してきたので、写真を多く使用しその実態を可能な限りレポートしたい。次年度以降開催の際に参考になればうれしく思う。
INDEX
そもそもグラインデューロとは?
一体そもそもこのイベントは何なのか。公式ページの中身から参照すると下記のようになる。
「グラインデューロ(GRINDURO)は、さまざまな路面(道路、砂利道、MTBシングルトラック)を走る1つの長いループで、4 つのタイム計測セグメントがある。フィニッシュ タイムは全体の走行時間ではなく、セグメントごとの合計タイムで競う(それぞれおよそ10分~15分程)」
最初に少しネタバレをするとしたら、今回のメインレースの第1セグメントはMTBのコースだった。グラベルバイクで走り切れるもんじゃないよ!という声も多かったが、そもそもこのイベントはこういうものだったのだ。それ故に唯一無二の楽しさを味わえるイベントでもある。
初日、受付を済ませプチライド! その後も夜まで楽しめる!
こちらが配られたスケジュール表だ。日本語表記がないため多少イメージしづらいが、自分の体感をもとに以下で紹介しよう。
受付列に並ぶ外国人の数に感じるグラインデューロの国際性
初日にあたる10月7日は12時に会場がオープン。場所は長野県白馬村に位置する白馬ジャンプ競技場。1998年の冬季オリンピックで日の丸飛行隊が脚光を浴びた場所だ。ここのジャンプ台の前に半円状に広がるかつての応援スペースと思しき場所に出展ブースが広がる。キッチンカーも多く出店しており、食事にも困らない。
受付はスケジュール表の13時スタートからやや遅れて開始。ここで気づくのは外国人比率の高さだ。聞く話によると本イベントは出走が約350人ほどで、そのうち60人ほどは外国から(日本在住の外国人の可能性は省く)の参加者だった。これは日本屈指のグラベルイベントと言われるニセコグラベルを凌駕する比率で、海外の空気感を感じることができる数少ないイベントだ。
ただ、この受付作業が少し時間がかかる。リストから自分の名前を見つけ出すスタイルのため時間がかかってしまったので、QRコードを使うなど次回までには工夫すべき点といえるだろう。ここではタイム計測のためのチップをもらえる。こちらを受け取ったら初日のライドに向かう。
シュワルベ・シェイクダウンプロローグ
タイム計測チップを受け取った後、初日のイベントして行っておきたいのはシュワルベ・シェイクダウンプロローグというプチライドだ。参加者の好きなタイミングで自由に出走してくるスタイルで、会場から少し離れたところをスタート地点とし、ゴールの会場へ戻ってくる。約5kmほどのライドということで油断していたが、かなりの激坂と下り……また激坂を上るというレイアウトで驚き。わずか5kmの充実感としてはかなりのものだったと思う。ここでもタイム計測区間があり、この日の夕刻に表彰式も実施された。
キャンプ&パーティ! 走って終わりじゃないのがグラインデューロ
冒頭で述べた三本柱を構成するキャンプとパーティももちろん大切。宿泊については近くの宿をとることも可能だが、予約をすればキャンプを行うこともできる。参加者は明るいうちからテントを張り、そこを拠点にイベントを楽しむこともできる。朝から晩まで家族や仲間と過ごせるかけがえのない時間を提供できるのがグラインデューロだ。
また、参加者が集まるレストランも指定されており、そこに行くと他の参加者と交流できる。レースやイベントを話題にお酒を飲みながら盛り上がる時間もとても楽しく、非日常を味わえる。
2日目、メインライドは2部制!?
メインライド当日。7時からスタートだが、その前に朝食が配られるのでそれに合わせて6時過ぎくらいから徐々に参加者が集まり始める。朝食として配られた地元の食材を使ったおにぎりがおいしい。
第1部は白馬岩岳がメイン
このレースは2部制といえる。最初に会場から北側のループを走り、一度会場に戻ってくる。そのまま会場でお昼ごはんを食べ(カレーやサンドイッチなどしっかりとしたご飯なのはうれしい)、南側のループを走り戻ってくるという構成だ。
先にも述べたが、獲得標高の多くが第1部に詰まっている、白馬岩岳を上り下るから当然だろう。この上りのグラベルがまあまあきつい。そして下りではMTBコースを走る。バームがあったりシングルトラックがあったりとスリリングだったが非常に楽しめた。編集部坂本は安全第一でとてもゆっくり下山した。落車の話もそれなりに聞いたのでいい判断だったと思う。
第2部はスムーズな路面も多く走りやすい!
昼食も済ませて第2部が開始。会場でMCが「午後の方が楽だよ~」と言っていたが、確かに“若干は”楽だったかもしれない。ただ、区間計測も2カ所、強度はそれなりに高いコースレイアウトともいえる。走りながら思うのは、区間計測というシステムがいいな、ということだ。レースの真剣さは非常にいいものだが、全部がレースだとせっかくの景色を楽しめない。特にグラベルのコースになるような場所は絶景が多い。区間計測であればそれ以外の区間は言うなればファンライド。仲間や他の参加者と和気あいあいと話しながら走ることが可能だ。また、道中にはフォトスポットしてソファも設置。1秒を争う区間もありつつ、自転車を降りてゆっくり楽しむこともできる。さまざまな路面もそうだが多くの楽しみ方を提供してくれるのがこのグラインデューロだ。
レースやライド主体のイベントが大半の日本だが、新たな自転車イベントとしての可能性を見た
日本の自転車イベントにこの1年間多く参加してきた。感じることは、基本的にライドを楽しむというスタイルだ。これは自転車というスポーツを扱っているので至極当然のことだし、いいことだと思う。ただ同時に、自転車という乗り物にはスポーツ以外の側面も多いことに気が付く。通勤・通学、ちょっとした友人とのお出かけや買い物など、自転車≒日常を彩るものだといえる。このグラインデューロは自転車に乗ることをより楽しめるだけじゃなく、この期間で日常を一層楽しめるよう工夫されている。そんなパッケージとしてのイベントとして大きな魅力と可能性をもったイベントだ。
日本でまだ発展途上のイベントが故に、改善すべき点も見えてきた
今回のグラインデューロはとても面白かった! しかし、手放しに称賛することができない点があったことも事実だ。イベント自体の告知の時期や分かりやすさ、当日の誘導などのオペレーションはお世辞にもスムーズとは言い難い。また、キャンプ利用予定者の一部が当日になってじつはキャンプ禁止エリアだったということを自治体サイドから聞かされるなど調整不足が露になった点も確かにあった。特に日本ではこういった点をクリアにできなければ、なかなか「良いイベント」として認識されにくいのが現状だ。
しかし、このグラインデューロが非常に素晴らしく、楽しく、唯一無二のイベントであることに疑いはない。実際に地元の人の話を聞いても、彼ら自身もこのイベントに対して大いに期待している。今後も同じだ。
色々と取材を重ねていくと、地元で活動している人や組織、自治体との擦り合わせで少し足りていなかったように感じる。だとすれば、次回は彼らも巻き込み、地元の官民を含めた大きな流れをつくることができればこの素晴らしいイベントが更によりよくなるのだろう。
これが故に日本にこの素晴らしいイベントが根付かないことは非常にもったいないことだ。次回の参加希望者代表として、次のグラインデューロを期待せずにはいられない。
BCステーションでもより深くグラインデューロの雰囲気を感じよう!
今回のグラインデューロ取材にはバイシクルクラブ公式ポッドキャスト「BCステーション」の収録も実施! 現場でイベント中にとったリアルな声を聴けるぞ! より実際の空気を感じるにはぜひ聞いてほしい。
シマノのGRX開発秘話単独インタビューも収録!
また、スポンサーのシマノから、新型GRXの開発秘話についても聴取成功! グラベルという言葉が日本にくる以前からアメリカに渡り、開発をすすめてきた松本さんにロングインタビューを敢行。グラベルの世界を深く知るためには聞き逃してはいけない内容になっている。初出しの話も多いとのことで、ぜひ一度聞いてみてほしい。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集:Bicycleclub 写真・文:坂本 大希
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PROFILE
坂本 大希
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。